水に難溶なイオン結晶(水酸化物・硫化物・塩化物・硫酸・クロム酸・炭酸イオン)

はじめに

沈殿生成反応の仕組みと沈殿生成反応式の作り方でやったように、溶解度の小さいイオン結晶が作られたときに沈殿が生成する。このページでは溶解度が小さく水に難溶なイオン結晶を紹介していく。ここに掲載するものは全て重要なイオン結晶なので必ず覚えておくようにしよう。


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水酸化物イオンOHとの反応

水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水を陽イオンの入っている水溶液に加えると、陽イオンの種類によっては次のような沈殿生成反応が起こる。

どのような陽イオンが存在している場合に水酸化物イオンOHとの沈殿生成反応が起こるかはイオン化列を利用することで覚えやすくなる。

イオン 沈殿生成反応
Li+ , K+ , Ca2+ , Na+ アルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素の水酸化物は全て沈殿しにくい
Mg2+ , Al3+ , Zn2+ , Fe2+ , Fe3+ , Ni2+ , Sn2+ , Pb2+ , Cu2+ 水酸化物M(OH)nの沈殿が生成する
Hg2+ , Ag+ 室温で水酸化物が分解し酸化物の沈殿が生成する

Ag+を含む水溶液を塩基性にすると水酸化銀(Ⅰ)AgOHではなく酸化銀Ag2Oが沈殿する。これは、常温で水酸化物の分解反応が起こると考えればOK。

\[
2AgOH\overset{常温}{→} \underbrace{ Ag_{2}O }_{ 褐色 }↓+H_{2}O
\]

また水酸化物マグネシウムMg(OH)2の溶解度はある程度大きく水酸化カルシウムCa(OH)2の溶解度はそれほど大きくないので濃度によってはMg(OH)2が沈殿しなかったり、Ca(OH)2が沈殿する場合があることも頭に入れておこう。

硫化物イオンS2-との反応

硫化ナトリウム水溶液や硫化水素ガスを陽イオンの入っている水溶液に加えると、陽イオンの種類によっては次のような沈殿生成反応が起こる。

どのような陽イオンが存在している場合に硫化物イオンS2-との沈殿生成反応が起こるかについては水酸化物イオンの場合と同様にイオン化列を利用すると覚えやすい。

イオン 沈殿生成反応
Li+ , K+ , Ca2+ , Na+ , Mg2+ , Al3+ アルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素の水酸化物は全て沈殿しにくい
(Mg2+) , Zn2+ , Fe2+ , Co2+ , Ni2+ 中・塩基性下なら硫化物の沈殿が生成
(Cd2+) , Sn2+ , Pb2+ , Cu2+ , Hg2+ , Ag+ 液性に関わらず硫化物の沈殿が生成

アルカリ金属元素・アルカリ土類金属元素の水酸化物は全て沈殿しにくい。またイオン化傾向がZn以下のものは中性・塩基性下の条件で沈殿を形成し、Sn以下のもの+Cdは全液性下で沈殿を形成する。水溶液の液性によって沈殿生成のしやすさが異なるので注意しよう。

※水溶液の液性によって沈殿生成のしやすさが異なる理由

硫化物イオンは、水溶液中で以下のような平衡状態になっている。

\[
H_{2}S⇄HS^{-}+H^{+}\\
HS^{-}⇄S^{2-}+H^{+}
\]

もし溶液が酸性だったとすると、周りにH+の量が非常に多くなってるため「ルシャトリエの原理」によりH+の量が少なくなる方向、つまり左方向に平衡が移動することになる。

その結果、硫化物イオンS2-の量も同時に減るため、より沈殿ができにくい環境となり、イオン化傾向が高めで簡単には沈殿になりにくいZn2+,Fe2+,Ni2+などの金属イオンは沈殿にはならずそのまま溶液中にイオンの状態で存在することになる。逆に、イオン化傾向が低く沈殿になりやすいSn以下の金属はたとえS2-の量が少なくても優先的にこれとくっつくことになるため、沈殿を形成しやすい。

塩化物イオンClとの反応

塩化物イオンはほとんど沈殿を生成しない。水に難溶なイオン結晶(沈殿)としては以下の3コを覚えておけばOK。

イオン イオン結晶(沈殿)
Ag+ AgCl
Pb2+ PbCl2
Hg+ Hg2Cl2

ちなみにPbCl2は熱水には溶ける。

硫酸イオンSO42-との反応

硫酸イオンも塩化物イオン同様ほとんど沈殿を作らない。水に難溶なイオン結晶として以下の4コを覚えておこう。

イオン 硫酸塩(沈殿)
Ca2+ CaSO4
Sr2+ SrSO4
Ba2+ BaSO4
Pb2+ PbSO4

Ca2+、Sr2+、Ba2+は全てアルカリ土類金属元素の陽イオンである。

クロム酸イオンCrO42-との反応

クロム酸イオンもほとんど沈殿を形成しない。水に難溶なイオン結晶として以下の3コを覚えておこう。

イオン イオン結晶(沈殿)
Pb2+ PbCrO4
Ba2+ BaCrO4
Ag+ Ag2CrO4

炭酸イオンCO32-の沈殿

炭酸イオンは様々なイオンと沈殿を形成するが、中でも「陽イオンの定性分析」で頻出のアルカリ土類金属元素との沈殿を覚えておこう。(陽イオンの定性分析については「陽イオンの定性分析〜原理・目的・反応式まとめ〜」を参照)

イオン 炭酸塩(沈殿)
Ca2+ CaCO3
Sr2+ SrCO3
Ba2+ BaCO3

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