【プロ講師解説】このページでは『アルカリ金属の単体の性質、水酸化物・酸化物・塩の性質や製法など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

アルカリ金属とは

Point!

アルカリ金属とは、水素H以外の1族元素の総称である。

アルカリ金属の単体

①イオン化エネルギーが小さく、1価の陽イオンになりやすい
②電子を放出しやすく、還元剤として働く
③水と反応し、H2を発生して水酸化物になる
④酸素と反応し、酸化物になる
⑤炎色反応を示す
⑥融点が低く、密度が小さい
Point!

①イオン化エネルギーが小さく、1価の陽イオンになりやすい

アルカリ金属の単体は価電子が1コのため、イオン化エネルギーが非常に小さく、電子を離して1価の陽イオンになりやすい。

※イオン化エネルギーについて詳しくは第一イオン化エネルギー(周期表での最大最小・グラフ・電子親和力との違いなど)を参照

②電子を放出しやすく、還元剤として働く

アルカリ金属は電子を離しやすいため、還元剤として働く。

※酸化剤・還元剤について詳しくは酸化剤・還元剤(違い・見分け方・例・一覧など)を参照

③水と反応してH2を発生し、水酸化物になる

アルカリ金属は、水H2Oと反応してH2を発生し、水酸化物になる。

\[
2Na + 2H_{2}O → 2NaOH + H_{2}
\]

この性質故に、アルカリ金属は水中ではなく石油中に保存する。

※反応式の係数の付け方について詳しくは化学反応式(係数・作り方・書き方・計算問題の解き方など)を参照

④酸素と反応し、酸化物になる

アルカリ金属は酸素と反応し酸化物になる。

\[
4Na + O_{2} → 2Na_{2}O
\]

※酸化物について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照

⑤炎色反応を示す

元素名 イオン式
リチウム Li 赤色
ナトリウム Na 黄色
カリウム K 紫色
ルビジウム Rb 赤色
セシウム Cs (淡)紫色

※アルカリ金属は炎色反応を示す。
炎色反応について詳しくは【炎色反応】色一覧や仕組み、具体例、操作などを参照

⑥融点が低く、密度が小さい

アルカリ金属の中でもリチウムLi・ナトリウムNa・カリウムKは、融点が低く、密度が小さいため水に浮くという性質をもっている。

アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム)

①1価の強塩基として働く
②潮解性をもつ
③製法:陽イオン交換膜法
Point!

アルカリ金属の水酸化物では水酸化ナトリウムNaOHがダントツ頻出。
水酸化ナトリウムの重要ポイントは3つ。

①1価の強塩基として働く

水酸化ナトリウムを含め、アルカリ金属の水酸化物は基本的に1価の強塩基である。
したがって、酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)でやったように空気中のCO2と次のような反応を起こす。

\[
2NaOH + CO_{2} → Na_{2}CO_{3} + H_{2}O
\]

②潮解性をもつ

水酸化ナトリウムは潮解性(空気中の水分を吸収する性質)をもっている。

この性質故に水酸化ナトリウムは塩基性の乾燥剤「ソーダ石灰」の成分として用いられる。

※乾燥剤について詳しくは【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照

③製法:陽イオン交換膜法

水酸化ナトリウムは陽イオン交換膜法という方法で作ることができる。

※陽イオン交換膜法について詳しくは【陽イオン交換膜法】水酸化ナトリウムの製法の仕組みや反応式などを参照

アルカリ金属の酸化物(酸化ナトリウム)

水・酸と反応する
Point!

アルカリ金属の酸化物はいずれも”塩基性酸化物”なので、酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)でやったように「水」又は「酸」と反応する場合がある。

水との反応

塩基性酸化物である酸化ナトリウムは水と以下のような反応を起こす。

\[
Na_{2}O + H_{2}O → 2NaOH
\]

※この反応について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照

酸との反応

塩基性酸化物である酸化ナトリウムは酸と以下のような反応を起こす。

\[
Na_{2}O + 2HCl → H_{2}O + 2NaCl
\]

※この反応について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照

アルカリ金属の塩(塩化ナトリウム)

塩化ナトリウムについては、揮発酸遊離反応の一種である「濃硫酸との反応」を押さえておこう。

塩化ナトリウムNaClに濃硫酸を加えて加熱すると、(揮発性の気体である)HClが発生する。

\[
NaCl + H_{2}SO_{4} → NaHSO_{4} +HCl
\]

これはHClの有名な発生方法なので、気体の製法(反応式・原理・注意事項など)を併せて確認しておこう。

また揮発性酸遊離反応について詳しいことは揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)を確認しよう。

アルカリ金属の塩(炭酸水素ナトリウム)

①1価の還元剤として働く
②熱分解して炭酸ナトリウムと二酸化炭素と水になる
③弱酸遊離反応に関わる
Point!

