【プロ講師解説】このページでは『第一イオン化エネルギーの定義、周期表での最大最小、グラフなど』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
第一イオン化エネルギーとは
第一イオン化エネルギーとは、原子の最外殻から電子を1個奪うときに必要な最低限のエネルギーである。
図で表してみよう。
第一イオン化エネルギーは、原子から電子を「奪うときに必要」なエネルギーなので、小さい方がより原子から電子を奪いやすい(=原子は電子を出しやすい)ということになる。
以下のように、イオン化エネルギーを具体的な数字で表すと分かり易い。
また、以上のことを踏まえると第一イオン化エネルギーはその原子の防御力の指標として考えることができる。
電子を奪われにくい → 防御力 高
第一イオン化エネルギー 小
電子を奪われやすい → 防御力 低
第一イオン化エネルギーと熱
「原子が第1イオン化エネルギーを受けて電子を放出する」という反応が「発熱(=熱を発する)反応」なのか、それとも「吸熱(=熱を吸収する)反応」なのか。これは、「電子親和力」と対比されてよく聞かれる。
結論から言うと、「吸熱反応」である。
第1イオン化エネルギーは「エネルギー」なので「熱の一種」として考えることができる。先ほどから説明しているように、原子は第1イオン化エネルギーを「周りから受けて」電子を出すので、熱を受け取る反応、つまり吸熱反応となる。
第一イオン化エネルギーの周期表中での傾向
周期表上で、第1イオン化エネルギーは規則的な変化をしている。
第1イオン化エネルギーは、周期表の右上にいくにつれ大きくなる。これはつまり、(第1イオン化エネルギーが小さい方が電子を出しやすいので)周期表の左下に位置する原子ほど陽イオンになりやすい(陽性が強い)ということである。
第一イオン化エネルギーの折れ線グラフ
第一イオン化エネルギーに関するグラフとして、次のようなものが出題されることが多い。
これは上で示した周期表上の傾向を理解していれば「ああ、確かにそうなるよね」と理解できるはず!入試で「第一イオン化エネルギーの傾向を表すグラフとして適切なのはどれか」といった形でよく出題されるのでしっかり覚えておこう。
第二イオン化エネルギー・第三イオン化エネルギーについて
上で説明してきたように、第一イオン化エネルギーは原子から1コの電子を奪うために必要なエネルギーである。イオン化エネルギーには、第一イオン化エネルギーの他に第二イオン化エネルギー・第三イオン化エネルギーも存在しており、第二イオン化エネルギーは一価の陽イオンからさらに電子を1コ奪うために必要なエネルギー、第三イオン化エネルギーは二価の陽イオンからさらに1コ電子を奪うために必要なエネルギーである。
通常、同じ原子では第一イオン化エネルギー、第二イオン化エネルギー、第三イオン化エネルギーの順に大きくなる。したがって、ナトリウムNaなど第一イオン化エネルギーが比較的小さく陽イオンになりやすい原子でも、第二イオン化エネルギー以降は非常に大きいため2つ以上の電子を失ってNa2+やNa3+といった形になることはまずない。
第一イオン化エネルギーと電子親和力・電気陰性度の違い
第一イオン化エネルギーと電子親和力・電気陰性度の違いについては以下のコンテンツを確認しよう。
第一イオン化エネルギーに関する演習問題
原子の最外殻から電子を1個奪うときに必要な最低限のエネルギーを【1】という。
第一イオン化エネルギーが小さい原子ほど陽イオンになり【1(やすorにく)】い。
第一イオン化エネルギーは、周期表上で右上にいくほど【1(大きor小さ)】くなる。
第一イオン化エネルギーの周期表上での傾向を表すグラフとして適切なのは【1】である。
(1)
(2)
(3)
原子番号が20までの原子の第一イオン化エネルギーを比較すると、最も大きい原子は【1】、最も小さい原子は【2】である。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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