【プロ講師解説】このページでは『イオン結合(例・特徴・強さ・共有結合との違いなど)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

はじめに

イオン結合は共有結合金属結合配位結合分子間力などと同様、化学結合の一種である。イオン結合をその他の化学結合としっかり区別できている高校生は少なく、定期テストや大学受験で点を落としがちな分野になっている。このページでは、イオン結合の定義から特徴、強さ、共有結合との違いなどを1から丁寧に解説していく。ぜひこの機会にイオン結合をマスターして、他の高校生・受験生と差をつけよう!

イオン結合とは

金属+非金属
Point!

金属元素と非金属元素の間にできる結合をイオン結合という。

例としてナトリウムNa原子と塩素Cl原子のイオン結合を見てみよう。

どんな結合も不対電子の共有で始まる。金属元素のNa原子は電気陰性度が小さく、非金属元素のCl原子は電気陰性度が大きいため、電子対は完全にCl原子のものとなる。よって、Na原子はナトリウムイオンNa+に、Cl原子は塩化物イオンClに変化し、静電引力(クーロン力)で結びつく。このような、金属元素由来の陽イオンと、非金属元素由来の陰イオンのクーロン力による結合をイオン結合という。

※電気陰性度と周期表の関係は次の通り(金属元素で小さく、非金属元素で大きくなっているのがわかるね!:電気陰性度について詳しくは電気陰性度(表・覚え方・一覧・電子親和力との関係など)を参照)

イオン結合は制限なく結合できる

イオン結合はプラスとマイナスの間に発生するクーロン力によって作られるものなので陽イオンと陰イオンがある限り制限なく結合できる。ここは共有結合と異なる部分なので覚えておこう。(共有結合について詳しくは共有結合(例・イオン結合や配位結合との違いなど)を参照)

イオン結晶

粒子が規則正しく並んでできた固体を結晶といい、特にイオン結合によってできた結晶をイオン結晶という。イオン結晶には以下のような特徴がある。

水に溶けてイオンになる

イオン結晶の物質は水に溶けてイオンになる。このように、物質がイオンに分かれることを電離といい、水に溶けて電離する物質を電解質という。一方、スクロースのように水に溶けても電離しない物質を非電解質という。ちなみに、ほとんどのイオン結晶の物質は電解質である。

※塩化銀AgCl、硫酸バリウムBaSO4、炭酸カルシウムCaCO3など、沈殿を形成し易いものはイオン結晶であっても電離しない。

固体は電気を通さないが液体(融解液・水溶液)は電気を通す

固体の状態ではイオン同士がイオン結合で結びつき、動くことができないため、電気を通さない。しかし、水に溶かして水溶液にしたり、融点まで加熱して融解液にしたりすると、イオンが自由に動くことができるようになるため、電気を通す。

硬いがもろい

陽イオンと陰イオンは強く引き合うため、イオン結合は比較的強い結合である。したがって、イオン結晶は融点が高く、硬いという性質をもっている。しかし、外部から力が加わると陽イオンと陰イオンの配列がずれて同符号のイオンが接近、反発し合うので簡単に割れる。(もろい)

※イオン結晶について詳しくは以下のページを参照

イオン結合と組成式

組成式とは

イオンの数の”比”を表す
Point!

イオン結合によって作られた物質は、陽イオンと陰イオンの数を最も簡単な整数比にした「組成式」で表される。

\[
Na:Cl=1:1\\
→NaCl\\
Cu:Cl=1:2\\
→CuCl_{2}
\]

塩化ナトリウムは、Na1コに対して1コのCl、つまりNaとClが「1:1」の割合で結合しているので「NaCl」、塩化銅(Ⅱ)はCu1コに対して2コのCl、つまりCuとClが「1:2」の割合で結合しているので「CuCl2」、となる。

共有結合で使われる「分子式」としっかり区別しておこう。

分子式であるHClは「H1つとCl1つがくっついている」ことを、組成式であるNaClは「Na+とClが大量にくっついており、その比が1:1」であることを表している。

組成式の作り方

STEP1 陽イオンと陰イオンの価数比を求める
STEP2 たすき掛けをする
Point!

組成式は上のステップに従えば簡単に書くことができる。

Al2(SO4)3を例に説明しよう。

STEP1

陽イオンと陰イオンの価数比を求める

アルミニウムイオンの価数は「+3」、硫酸イオンの価数は「ー2」である。

したがって、価数比は次のようになる。

\[
Al^{3+}:SO_{4}^{2-}=3:2
\]

※プラスマイナスの符号は無視

STEP2

たすき掛けをする

STEP1で求めた価数比を使ってたすき掛けをする。

これにより、2つのAl3+と3つのSO42ーを組み合わせて「Al2(SO4)3」となる。

イオン結合に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

陽イオンであるナトリウムイオンNa+と陰イオンである塩化物イオンClは【1】によって結合する。このような【1】による陽イオンと陰イオンの結合を【2】という。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】クーロン力(静電引力)【2】イオン結合

