【プロ講師解説】このページでは『気体の状態方程式を使った計算』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
気体の状態方程式の導出
※P=圧力(Pa) n=物質量(mol) V=体積(L) R=気体定数 T=温度(K)
ボイル・シャルルの法則より、P、V、Tの値が変化しても、PV/Tは一定である。
\frac{ PV }{ T }
=
\underbrace{ k }
_{ \text{ 一定 }}
\]
標準状態(0℃、1.013×105Pa)における気体1molあたりの体積(モル体積)Vmは22.4L/molである。
したがって、気体の物質量が1molのとき、定数kの値は次のようになる。
k=\frac{ PV_{m} }{ T }\\
=\frac{ 1.013×10^{5}(Pa)×22.4(L/mol) }{ 273(K) }\\
≒8.31×10^{3}(\frac{ Pa・L }{ K・mol })
\]
この値は気体の種類によらず一定であり、気体定数と呼ばれ、記号Rで表される。
気体定数Rを用いてボイル・シャルルの法則を表すと次のようになる。
\frac{ PV_{m} }{ T }=R・・・①
\]
物質量n(mol)の気体の体積Vは、1molあたりの体積Vmのn倍である。したがって、次の関係が成り立つ。
V=nV_{m}\\
\leftrightarrow V_{m}=\frac{ V }{ n }
\]
これを①式に代入すると…
\frac{ PV }{ nT }=R\\
\leftrightarrow PV=nRT・・・②
\]
この②式を(理想)気体の状態方程式という。
気体の状態方程式を用いれば、圧力P(Pa)、体積V(L)、絶対温度T(K)、物質量n(mol)のうち不明な値を、他の値を利用して求めることができる。
気体の状態方程式と分子量・密度の関係
気体の状態方程式は勿論そのまま使っても構わないが、変形して利用することもできる。
気体の分子量をM、n(mol)の気体の質量をw(g)とすると、以下の関係が成り立つ。
n=\frac{ w }{ M }
\]
これを②式に代入すると…
PV=nRT\\
\leftrightarrow PV=\frac{ w }{ M }RT
\]
さらに、気体の密度d(g/L)は
d=\frac{ w }{ V }
\]
と表せるので、これを考慮すると…
M=\frac{ w }{ V }・\frac{ RT }{ P }\\
\leftrightarrow M=d・\frac{ RT }{ P }・・・③
\]
③式を用いれば、気体の密度d(g/L)、圧力P、絶対温度Tから気体の分子量Mを求めることができる。
気体の状態方程式を使った計算問題の解き方
例題を使って、気体の状態方程式を用いた計算問題の解き方を解説していく。
温度一定の場合
問題
まず、温度を変えていないことから以下のように考える。
PV
=
\underbrace{ n }
_{ \text{ 一定 }}
\underbrace{ R }
_{ \text{ 一定 }}
\underbrace{ T }
_{ \text{ 一定 }}
\]
Rは元々定数(8.31×103)だし、nも特に記載がない限り一定と考えて構わない。
一定の部分は反応前でも反応後でも常に同じなので、変化前の圧力と体積をP1、V1、変化後をP2、V2とすると、次のような式をたてることが出来る。
\underbrace{ P_{1}V_{1} }
_{ \text{ 反応前 }}
=
\underbrace{ P_{2}V_{2} }
_{ \text{ 反応後 }}
\]
ここで、今回分かっている値を入れると…
P_{1}V_{1}=P_{2}V_{2}\\
\leftrightarrow 2.0×10^{5}(Pa)×2.0(L)=4.0×10^{5}(Pa)×V_{2}(L)\\
\leftrightarrow V_{2}=1.0(L)
\]
ちなみにP1×V1=P2×V2の式は、ボイルの式と呼ばれている。
気体の状態方程式の中で定数の部分をひとまとめにし、反応前と後を結び、方程式をつくる。これが気体計算の基本なので良く覚えておこう。
圧力一定の場合
問題
最初の例題と同じように、一定の部分に印をつけると…
\underbrace{ P }
_{ \text{ 一定 }}
V
=
\underbrace{ n }
_{ \text{ 一定 }}
\underbrace{ R }
_{ \text{ 一定 }}
T
\]
このようになる。
次に、一定の部分を固める。(最初の例題では最初からまとまっていたためこの作業は必要なかった)
\frac{ V }{ T }
=
\underbrace{ \frac{ nR }{ P } }
_{ \text{ 一定 }}
\]
ここからは先ほどと同様に反応前と後で方程式をつくる。
\underbrace{ \frac{ V_{1} }{ T_{1} } }
_{ \text{ 反応前 }}
=
\underbrace{ \frac{ V_{2} }{ T_{2} } }
_{ \text{ 反応後 }}
\]
これに与えられている値を代入して計算すると、
\frac{ V_{1} }{ T_{1} }=\frac{ V_{2} }{ T_{2} }\\
\leftrightarrow \frac{ 2.0(L) }{ (0+273)(K) }=\frac{ V_{2}(L) }{ (200+273)(K) }\\
\leftrightarrow V_{2}≒3.5(L)
\]
気体の状態方程式中の温度Tがケルビン(K)であることに注意しよう。
ちなみにV1/T1=V2/T2の式は、シャルルの式と呼ばれている。
気体の状態方程式に関する演習問題
問1
物質量がn(mol)の気体についてボイル・シャルルの法則を表したものを【1】といい、【2】の式で表される。
問2
問3
問4
問5
問6
問7
問8
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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