【プロ講師解説】このページでは『化学平衡(平衡定数やmol数の変化、グラフなど)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
化学平衡とは
化学平衡について、水素とヨウ素の反応を例に説明していこう。
H_{2}+I_{2}\underset{逆反応}{\overset{正反応}{\rightleftarrows}}2HI
\]
まずは、正反応の方に注目する。
反応速度の式(V=K[A])より、反応物の濃度([A])が大きいと反応速度(V)も大きくなる。正反応における反応物はH2とI2なので、反応速度は最初が最も大きく、徐々に(反応物であるH2とI2の濃度が減少していくので)小さくなっていく。
逆反応の方はどうだろうか。
逆反応は、HIからH2とI2が生成する反応なので、反応物はHIである。
\underbrace{ 2HI }
_{ \text{ 反応物 }}→\underbrace{ H_{2}+I_{2} }
_{ \text{ 生成物 }}
\]
始めはHIの濃度が極めて低いので、反応速度の式(V=K[A])から分かるように反応速度は非常に小さい。徐々にHIの濃度が増加していくと、それに伴って反応速度も大きくなっていく。
以上のように、正反応の速度は次第に小さく、逆反応の速度は次第に大きくなっていくが、両方とも最終的には同じ速度に落ち着き一定となる。
この、正反応と逆反応の速度が等しくなった状態を平衡状態という。
平衡状態になると、一見反応が止まっているように見える。
しかし実際は「正反応と逆反応が起こっているが、2つの速度が等しいため反応が進んでないように見えるだけ」だということをきっちり押さえておこう。
化学平衡とmol数の変化
先ほどの反応を使って説明しよう。
H_{2}+I_{2}\underset{逆反応}{\overset{正反応}{\rightleftarrows}}2HI
\]
反応前のH2とI2のmol数が1.0、平衡時は0.20だとすると…
反応で使われたH2とI2は0.80mol(1.0-0.20)ずつなので、係数比より生成したHIは1.6molであることがわかる。
このとき、縦軸にmol数、横軸に時間をとったグラフは次のようになる。
H2とI2は、最初1.0molあったのが平衡時には0.20molに、HIはスタート時は0molだったのが平衡時には1.6molになっている。
上で紹介した反応速度のグラフは最終的に2つのグラフが重なっていたけど、こちらは必ずしも重なるわけではないので注意しよう。(重なるのは、生成物と反応物の平衡時のmol数が一緒だった場合)
平衡定数K
H_{2}+I_{2}⇄2HI
\]
この反応が平衡状態のとき、H2、I2、HIのモル濃度をそれぞれ[H2]、[I2]、[HI]とすると次の関係式が成り立つ。
このKを平衡定数という。
[HI]に2乗が付いているが、これは反応式中のHIの係数からきている。平衡定数を求める式では、濃度を反応式中での係数乗する。
また、平衡定数Kに関して1つ知っておくべきことがある。
平衡定数は「温度変化のみ」に影響されて変化する。
逆に言うと、温度が一定であればスタート時のmol数などが違っても平衡定数Kは一定となる。
化学平衡に関する演習問題
正反応の速度は次第に【1(大きor小さ)】く、逆反応の速度は次第に【2(大きor小さ)】くなっていくが、両方とも最終的には同じ速度に落ち着き一定となる。この、正反応と逆反応の速度が等しくなった状態を【3】という。
平衡状態になると一見反応が止まっているように見えるが、実際は【1】反応と【2】反応が起こっており、2つの速度が【3(等しいor異なる)】ため反応が進んでないように見えるだけである。
「H2 + I2 ⇆ 2HI」の反応において、反応前のH2とI2のmol数が1.0、平衡時は0.20だとすると、平衡時のHIのmol数は【1】である。
平衡状態では、温度が一定であれば平衡定数Kの値は一定となる。これを【1】の法則という。
平衡状態において一定となる定数を【1】という。
平衡定数は【1】にのみ依存する。
気体反応の場合、モル濃度ではなく各気体の分圧で平衡定数を考える場合があり、これを【1】といい【2】で表す。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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