金属元素と非金属元素の間にできる結合をイオン結合という。

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結合は陽イオンと陰イオンの結合である。したがって、陽イオンになりやすい(陽性が強い)【1】元素と陰イオンになりやすい(陰性が強い)【2】元素の結合ということになる。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】金属【2】非金属

金属元素と非金属元素の間にできる結合をイオン結合という。

例としてナトリウムNa原子と塩素Cl原子のイオン結合を見てみよう。

どんな結合も不対電子の共有で始まる。金属元素のNa原子は電気陰性度が小さく、非金属元素のCl原子は電気陰性度が大きいため、電子対は完全にCl原子のものとなる。よって、Na原子はナトリウムイオンNa+に、Cl原子は塩化物イオンClに変化し、静電引力(クーロン力)で結びつく。このような、金属元素由来の陽イオンと、非金属元素由来の陰イオンのクーロン力による結合をイオン結合という。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結合は【1】による結合のため、共有結合とは異なって大量に結合することができる。したがって、イオン結合でできた結晶(=【2】)は陽イオンと陰イオンの数の比を表す【3】で表される。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】クーロン力(静電引力)【2】イオン結晶【3】組成式

イオン結合によって作られた物質は、陽イオンと陰イオンの数を最も簡単な整数比にした「組成式」で表される。

\[
Na:Cl=1:1\\
→NaCl\\
Cu:Cl=1:2\\
→CuCl_{2}
\]

塩化ナトリウムは、Na1コに対して1コのCl、つまりNaとClが「1:1」の割合で結合しているので「NaCl」、塩化銅(Ⅱ)はCu1コに対して2コのCl、つまりCuとClが「1:2」の割合で結合しているので「CuCl2」、となる。

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結合によって作られた物質は、陽イオンと陰イオンの数を最も簡単な整数比で表した【1】で表される。例えば、塩化ナトリウムはNa+とClが1:1で結合しているため【2】、塩化銅はCa2+とClが1:2で結合しているため【3】と表される。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】組成式【2】NaCl【3】CaCl2

イオン結合によって作られた物質は、陽イオンと陰イオンの数を最も簡単な整数比にした「組成式」で表される。

\[
Na:Cl=1:1\\
→NaCl\\
Cu:Cl=1:2\\
→CuCl_{2}
\]

塩化ナトリウムは、Na1コに対して1コのCl、つまりNaとClが「1:1」の割合で結合しているので「NaCl」、塩化銅(Ⅱ)はCu1コに対して2コのCl、つまりCuとClが「1:2」の割合で結合しているので「CuCl2」、となる。

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結合は陽イオンと陰イオンが【1】によって結びついたものである。陽イオンと陰イオンがイオン結合により規則正しく配列してできた固体を【2】という。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】クーロン力(静電引力)【2】イオン結晶

粒子が規則正しく並んでできた固体を結晶といい、特にイオン結合によってできた結晶をイオン結晶という。

※イオン結晶について詳しくは以下のページを参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結晶は、イオン間の結合力が比較的強いので、融点が【1(高or低)】いものが多い。また、結晶の状態では基本的に電気を通さないが、【2】すると電気を通すようになる。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】高【2】融解(溶解)

※イオン結晶の硬さ、融点等について詳しくは化学結合まとめ!結合の種類と強さ、結晶の融点・電気伝導性などを参照

問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

陽イオンと陰イオンが多数結合してできた結晶を【1】という。【1】は融点が【2(高or低)】く、【3(硬or柔らか)】いが強く叩くと簡単に割れてしまう。

【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】イオン結晶【2】高【3】硬

陽イオンと陰イオンは強く引き合うため、イオン結合は比較的強い結合である。したがって、イオン結晶は融点が高く、硬いという性質をもっている。しかし、外部から力が加わると陽イオンと陰イオンの配列がずれて同符号のイオンが接近、反発し合うので簡単に割れる。(もろい)

※イオン結晶の硬さ、融点等について詳しくは化学結合まとめ!結合の種類と強さ、結晶の融点・電気伝導性などを参照

問8

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結晶は電気伝導性が【1(あるorない)】が、融解(溶解)してできた液体には電気伝導性が【2(あるorない)】。これは、結晶を水に溶かしてできた水溶液中では結晶が陽イオンと陰イオンに分かれるためである。ちなみに、物質が水に溶けてイオンに分かれる現象を【3】といい、このような物質を【4】という。

【問8】解答/解説:タップで表示
解答:【1】ない【2】ある【3】電離【4】電解質

固体の状態ではイオン同士がイオン結合で結びつき、動くことができないため、電気を通さない。しかし、水に溶かして水溶液にしたり、融点まで加熱して融解液にしたりすると、イオンが自由に動くことができるようになるため、電気を通す。

※イオン結晶の硬さ、融点等について詳しくは化学結合まとめ!結合の種類と強さ、結晶の融点・電気伝導性などを参照

問9

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン結晶は結晶全体として、電気的に【1】性である。

【問9】解答/解説:タップで表示
解答:【1】中

※イオン結晶の硬さ、融点等について詳しくは化学結合まとめ!結合の種類と強さ、結晶の融点・電気伝導性などを参照

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細