炭酸水素ナトリウムで重要なポイントは上の3つ。

①1価の還元剤として働く

炭酸水素ナトリウムは1価の還元剤として働く。

※酸化剤・還元剤について詳しいことは酸化剤・還元剤(違い・見分け方・例・一覧など)を参照

②熱分解して炭酸ナトリウムと二酸化炭素と水になる

炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム二酸化炭素になる。

\[
2NaHCO_{3} → Na_{2}CO_{3} + CO_{2} + H_{2}O
\]

※熱分解反応について詳しくは【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説を参照

③弱酸遊離反応に関わる

炭酸水素ナトリウムは「弱酸を含む塩」なので弱酸遊離反応に関わる。
例えば、次の反応式を見てみよう。

\[
NaHCO_{3} + HCl → NaCl + H_{2}CO_{3}
\]

弱酸を含む塩であるNaHCO3が強酸であるHClと反応することで、弱酸H2CO3が遊離している。(H2CO3はこの後すぐに分解しH2OとCO2になる)

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

アルカリ金属の塩(炭酸ナトリウム)

①2価の弱塩基として働く
②風解を起こす
③ガラスの原料になる
④製法:アンモニアソーダ法
Point!

①2価の弱塩基として働く

炭酸ナトリウムは、2価弱塩基として働く。
二段滴定で出題されることが多いので、二段滴定(原理・例題・計算問題の解き方など)を併せて確認しておこう。

②風解を起こす

炭酸ナトリウムの水和物である「炭酸ナトリウム十水和物」Na2CO3・10H2Oは空気中に放置すると、結晶中の水和物がとれて粉末状になる。

\[
Na_{2}CO_{3}・10H_{2}O → Na_{2}CO_{3}・H_{2}O
\]

この現象を風解という。水酸化ナトリウムの”潮解”と区別して覚えておこう。

③ガラスの原料になる

炭酸ナトリウムは、石英、石灰石とともに“ガラスの原料”として用いられている。

④製法:アンモニアソーダ法

炭酸ナトリウムはアンモニアソーダ法という製法で作られる。

アンモニアソーダ法は入試での出題頻度が極めて高く、必ず押さえておく必要がある。
アンモニアソーダ法(覚え方・順番・仕組み・覚え方・反応式など)のページで、その仕組みや反応式の書き方などを確認しておこう。

アルカリ金属に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

アルカリ金属の単体は、価電子が1コのため【1】が非常に小さく、電子を離して【2(陽or陰)】イオンになりやすい。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】第一イオン化エネルギー【2】陽

アルカリ金属の単体は価電子が1コのため、イオン化エネルギーが非常に小さく、電子を離して1価の陽イオンになりやすい。

※第一イオン化エネルギーについて詳しくは第一イオン化エネルギー(周期表での最大最小・グラフ・電子親和力との違いなど)を参照

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

アルカリ金属は電子を離しやすいため【1】剤として働く。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】還元

アルカリ金属は電子を離しやすいため、還元剤として働く。

※還元剤について詳しくは酸化剤・還元剤(違い・見分け方・例・一覧など)を参照

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

アルカリ金属は、水H2Oと反応して【1】を発生し【2】になる。この性質故に、アルカリ金属を保存するときは水中ではなく【3】中に保存する。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】水素H2【2】水酸化物【3】石油

アルカリ金属は、水H2Oと反応してH2を発生し、水酸化物になる。

\[
2Na + 2H_{2}O → 2NaOH + H_{2}
\]

この性質故に、アルカリ金属は水中ではなく石油中に保存する。

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

アルカリ金属は、酸素と反応し【1】になる。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】酸化物

アルカリ金属は酸素と反応し酸化物になる。

\[
4Na + O_{2} → 2Na_{2}O
\]

※酸化物について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

アルカリ金属は【1】反応を示し、そのときの色は以下の通りである。

元素名 イオン式
リチウム Li 【1】
ナトリウム Na 【2】
カリウム K 【3】
ルビジウム Rb 【4】
セシウム Cs 【5】
【問5】解答/解説:タップで表示
解答:以下参照
元素名 イオン式
リチウム Li 赤色
ナトリウム Na 黄色
カリウム K 紫色
ルビジウム Rb 赤色
セシウム Cs (淡)紫色

※アルカリ金属は炎色反応を示す。
炎色反応の色については【炎色反応】色一覧や仕組み、具体例、操作などを参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

アルカリ金属の中でもリチウムLi・ナトリウムNa・カリウムKは、融点が【1(高or低)】く、密度が【2(大きor小さ)】いため水に浮くという性質をもっている。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】低【2】小さ

