【プロ講師解説】このページでは『陽イオンや陰イオン、イオン式や価数、電子配置、多原子イオンなど』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
陽イオン・陰イオン
原子から電子が取れると陽イオンに、原子が電子を取り込むと陰イオンになる。これらは、1コの原子からできたイオンなので単原子イオンという。
陽イオン
ナトリウムNaやカリウムKなどのアルカリ金属には、最外殻電子が1コ存在する。この電子は、内側にある電子に比べて原子核との引力が弱く、原子から出ていきやすい状態になっている。それ故、電子を奪う力が強いものがくると、容易に電子を離し一価の陽イオン(Na+・K+)となる。
\mathtt{ Na → Na^{+} + e^{-} }
\]
ちなみに、これを電子配置図で表すと次のようになる。
カルシウムCaやマグネシウムMgなどのアルカリ土類金属は、最外殻電子が2コあるので、その2コが取れて2価の陽イオン(Ca2+・Mg2+)となる。
\mathtt{ Ca → Ca^{2+} + 2e^{-} }
\]
陰イオン
フッ素Fや塩素原子Clなどのハロゲンには、最外殻電子が7コ存在する。それ故、外から電子を1つ受け入れて最外殻電子を8コ(=希ガスの電子配置)とし、安定する。
\mathtt{ Cl + e^{-} → Cl^{-}}
\]
ちなみに、これを電子配置図で表すと次のようになる。
酸素Oや硫黄Sなど16族の元素には、最外殻電子が6コ存在する。それ故、外から電子を2つ受け入れて最外殻電子を8コ(=希ガスの電子配置)とし、安定する。
\mathtt{ O + 2e^{-} → O^{2-}}
\]
イオンの電子配置
陽イオン・陰イオンの電子配置は(電子を出す・入れるの違いはあるものの)希ガスの電子配置と同じ電子配置となっている。これは希ガスの電子配置が非常に安定しているからである。(希ガスの電子配置が安定している理由については希ガスの電子配置が安定な理由を参照)
イオン式・価数
多くの場合、単原子イオンは元素記号の右上に電荷を書いたイオン式で表す。
\mathtt{ Na^{+} , O^{2-}}
\]
このとき書かれた電荷のことをそのイオンの価数という。Na+であれば一価の陽イオン、O2-であれば2価の陰イオンと表現する。
陽性・陰性
原子が陽イオンになろうとする性質のことを陽性、陰イオンになろうとする性質のことを陰性という。陽性が高い元素はアルカリ金属であるナトリウムNaやカリウムK、陰性が高い金属はハロゲンであるフッ素Fや塩素Clなどである。
多原子イオン
多原子イオンとは複数の原子が結合した“原子団”に電子が結合したり取れたりしてできたイオンである。以下に示す代表的な多原子イオンは暗記しておくのがベスト。
価数 | 名称 | イオン式 |
---|---|---|
1 | 水酸化物イオン | OHー |
1 | シアン化物イオン | CNー |
2 | 炭酸イオン | CO32ー |
1 | 炭酸水素イオン | HCO3ー |
1 | 酢酸イオン | CH3COOー |
2 | シュウ酸イオン | C2O42ー |
1 | 硝酸イオン | NO3ー |
2 | 硫酸イオン | SO42ー |
2 | 亜硫酸イオン | SO32ー |
1 | 硫酸水素イオン | HSO4ー |
3 | リン酸イオン | PO43ー |
1 | チオシアン酸イオン | SCNー |
1 | 次亜塩素酸イオン | ClOー |
1 | 亜塩素酸イオン | ClO2ー |
1 | 塩素酸イオン | ClO3ー |
1 | 過塩素酸イオン | ClO4ー |
1 | 過マンガン酸イオン | MnO4ー |
2 | クロム酸イオン | CrO42ー |
2 | ニクロム酸イオン | Cr2O72ー |
演習問題
まとめ
最後に、この『陽イオン・陰イオンとは?イオン式や価数、電子配置、多原子イオンなども解説!』のページで解説した内容をまとめておきます。
- 原子から電子が取れると陽イオンに、原子が電子を取り込むと陰イオンになる
- 1コの原子からできたイオンを単原子イオンという
- 陽イオン・陰イオンの電子配置は(安定性を確保するため)希ガスの電子配置と同じ電子配置となっている
- 単原子イオンは元素記号の右上に電荷を書いたイオン式で表す
- イオンの電荷のことをそのイオンの価数という
- 複数の原子が結合した“原子団”に電子が結合したり取れたりしてできたイオンを多原子イオンという
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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