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芳香族カルボン酸(安息香酸・サリチル酸)の構造・製法・性質・反応
目次
はじめに
【プロ講師解説】このページでは『芳香族カルボン酸(安息香酸・サリチル酸)の構造・製法・性質・反応』について解説しています。
芳香族カルボン酸とは
- ベンゼン環にカルボキシ基(-COOH)が置換した化合物を芳香族カルボン酸という。
安息香酸
- ここでは、代表的な芳香族カルボン酸である安息香酸とサリチル酸を紹介する。
- ベンゼン環の1つの水素Hをカルボキシ基(-COOH)1つで置換した化合物を安息香酸という。
安息香酸の製法
- 安息香酸は「トルエンの酸化」により生成される。
安息香酸の反応・性質
- 安息香酸は酸性物質であり、したがって中和反応や弱酸遊離反応を起こす。
●安息香酸の反応
- 安息香酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和反応
- 安息香酸と炭酸水素ナトリウムの弱酸遊離反応
❶ 安息香酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和反応
- 酸性物質である安息香酸と塩基性物質である水酸化ナトリウムNaOH水溶液を反応させると、塩である安息香酸ナトリウムが生成する。
❷ 安息香酸と炭酸水素ナトリウムの弱酸遊離反応
- 安息香酸と炭酸水素ナトリウムNaHCO3が反応すると弱酸遊離反応が起こる。
- 安息香酸は本来弱酸であるが、炭酸と比較すると相対的に強い酸であり、したがってこの反応においては強酸として働く。
- また、この反応はカルボキシ基(-COOH)の検出反応として用いられている。
サリチル酸
- ベンゼン環のオルト位に存在する水素H2つがヒドロキシ基(-OH)とカルボキシ基(-COOH)1つずつよって置換された化合物をサリチル酸という。
サリチル酸の製法
- サリチル酸はフェノールを元にして次のように生成される。
- フェノールと水酸化ナトリウム水溶液を反応させ、ナトリウムフェノキシドを得る(フェノール類(名称・製法・性質・反応など)にあるようにフェノールは弱酸性の物質であるため、塩基と中和反応を起こす)。
- ナトリウムフェノキシドを高温高圧下で二酸化炭素CO2と反応させ、サリチル酸ナトリウムを得る。この過程の詳細は次の通り。
- サリチル酸ナトリウムは弱酸を含む塩であり、塩酸などの強酸を加えることで弱酸遊離反応を起こし、サリチル酸を生じる。
サリチル酸の反応・性質
- サリチル酸はヒドロキシ基(-OH)とカルボキシ基(-COOH)を1つずつもっているため、”カルボン酸”として反応する場合と、”フェノール”として反応する場合に分けて考える必要がある。
●サリチル酸の反応
- カルボン酸としての反応
- フェノールとしての反応
- 酸としての反応
- 検出反応
❶ カルボン酸としての反応
- サリチル酸のカルボキシ基(-COOH)がメタノールと反応することで「エステル化」が起こる。
- このとき生成されるサリチル酸メチル(=サロメチール)は特異臭をもつ油状の液体で、消炎鎮痛作用をもつので外用塗布薬などとして用いられる。
- カルボン酸の反応について詳しくは次のページを参照のこと。
参考:カルボン酸・エステル(一覧・構造・命名法・製法・反応・性質など)
❷ フェノールとしての反応
- サリチル酸のヒドロキシ基(-OH)が無水酢酸と反応することで「アセチル化」が起こる。
- このとき生成されるアセチルサリチル酸(=アスピリン)は解熱鎮痛作用をもつ。
- フェノールの反応について詳しくは次のページを参照のこと。
❸ 酸としての反応
- サリチル酸はカルボキシ基やヒドロキシ基をもつため酸としてはたらく。
●【パターン1】サリチル酸と水酸化ナトリウムNaOH水溶液との反応
- サリチル酸と水酸化ナトリウムNaOH水溶液を反応させるとサリチル酸二ナトリウムが生成する。
●【パターン2】サリチル酸と炭酸水素ナトリウムNaHCO3との反応
- サリチル酸と炭酸水素/ナトリウムNaHCO3を反応させるとサリチル酸ナトリウムが生成する。
- この反応はカルボキシ基(-COOH)の検出反応として用いられている。
❹ 検出反応
- フェノール性ヒドロキシ基をもつ化合物は塩化鉄(Ⅲ)FeCl3水溶液を加えると紫色を呈し、この呈色反応はフェノール性ヒドロキシ基の検出反応として知られている。
- サリチル酸もフェノール性ヒドロキシ基をもっており、この反応で検出される。