【プロ講師解説】このページでは『共有結合(具体例・特徴・イオン結合や配位結合との違いなど)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

共有結合とは

非金属+非金属
Point!

非金属元素と非金属元素の間に形成される結合を共有結合という。

どんな結合も不対電子の共有で始まる。上の例の場合、Cl原子同士が同じ力で引っ張り合うため、電子対がどちらかに偏ることはない。
また、Cl原子は非金属元素で電気陰性度が大きく、互いに電子対を譲らない。したがって、電子対は2つのCl原子間で共有することになる。
その結果、2つのCl原子はともに最外殻がオクテットになり、安定する。
ちなみに、電気陰性度の大きい原子同士がどちらも電子対を譲らないため、共有結合は非常に強い結合である。

共有結合結晶

共有結合結晶とは

非金属元素の原子同士が共有結合して結晶になるまでの過程には2パターンある。

まず、共有結合の例で確認したCl原子同士は共有結合により原子がともにオクテットになるため、これ以上結合する必要がない。
よって、ここで共有結合は終了し、Cl2という小さな集まりとなる。
このように、いくつかの原子が共有結合してできる小さな集まりを分子という。この分子が集まって結晶をつくる。(分子結晶については分子結晶(例・特徴・融点・電気伝導性・柔らかい理由など)を参照)

次に、炭素C原子同士の結合を考える。C原子は価電子を4コもっているため、2コのC原子が共有結合しただけではオクテットになることができない。
したがって、共有結合を繰り返して巨大な分子を形成する。

このように多数の共有結合のみでできている結晶を共有結合結晶という。入試でよく出る共有結合結晶はダイヤモンドC・黒鉛C・ケイ素Si・二酸化ケイ素SiO2・炭化ケイ素SiCの5種類なので覚えておこう。

共有結合結晶の特徴

・電気伝導性がない ※黒鉛は例外
・融点が高い
・非常に硬い
・水に溶けにくい
Point!

共有結合は非常に強い結合なので、共有結合のみでできている結晶は上のような性質をもつ。
黒鉛Cは、炭素原子がもつ4コの価電子のうち3コのみを使って隣り合う炭素原子の価電子と共有結合し、正六角形の構造が繰り返された平面層状構造を作っている。
また、この平面層状構造同士が分子間力(後に記載)によって緩く結合している。
したがって、黒鉛は比較的柔らかく、また層の部分から薄く剥がれやすい。
また、(伝導に必要な価電子が1つ残っているので)電気伝導性があり、(光を遮る価電子が1つ残っているので可視光は一部しか透過せず)色は黒色である。

※共有結合結晶について詳しくは共有結合結晶(例・特徴・性質・組成式・融点・電気伝導性など)を参照

共有結合と配位結合

共有結合の仲間である配位結合については配位結合(例・強さ・共有結合との違い・錯イオンとの関係など)を確認しよう。

分子と共有結合

共有結合によってできる小さい集まりを分子という。分子のうち、塩素Cl2のように2つの原子からなる分子を二原子分子、二酸化炭素CO2のように3つ以上の原子からなる分子を多原子分子という。希ガスは安定した電子配置をもち他の原子と結合しないため1つの原子のままで分子として扱い、これを単原子分子という。又、分子を構成する原子の数と種類を表した式は分子式と呼ばれる。

分子の構造式

塩素Cl2のように共有電子対1組による共有結合を単結合、酸素O2のように共有電子対2組による共有結合を二重結合、窒素N2のように3組による共有結合を三重結合という。

また、共有電子対1組を1本の線で表したものを価標、価標を用いて表した式を構造式という。
ちなみに、1つの原子から出る価標の数はその原子の不対電子の数と一致する。(これが原子価:原子価について詳しくは原子価(一覧・価標・不対電子との関係など)を参照)
酸素O原子なら、不対電子が2コなので、原子価は2となる。

演習問題

問1

共有結合は「非金属元素+非金属元素」「非金属元素+金属元素」「金属元素+金属元素」のどれか。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:非金属元素+非金属元素

共有結合は非金属元素と非金属元素が互いの電子を共有しあうことによって形成される結合である。

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

分子の電子式に含まれる電子対のうち、2つの原子が不対電子を1コずつ出し合うことで形成される電子対を【1】という。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:共有電子対

分子の電子式に含まれる電子対のうち、2つの原子が不対電子を1コずつ出し合うことで形成される電子対を共有電子対という。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

分子の電子式に含まれる電子対のうち、1つの原子がもつ電子のみで形成される電子対を【1】という。
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:非共有電子対

分子の電子式に含まれる電子対のうち、1つの原子がもつ電子のみで形成される電子対を非共有電子対という。

問4

二酸化炭素が次のように結合しないのはなぜか。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:以下参照

原子は希ガスと同じ電子配置になったときに最も安定になるため、出来る限り全ての原子が希ガスの電子配置になるように結合を作る。

上の方はCもOも価電子が8個で希ガスの電子配置になっている。それに対して(問題にある)下の方はCもOも希ガスの電子配置になっていない。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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