アルカリ金属の中でもリチウムLi・ナトリウムNa・カリウムKは、融点が低く、密度が小さいため水に浮くという性質をもっている。

問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

水酸化ナトリウムを含め、アルカリ金属の水酸化物は基本的に【1】価の【2(強or弱)】塩基である。

【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】1【2】強

水酸化ナトリウムを含め、アルカリ金属の水酸化物は基本的に1価の強塩基である。
したがって、酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)でやったように空気中のCO2と次のような反応を起こす。

\[
2NaOH + CO_{2} → Na_{2}CO_{3} + H_{2}O
\]
問8

【】に当てはまる用語を答えよ。

水酸化ナトリウムは空気中の水分を吸収する性質である【1】をもっている。

【問8】解答/解説:タップで表示
解答:【1】潮解性

水酸化ナトリウムは潮解性(空気中の水分を吸収する性質)をもっている。

この性質故に水酸化ナトリウムは塩基性の乾燥剤「ソーダ石灰」の成分として用いられる。

※乾燥剤について詳しくは【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照

問9

【】に当てはまる用語を答えよ。

水酸化ナトリウムは【1】という方法で作ることができる。

【問9】解答/解説:タップで表示
解答:【1】陽イオン交換膜法

水酸化ナトリウムは陽イオン交換膜法という方法で作ることができる。

※陽イオン交換膜法について詳しくは【陽イオン交換膜法】水酸化ナトリウムの製法の仕組みや反応式などを参照

問10

【】に当てはまる用語を答えよ。

塩化ナトリウムNaClに濃硫酸H2SO4を加えて加熱すると【1】が発生する。

【問10】解答/解説:タップで表示
解答:【1】塩化水素HCl

これは塩化水素HClの発生法として知られている。

※気体の発生法について詳しくは気体の製法(反応式・原理・注意事項など)を参照

問11

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸水素ナトリウムは【1】価の【2】剤として働く。

【問11】解答/解説:タップで表示
解答:【1】1【2】還元

炭酸水素ナトリウムは1価の還元剤として働く。

※還元剤について詳しくは酸化剤・還元剤(違い・見分け方・例・一覧など)を参照

問12

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸水素ナトリウムは、熱分解して【1】と【2】と【3】になる。

【問12】解答/解説:タップで表示
解答:【1】炭酸ナトリウムNa2CO3【2】二酸化炭素CO2【3】水H2O(順不同)

炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム二酸化炭素になる。

\[
2NaHCO_{3} → Na_{2}CO_{3} + CO_{2} + H_{2}O
\]

※熱分解について詳しくは【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説を参照

問13

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸水素ナトリウムは、【1(強酸or弱酸)】を含む塩であるため【2(強酸or弱酸)】であるHClと【3】反応を起こす。

【問13】解答/解説:タップで表示
解答:【1】弱酸【2】強酸【3】弱酸遊離

炭酸水素ナトリウムは「弱酸を含む塩」なので弱酸遊離反応に関わる。
例えば、次の反応式を見てみよう。

\[
NaHCO_{3} + HCl → NaCl + H_{2}CO_{3}
\]

弱酸を含む塩であるNaHCO3が強酸であるHClと反応することで、弱酸H2CO3が遊離している。(H2CO3はこの後すぐに分解しH2OとCO2になる)

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問14

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸ナトリウムは、【1】価の【2】として働く。

【問14】解答/解説:タップで表示
解答:【1】2【2】弱塩基

炭酸ナトリウムは、2価弱塩基として働く。
二段滴定で出題されることが多いので、二段滴定(原理・例題・計算問題の解き方など)を併せて確認しておこう。

問15

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸ナトリウムの水和物である「炭酸ナトリウム十水和物」Na2CO3・10H2Oは空気中に放置すると、結晶中の水和物がとれて粉末状になる。この現象を【1】という。

【問15】解答/解説:タップで表示
解答:【1】風解

炭酸ナトリウムの水和物である「炭酸ナトリウム十水和物」Na2CO3・10H2Oは空気中に放置すると、結晶中の水和物がとれて粉末状になる。

\[
Na_{2}CO_{3}・10H_{2}O → Na_{2}CO_{3}・H_{2}O
\]

この現象を風解という。水酸化ナトリウムの”潮解”と区別して覚えておこう。

問16

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸ナトリウムは、石英、石灰石とともに【1】の原料として用いられている。

【問16】解答/解説:タップで表示
解答:【1】ガラス

炭酸ナトリウムは、石英、石灰石とともに“ガラスの原料”として用いられている。

問17

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸ナトリウムは【1】という製法で作られる。

【問17】解答/解説:タップで表示
解答:【1】アンモニアソーダ法

炭酸ナトリウムはアンモニアソーダ法という製法で作られる。

※アンモニアソーダ法について詳しくはアンモニアソーダ法(覚え方・順番・仕組み・覚え方・反応式など)を参照

関連:無機のドリルが、できました。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細