【プロ講師解説】このページでは『陽イオン交換膜法(水酸化ナトリウムの製法)の仕組みや反応式』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。


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陽イオン交換膜法とは

陽イオン交換膜法とは、陽イオンだけを透過させ陰イオンを透過させない性質をもつ「陽イオン交換膜」という特殊な膜を用いて、純度の高い水酸化ナトリウム溶液を得るための工業的方法である。

これからこの方法について、図を用いながら5STEPで説明していくので、順を追ってきっちり理解するようにしよう。

陽イオン交換膜法の仕組み

STEP1 陽極室にNaCl水溶液を、陰極室に水(希NaOH水溶液)を入れる
STEP2 陽極室ではClがeを放出してCl2となる
STEP3 陰極室ではH2Oがeを受け取りOHが発生する
STEP4 陽極室にあるNa+が陽イオン交換膜を通過し陰極室に移動する
STEP5 STEP3で発生したOHとSTEP4で陰極室に移動したNa+がくっつきNaOHが生成する
Point!

これから上の5STEPを用いて陽イオン交換膜法の仕組みを解説していく。

STEP1

陽極室に飽和塩化ナトリウムNaCl水溶液を、陰極室に水(希NaOH水溶液)を入れる

まずは、陽極室・陰極室それぞれに材料となる水溶液を入れる。
陰極側においてNaOHの生成反応に直接関与するのは水H2Oだが、実際は電気伝導性を上げるためにNaOHを少しだけ溶かした希NaOH水溶液が用いられる。

STEP2

陽極ではClがeを放出しCl2になる

次に、陽極ではClがeを放出しCl2になる。

STEP3

陰極ではH2Oがeを受け取りOHが発生する

次に、陰極ではH2Oがeを受け取りOHが発生する。水素H2が同時に発生していることも把握しておこう。

STEP4

陽極室にあるNa+が陽イオン交換膜を通過し陰極室に移動する

次に、陽極室にあるNa+が陽イオン交換膜(陽イオンのみを通す膜)を通過し、陰極室に移動する。

STEP5

STEP3で発生したOHとSTEP4で陰極室に移動したNa+がくっつきNaOHが生成する

最後に、STEP3で発生したOHとSTEP4で陰極室に移動したNa+がくっつきNaOHが生成する。

陽イオン交換膜法の反応式

上で説明したSTEPに基づいて、陽極・陰極・全体の反応式を考えていこう。

陽極の反応式

陽極での反応はSTEP2の通り「Clがeを放出しCl2になる反応」である。

\[
2Cl^{-} → Cl_{2} + 2e^{-}
\]

陰極の反応式

陰極での反応は、STEP3の通り「H2Oがeを受け取りOHが発生する反応」である。

\[
2H_{2}O + 2e^{-} → H_{2} + 2OH^{-}
\]

全体の反応式

陽イオン交換膜法全体の反応式を書くときは陽極の反応式と陰極の反応式を足し合わせる。

今回は2つの式の電子(e)の数が揃っているのでそのまま足せばOK!(陽極・陰極どちらの式にもNa+が入っていないので、最後にこれを補うことも忘れないように)

化学反応式の作り方に関しては「高校化学「化学反応式の作り方・計算問題」完全マスター講座!!」を確認しよう。

陽イオン交換膜の役割

最後に、陽イオン交換膜の役割についてまとめておく。

先述の通り、陽イオン交換膜とは「陽イオンだけを透過させ陰イオンを透過させない性質をもつ膜」である。

今回、この膜は次のような目的で利用されている。

  • 陽極室にいるNa+を陰極室に通過させる(OHと反応させて目的物質NaOHを作るため)
  • Clは透過させずに陽極室に保つ(e放出させ陰極室に送るため)
  • 陰極室のOHを陰極室に保つ(Na+と反応させて目的物質NaOHを作るため)

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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