【プロ講師解説】このページでは『中和(定義、塩、中和の化学反応式の作り方など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
中和とは
酸と塩基が反応すると、塩と水が生じる。この反応を中和という。中和が起こると、酸・塩基ともにその性質が打ち消される。
例として、塩酸と水酸化ナトリウムの反応を確認しよう。
酸であるHClから出たH+と塩基であるNaOHから出たOH–が合わさってH2Oが、また、余ったCl–とNa+がくっついて塩NaClが生成する。
また、次の「塩化水素とアンモニアの反応」のように水が発生しない中和も存在するということも併せて覚えておこう。
酸であるHClが水素イオン(H+)を出してCl–となり、塩基であるNH3がH+を受け取ってNH4+になっている。ちなみに、Cl–とNH4+は組み合わさって塩化アンモニウムNH4Clの白煙となる。
中和と中性は違う
酸と塩基が打ち消されることを「中和」というが、似たような言葉の「中性」とは少し意味が異なる。このあたりについて詳しくは中和と中性の違いって何?pH7が中和点とは限らない理由を解説!を確認しよう。
中和の化学反応式の作り方
STEP1 | 酸・塩基の化学式を書く |
STEP2 | H+とOH–の数を合わせる |
STEP3 | H+とOH–の数だけ右辺にH2Oを書く |
STEP4 | 左辺でまだ反応に使われていないイオンを右辺に塩として書く |
中和の化学反応式は上の4STEPで作成する。いくつか例題を使って説明していこう。
硫酸と水酸化ナトリウムの中和反応
STEP1
まずは、酸である硫酸と塩基である水酸化ナトリウムの化学式を書く。
\mathrm{ H_{2}SO_{4} + NaOH }
\]
STEP2
次に、酸・塩基の係数を調節することで、H+とOH–の数を合わせる。
\mathrm{ H_{2}SO_{4} + 2NaOH }
\]
今回の場合、H2SO4に含まれるH+の数が2コなので、NaOHの係数を2にすればOK。
STEP3
次に、H+とOH–の数だけ右辺にH2Oを書く。
\mathrm{ H_{2}SO_{4} + 2NaOH → 2H_{2}O }
\]
今回は、STEP2でH+とOH–の数を2コで揃えたので、右辺にH2Oを2コ書き込む。
STEP4
最後に、左辺でまだ反応に使われていないイオンを右辺に塩として書く。
\mathrm{ H_{2}SO_{4} + 2NaOH → 2H_{2}O + Na_{2}SO_{4} }
\]
今回は、左辺にSO42-が1コ、Na+が2コ余っているので、右辺にはそれらを組み合わせた塩Na2SO4を書き込む。
塩酸と水酸化カルシウムの中和反応
STEP1
まずは、酸である塩酸と塩基である水酸化カルシウムの化学式を書く。
\mathrm{ HCl + Ca(OH)_{2} }
\]
STEP2
次に、酸・塩基の係数を調節することで、H+とOH–の数を合わせる。
\mathrm{ 2HCl + Ca(OH)_{2} }
\]
今回の場合、Ca(OH)2に含まれるOH–の数が2コなので、HClの係数を2にすればOK。
STEP3
次に、H+とOH–の数だけ右辺にH2Oを書く。
\mathrm{ 2HCl + Ca(OH)_{2} → 2H_{2}O }
\]
今回は、STEP2でH+とOH–の数を2コで揃えたので、右辺にH2Oを2コ書き込む。
STEP4
最後に、左辺でまだ反応に使われていないイオンを右辺に塩として書く。
\mathrm{ 2HCl + Ca(OH)_{2} → 2H_{2}O + CaCl_{2} }
\]
今回は、左辺にCl–が2コ、Ca2+が1コ余っているので、右辺にはそれらを組み合わせた塩CaCl2を書き込む。
中和に関する演習問題
酸と塩基が反応すると、塩と水が生じる。この反応を【1】という。【1】が起こると、酸・塩基ともにその性質が打ち消される。
中和反応では多くの場合【1】と【2】が生じる。塩酸HClと水酸化ナトリウムNaOHの反応では、酸であるHClから出た【3】と塩基であるNaOHから出た【4】が合わさって【1】が、また、余ったCl–とNa+がくっついて【2】の一種である【5】ができている。
塩化水素HClとアンモニアNH3の中和反応では例外的に水H2Oが生じない。酸であるHClが【1】を出して【2】となり、塩基であるNH3が【1】を受け取って【3】となり、【2】と【3】が組み合わさって【4】の白煙となる。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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