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はじめに
芳香族化合物の一種である芳香族カルボン酸についてきちんと理解できている高校生は意外と少ない。このページでは入試で狙われやすい安息香酸とサリチル酸を中心に、芳香族カルボン酸の構造や製法、性質、反応などを一から丁寧に解説していく。ぜひこの機会に芳香族カルボン酸をマスターして他の受験生と差をつけよう!
芳香族カルボン酸とは
芳香族カルボン酸とはベンゼン環にカルボキシ基(-COOH)が置換した化合物である。
芳香族カルボン酸の種類
高校化学で頻出の芳香族カルボン酸は安息香酸とサリチル酸の2つ。これらについて順番に解説していこう。
安息香酸とは
安息香酸とはベンゼン環の1つの水素Hをにカルボキシ基(-COOH)1つで置換した化合物である。
安息香酸の製法
安息香酸は「トルエンの酸化」によって生成される。
安息香酸の反応・性質
安息香酸は酸性物質であり、それ故、中和反応や弱酸遊離反応を起こす。
ここでは「安息香酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和反応」と「安息香酸と炭酸水素ナトリウムの弱酸遊離反応」の2つを確認していこう。
安息香酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和反応
酸性物質である安息香酸と塩基性物質である水酸化ナトリウムNaOH水溶液を反応させると塩である安息香酸ナトリウムが生成する。
安息香酸と炭酸水素ナトリウムの弱酸遊離反応
安息香酸と炭酸水素ナトリウムNaHCO3が反応すると弱酸遊離反応が起こる。
安息香酸は本来弱酸であるが、炭酸と比較すると相対的に強い酸であり、したがってこの反応においては強酸として働く。
また、この反応はカルボキシ基(-COOH)の検出反応として用いられている。
サリチル酸とは
サリチル酸とは、ベンゼン環のオルト位に存在する水素H2つがヒドロキシ基(-OH)とカルボキシ基(-COOH)1つずつよって置換された化合物である。
サリチル酸の製法
サリチル酸はフェノールを元にして次のように生成される。
①フェノールと水酸化ナトリウム水溶液を反応させ、ナトリウムフェノキシドを得る。(【保存版】フェノール類の名称・製法・性質・反応まとめ!!にあるようにフェノールは弱酸性の物質であるため、塩基と中和反応を起こす。)
②ナトリウムフェノキシドを高温高圧下で二酸化炭素CO2と反応させ、サリチル酸ナトリウムを得る。
この過程の詳細は次の通り。
③サリチル酸ナトリウムは弱酸を含む塩であり、塩酸などの強酸を加えることで弱酸遊離反応を起こし、サリチル酸を生じる。
サリチル酸の反応・性質
上で構造を示したが、サリチル酸はヒドロキシ基(-OH)とカルボキシ基(-COOH)を1つずつ持っているため、”カルボン酸”として反応する場合と、”フェノール”として反応する場合に分けて考える必要がある。
カルボン酸としての反応
サリチル酸のカルボキシ基(-COOH)がメタノールと反応することで「エステル化」が起こる。
このとき生成されるサリチル酸メチル(=サロメチール)は特異臭をもつ油状の液体で、消炎鎮痛作用をもつので外用塗布薬などとして用いられる。
フェノールとしての反応
サリチル酸のヒドロキシ基(-OH)が無水酢酸と反応することで「アセチル化」が起こる。
このとき生成されるアセチルサリチル酸(=アスピリン)は解熱鎮痛作用をもつ。
酸としての反応
サリチル酸はカルボキシ基やヒドロキシ基を持つため酸として働く。
サリチル酸と水酸化ナトリウムNaOH水溶液を反応させるとサリチル酸二ナトリウムが生成する。
この反応はカルボキシ基(-COOH)の検出反応として用いられている。
検出反応
【保存版】フェノール類の名称・製法・性質・反応まとめ!!にあるように、フェノール性ヒドロキシ基をもつ化合物は塩化鉄(Ⅲ)FeCl3水溶液を加えると紫色を呈し、この呈色反応はフェノール性ヒドロキシ基の検出反応として知られている。
サリチル酸もフェノール性ヒドロキシ基をもっており、この反応で検出される。
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