【プロ講師解説】このページでは『酸化マンガンを材料にした「塩素の製法」』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

塩素の製法の流れ

STEP1 酸化マンガン(Ⅳ)MnO2の入ったフラスコをバーナーの上にセットし、水・濃硫酸の入った洗気びんを順番につなぐ
STEP2 上から濃塩酸を徐々に滴下する
→ Cl2・H2O・HClが発生
STEP3 水の入った洗気びんでHClを取り除く
STEP4 濃硫酸の入った洗気びんでH2Oを取り除く
STEP5 下方置換法でCl2を回収する
Point!

STEP1

酸化マンガン(Ⅳ)MnO2の入ったフラスコをバーナーの上にセットし、水・濃硫酸の入った洗気びんを順につなぐ

まずは、酸化マンガン(Ⅳ)MnO2の入ったフラスコをバーナーの上にセットし、水・濃硫酸の入った洗気びんを順につなぐ。

STEP2

上から濃塩酸を徐々に滴下する→Cl2・H2O・HClが発生

次に、上から濃塩酸を徐々に滴下する。

このときの反応式は以下の通り。

\[
MnO_{2}+4HCl→Cl_{2}+MnCl_{2}+2H_{2}O
\]

この反応により、塩素Cl2が発生する。
また、このとき発生する気体には、Cl2の他に、揮発したHClとH2Oも含まれる。

STEP3

水の入った洗気びんでHClを取り除く

次に、水の入った洗気びんでHClを取り除く。

HClは水によく溶ける(Cl2は溶けない)のでH2Oの入った洗気びんを通すことでHClだけが取り除かれる。

STEP4

濃硫酸の入った洗気びんでH2Oを取り除く

次に、濃硫酸の入った洗気びんでH2Oを取り除く。

濃硫酸は【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどでやったように酸性の乾燥剤である。
したがって、H2Oはここで取り除かれる。

STEP5

下方置換法でCl2を回収する

Cl2は空気より重く水に溶ける気体。
したがって、下方置換法で回収する。(気体の回収法について詳しくは気体の捕集装置(上方置換法・下方置換法・水上置換法)を参照)

塩素の製法に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

塩素の製法において、2つの洗気ビンにはそれぞれ【1】と【2】を入れ、必ず【1】→【2】の順番でつなぐ。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】水【2】濃硫酸


問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

濃硫酸は【1】性の乾燥剤である。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】酸

※乾燥剤について詳しくは【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

塩素Cl2は空気より【1(重or軽)】く水に溶け【2(やすorにく)】いため【3】法で回収する。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】重【2】やす【3】下方置換

※気体の捕集法について詳しくは気体の捕集装置(上方置換法・下方置換法・水上置換法)を参照

関連:無機のドリルが、できました。

無機化学の問題演習を行うための"ドリル"ができました。解答・解説編には大学入試頻出事項が網羅的にまとまっています。詳細は【公式】無機化学ドリルにて!


著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細