【プロ講師解説】このページでは『水に溶ける現象の仕組みから電離との違いなど』について図を用いて解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
「水に溶ける」とは
「水に溶ける」とはどういった現象なのか、まずは例として「塩化ナトリウムNaClを水に溶かす場合」を使って説明していこう。
水分子は極性分子(分子内に極性が生じている分子:極性について詳しくは極性(分子の形との関係・見分け方・例・打ち消しなど)を参照)であり、分子内の一部はややプラスに、一部はややマイナスに電荷が偏っている。
また、NaClは水の中で次のように電離している。
NaCl → Na^{+}+Cl^{-}
\]
電離の結果できたNa+とCl–の周りには、それぞれ水分子のδ–部分とδ+部分が近づいてくる。
結果、いわゆる”水和”した状態となり(水和について詳しくは【図解】水和・水和物(定義・例・原理・仕組みなど)を参照)、Na+とCl–は引き離される。
このように、塩を構成しているイオンが溶媒によって引き離される現象を(その溶媒:今回だと水に)「溶ける(溶解する)」という。
また、アルコール(ex:エタノール)の場合でも同様に考えることができる。
上述の通り、水分子は極性分子であり、分子内の一部はややプラスに、一部はややマイナスに電荷が偏っている。
ここに、極性分子であるエタノールを加えると、お互いの電荷がプラスの所とマイナスの所が引き合って緩い結合(今回はたまたま水素結合を形成する原子の組み合わせなので水素結合)が形成される。
その結果、エタノール分子が水分子に囲まれて他のエタノール分子と引き離されることになるので、いわゆる“水和した(=溶けた)”状態になる。
水に溶ける(=溶解する)の本質まとめ
②溶質同士が引き離されてバラバラになる(=溶けた!)
上で説明してきたように、溶質(イオンや分子)の周りを溶媒分子が囲み、それによって溶質同士が引き離されバラバラになる現象を溶ける(=溶解する)という。
また、溶け”やすさ”については溶媒と溶質の極性を考慮する必要があり、極性溶媒には極性分子が溶けやすく、無極性溶媒には無極性分子が溶けやすい。
極性分子(溶質) | 無極性分子(溶質) | |
---|---|---|
極性溶媒 | 溶ける | 溶けない |
無極性溶媒 | 溶けない | 溶ける |
※この辺りについて詳しくは極性溶媒と無極性溶媒を参照
「水に溶ける」と「電離する」の違い
ここまで説明してきた「水に溶ける(溶解する)」という現象と「電離する」という現象は何が違うのか、という点について解説する。
上で説明したように、水に溶けるという現象は「溶質(イオンや分子)の周りを溶媒分子が囲み、それによって溶質同士が引き離されバラバラになる現象」である。
一方、電離するという現象は「塩を構成する陽イオンと陰イオンが引き離されてバラバラになる現象」である。
つまり…
- イオンがバラバラになるのが「電離する」
- イオンだけでなく、電離しないエタノールのような分子同士がバラバラになるのも含めて考えたのが「水に溶ける」
ということになる。
「水に溶ける(溶解)」という大枠の中に「電離」があるイメージ。
演習問題
問1
塩を構成しているイオンが溶媒分子によって引き離される現象を【1】という。
問2
水分子が溶質の分子やイオンと強く引き合うことを【1】という。
問3
水和しているイオンを【1】、水和している分子を【2】という。
問4
水分子は【1(極性or無極性)】分子であり、塩化ナトリウムNaClを入れると水分子のH原子が【2】イオンを、O原子が【3】イオンを取り囲み、いわゆる溶けた状態になる。
問5
水和水が分子にくっついた状態になったものを【1】といい、代表的な【1】である硫酸銅五水和物の化学式は【2】である。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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