【プロ講師解説】このページでは『ボルタ電池(仕組み・各極の反応・分極の理由など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
ボルタ電池とは
ボルタ電池とは、亜鉛Zn板(負極)と銅Cu板(正極)を希硫酸H2SO4に浸した電池である。
ボルタ電池は、イタリア人であるボルタが1800年に発明した電池が原形になっている。
ボルタ電池の電池式
上述の通り、ボルタ電池とは、亜鉛Zn板(負極)と銅Cu板(正極)を希硫酸H2SO4に浸した電池である。
これを踏まえて、ボルタ電池の電池式は次のように表すことができる。
(-)Zn|H_{2}SO_{4}aq|Cu(+)
\]
ボルタ電池の仕組み
STEP1 | イオン化傾向の大きい金属板が溶ける |
STEP2 | STEP1で発生した電子e–がもう片方の金属板の方へ流れる |
STEP3 | 流れてきたe–が(溶液中の)イオン化傾向の小さい陽イオンとくっつく |
ボルタ電池の仕組みについて、上の3STEPを用いて解説する。
STEP1
まずは、イオン化傾向の大きい金属板が溶ける。(詳しくはイオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)を参照)
ボルタ電池に使われている金属板はCuとZnであり、これらのうちイオン化傾向がより高いのはZnである。したがって、Zn板が溶け出す。
また、ZnがZn2+という陽イオンになったので、電子e–が発生していることも確認しておこう。
STEP2
STEP1で発生した電子e–がCu板側に伝わる。
このとき、電子e–が通過することで(電流が発生して)豆電球が点灯していることに注目しよう。
STEP3
Cu板に流れてきた電子e–は、希H2SO4中に存在しているH+とくっつく。(=気体のH2発生)
各極の反応
ボルタ電池の負極・正極での反応をそれぞれまとめておこう。
負極
ボルタ電池の負極では、Zn板が溶け出してZn2+とe–が発生する。
Zn→Zn^{2+}+2e^{-}
\]
正極
ボルタ電池の正極では、H2SO4中に存在しているH+がe–を受け取ることでH2が発生する。
2H^{+}+2e^{-}→H_{2}
\]
ボルタ電池の問題点
ボルタ電池では、正極で気体の水素(H2)を発生する。
ボルタ電池を使い続けるとこのH2がCu板の周りに溜まってくる。
溜まったH2は、水溶液中のH+が負極からやってきたeーを受け取るのを妨害してしまう。
その結果、電子の受け渡しに不具合が生じ、電圧が急激に低下する分極という現象が起こる。
分極を防ぐためには、H2O2などの減極剤を溶液に加える必要がある。
ボルタ電池に関する演習問題
問1
ボルタ電池の負極は【1】板、正極は【2】板である。
問2
ボルタ電池では、まずイオン化傾向のより【1(大きor小さ)】い亜鉛板が溶け出し【2】となる。
このとき放出された【3】は銅板側に伝わる。
銅板側で【3】は希H2SO4中の【4】が受け取って【5】が発生する。
ボルタ電池の放電では、正極で発生する【1】が原因で起電力が低下する。
その結果、電子の受け渡しに不具合が生じ、電圧が急激に低下する【2】という現象が起こる。【2】を防ぐためにはH2O2などの【3】を溶液に加える必要がある。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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