【プロ講師解説】このページでは『共有結合結晶(性質・例・特徴・組成式・融点・電気伝導性など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
共有結合結晶とは
炭素Cやケイ素Siは原子価が4(=最大)のため、多数の原子が共有結合だけで結びついて大きな結晶を作ることができる。このように、多数の原子が共有結合によって繋がってできた結晶を共有結合結晶という。この結晶は1つの“巨大分子”とみなすことができる。
共有結合結晶の代表例としてはダイヤモンドC・黒鉛C・ケイ素Si・二酸化ケイ素SiO2などがあり、これらの物質は構成元素の種類と割合を最も簡単な整数比で表した“組成式”で表される。
ダイヤモンド・黒鉛
ダイヤモンドと黒鉛は、どちらも炭素Cの同素体で、共有結合結晶を形成するが、両者の性質は大きく異なる。順番に見ていこう。
ダイヤモンド
ダイヤモンドCは、炭素C原子がもつ4コの価電子が隣り合うC原子の価電子と共有結合して、正四面体の構造が繰り返された立体網目状構造をしている。
したがって、ダイヤモンドは極めて硬く、融点も非常に高い。また、(伝導に必要な価電子が全て共有結合を作るために使われているので)電気伝導性も低く、(光を遮る価電子がなく可視光は全て通過するため)色は無色透明である。
ちなみに、ダイヤモンドの共有結合結晶の単位格子は次のようになる。
単位格子の頂点を占めるC原子(1/8)を赤、面上のC原子(1/2)を青、格子内部の丸々一個のC原子を緑で表している。
単位格子に含まれるC原子の数は…
\mathtt{ \frac{ 1 }{ 8 }×8+\frac{ 1 }{ 2 }×6+1×4=8(コ)}
\]
8(コ)となる。
さらに、ダイヤモンドの単位格子の配位数は…
C原子は周りの4コのC原子と接している。
したがって、ダイヤモンドの単位格子における配位数は4となる。
黒鉛
黒鉛Cは、炭素原子がもつ4コの価電子のうち3コのみを使って隣り合う炭素原子の価電子と共有結合し、正六角形の構造が繰り返された平面層状構造を作っている。また、この平面層状構造同士が分子間力によって緩く結合している。
したがって、黒鉛は比較的柔らかく、また層の部分から薄く剥がれやすい。また、(伝導に必要な価電子が1つ残っているので)電気伝導性があり、(光を遮る価電子が1つ残っているので可視光は一部しか透過せず)色は黒色である。
ケイ素・二酸化ケイ素
ケイ素
ケイ素Siも炭素同様14族元素なので、4コの価電子を持っている。
したがって、ダイヤモンドのように正四面体構造が繰り返された共有結合結晶を形成する。
Si-Si結合は、ダイヤモンドのC-C結合に比べて弱く切れやすいのでやや電気を通す。(=半導体↔︎ダイヤモンドは絶縁体)
したがって、純度の高いケイ素はパソコン関係の部品や太陽光発電のパネルなどに用いられる。
二酸化ケイ素
二酸化ケイ素SiO2の共有結合結晶は、ケイ素Siの共有結合結晶に酸素O原子を組み込んだ構造になっている。
Si原子の正四面体構造のなかに、SiO4の正四面体構造が収まっているようなイメージ。
二酸化ケイ素SiO2は、ダイヤモンド同様、硬くて融点が高く、電気も通さない。
天然に水晶や石英として存在し、その多くは光ファイバーや時計の部品などとして利用される。
共有結合結晶に関する演習問題
炭素Cやケイ素Siは原子価が4(=最大)のため、多数の原子が共有結合だけで結びついて大きな結晶を作ることができる。このように、多数の原子が共有結合によって繋がってできた結晶を【1】という。この結晶は1つの【2】とみなすことができる。
共有結合結晶の代表例としてはダイヤモンドC・黒鉛C・ケイ素Si・二酸化ケイ素SiO2などがあり、これらの物質は構成元素の種類と割合を最も簡単な整数比で表した【1】で表される。
ダイヤモンドCは、炭素C原子がもつ【1】コの価電子が隣り合うC原子の価電子と【2】結合して、正四面体の構造が繰り返された【3】状構造をしている。
ダイヤモンドは極めて【1(硬or柔らか)】く、融点は非常に【2(高or低)】い。また、(伝導に必要な価電子が全て共有結合を作るために使われているので)電気伝導性は【3(高or低)】く、(光を遮る価電子がなく可視光は全て通過するため)色は【4】である。
黒鉛Cは、炭素原子がもつ【1】コの価電子のうち【2】コのみを使って隣り合う炭素原子の価電子と【3】結合し、正六角形の構造が繰り返された平面層状構造を作っている。また、この平面層状構造同士が【4】によって緩く結合している。
黒鉛はダイヤモンドと比べて【1(硬or柔らか)】く、また層の部分から薄く剥がれやすい。また、(伝導に必要な価電子が1つ残っているので)【2】があり、(光を遮る価電子が1つ残っているので可視光は一部しか透過せず)色は【3】である。
ケイ素Siも炭素同様14族元素なので、【1】コの価電子をもっている。したがって、ダイヤモンドのように正四面体構造が繰り返された共有結合結晶を形成する。
ケイ素のSi-Si結合は、ダイヤモンドのC-C結合に比べて弱く切れやすいのでやや電気を通す。(=【1】↔︎ダイヤモンドは【2】)
したがって、純度の高いケイ素はパソコン関係の部品や太陽光発電のパネルなどに用いられる。
二酸化ケイ素SiO2の共有結合結晶は、ケイ素Siの共有結合結晶に【1】原子を組み込んだ構造になっている。
二酸化ケイ素SiO2は、ダイヤモンド同様、【1(硬or柔らか)】くて融点が【2(高or低)】く、電気伝導性は【3(あるorない)】。天然に水晶や石英として存在し、その多くは光ファイバーや時計の部品などとして利用される。
関連:計算ドリル、作りました。
化学のグルメオリジナル計算問題集「理論化学ドリルシリーズ」を作成しました!モル計算や濃度計算、反応速度計算など入試頻出の計算問題を一通りマスターできるシリーズとなっています。詳細は【公式】理論化学ドリルシリーズにて!


・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細