不飽和度(公式、計算解法、窒素を含む場合など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『不飽和度(公式、計算解法、窒素を含む場合など)』について解説しています。


不飽和度とは

  • 分子式から異性体を書くときは、炭素C原子数だけではなく、水素H原子数が重要な情報源となる。
  • 例えば、飽和炭化水素が二重結合や環状構造を形成する場合、H原子2個を取り除く必要がある。
  • これは逆に「H原子が飽和炭化水素よりも2個少なければ二重結合又は環状構造が1個ある」と考えることもできる。
  • このように、H原子の不足数を元に有機化合物の構造を推定することができ、それをわかりやすい数字で表したものが不飽和度水素原子欠乏度)である。

不飽和度の公式

  • 不飽和度の公式は次の通りである。

\[ \begin{align} &不飽和度(U)\\
&= \mathrm{\frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\end{align} \]

  • 不飽和度は水素H原子の最大数から今あるH原子の数を引き、それを2で割ることで求めることができる。

炭化水素の不飽和度

  • 炭化水素はCとHのみからなる有機化合物である。
  • 鎖式飽和炭化水素(炭化水素のうちH原子の不足がなく直鎖状のもの)では、各C原子に上下2個のH原子が付いている。
  • また、両端のC原子にはさらに1個ずつH原子が付いている。
  • したがって、H原子の最大数は(2n+2)個である。

ex)C4H10の不飽和度

\[ \begin{align} U&= \mathrm{\frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\\
&= \frac{ (2n+2)-(今ある\mathrm{H}原子数) }{ 2 }\\
&=\frac{ (2×4+2)-10 }{ 2 }\\
&=0
\end{align} \]

ex)C4H8の不飽和度

\[ \begin{align} U&= \mathrm{\frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\\
&= \frac{ (2n+2)-(今ある\mathrm{H}原子数) }{ 2 }\\
&=\frac{ 2×4+2-8 }{ 2 }\\
&=1
\end{align} \]


O原子を含む場合の不飽和度

  • 酸素O原子が1個入っても、H原子の最大数には影響しない。
  • したがって、H原子の最大数は(2n+2)個である。

ex)C4H10Oの不飽和度

\[ \begin{align} U&= \mathrm{\frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\\
&= \frac{ (2n+2)-(今ある\mathrm{H}原子数) }{ 2 }\\
&=\frac{ 2×4+2-10 }{ 2 }\\
&=0
\end{align} \]

ex)C4H8O2の不飽和度

\[ \begin{align} U&=\mathrm{ \frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\\
&= \frac{ (2n+2)-(今ある\mathrm{H}原子数) }{ 2 }\\
&=\frac{ 2×4+2-8 }{ 2 }\\
&=1
\end{align} \]


N原子を含む場合の不飽和度

  • 窒素N原子が1個入ると、H原子の最大数は1個増加する。
  • したがって、H原子の最大数は(2n+2+N原子数)個である。

ex)C4H9NO2の不飽和度

\[ \begin{align} U&= \mathrm{\frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\\
&=\frac{ (2×4+2+1)-9 }{ 2 }\\
&=1
\end{align} \]


ハロゲンを含む場合の不飽和度

  • ハロゲンである塩素Cl原子が1個入ると、H原子の最大数は1個減少する。
  • したがって、H原子の最大数は(2n+2ーハロゲン原子数)個である。

ex)C4H9Clの不飽和度

\[ \begin{align} U&= \mathrm{\frac{ (H原子の最大数)-(今あるH原子数) }{ 2 }}\\
&=\frac{ (2×4+2-1)-9 }{ 2 }\\
&=0
\end{align} \]

  • ハロゲンについて詳しくは次のページを参照のこと。

参考:ハロゲン単体・ハロゲン化水素の性質・製法

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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