【プロ講師解説】このページでは『理想気体と実在気体の違い(定義からグラフがズレる原因、近づけるための条件など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
理想気体・実在気体とは
体積が0で分子間力が働かないと仮定した“仮想的な気体”を理想気体という。
理想気体においては、気体の状態方程式が常に成り立つ。
※P=圧力(Pa) n=物質量(mol) V=体積(L) R=気体定数 T=温度(K)
一方、実際に存在する酸素O2や二酸化炭素CO2などの気体は実在気体と呼ばれ、分子に体積があり、分子間力が働いている。
実在気体において、気体の状態方程式は成り立たない。
理想気体と実在気体の比較を表にまとめると次のようになる。
理想気体 | 実在気体 | |
---|---|---|
分子の体積 | なし | あり |
分子間力 | 働かない | 働く |
PV=nRT | 成立する | 成立しない |
理想気体と実在気体のグラフ
理想気体は常にPV=nRTが成り立つので、PV/nRT=1となり、圧力が変化してもPV/nRTの値はずっと1のままである。
しかし、実在気体ではPV=nRTが成り立たないので、理想気体のグラフからややズレが生じてくる。
理想気体より下へのズレは「分子間力」が原因である。
実在気体は理想気体と異なり分子間力が存在するため、その分縮まり体積Vが小さくなる。(その結果PV/nRTが小さくなる)
理想気体より上へのズレは「分子の体積」が原因である。
実在気体は理想気体と異なり分子の体積が存在するため、圧力が上がるとその体積が無視できなくなり(分子間力によって体積が縮まっているとはいえ)理想気体よりも体積が大きくなる。
実在気体が理想気体に近づくための条件
実在気体を理想気体に近づけるためには「高温・低圧」にすることが大切である。
【高温にする理由】
高温にすると、その分気体の運動エネルギーが大きくなり、相対的に分子間力が無視できるようになるため
【低圧にする理由】
気体分子自体の大きさ(体積)が相対的に小さくなるため。また、容器の体積が大きくなるのに伴い気体分子間の距離が離れ分子間力が無視できるようになるため
理想気体と実在気体に関する演習問題
問1
体積が0で分子間力が働かないと仮定した“仮想的な気体”を【1】という。【1】においては【2】が常に成り立つ。
問2
実際に存在する酸素O2や二酸化炭素CO2などの気体は【1】と呼ばれ、分子に体積が【2(ありorなく)】、【3】が働いている。【1】において、【4】は成り立たない。
問3
理想気体 | 実在気体 | |
---|---|---|
分子の体積 | 【1(ありorなし)】 | 【2(ありorなし)】 |
分子間力 | 【3(働くor働かない)】 | 【4(働くor働かない)】 |
PV=nRT | 【5(成立するor成立しない)】 | 【6(成立するor成立しない)】 |
問4
理想気体は常にPV=nRTが成り立つので、PV/nRT=【1】となり、圧力が変化してもPV/nRTの値はずっと【1】のままである。しかし、実在気体にはPV=nRTが成り立たないので、理想気体のグラフからややズレが生じてくる。
理想気体より下へのズレは【2】が原因である。
実在気体は理想気体と異なり【2】が存在するため、その分縮まり体積Vが小さくなる。
理想気体より上へのズレは分子の【3】が原因である。
実在気体は理想気体と異なり【3】が存在するため、圧力が上がるとそれが無視できなくなる。
問5
実在気体を理想気体に近づけるためには【1(高or低)】温・【2(高or低)】圧条件にする必要がある。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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