【プロ講師解説】このページでは『発熱反応や吸熱反応、熱化学方程式とそれが絡んだ計算問題の解き方など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
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ヘスの法則
ヘスの法則
反応熱は一般に測定によって求められるが、反応によっては測定が困難な場合がある。そのような場合、これから紹介するヘスの法則を利用して反応熱を計算で求める。
化学変化に伴う反応熱は、反応前後の状態で決まり、反応経路によって変化しない
これがヘスの法則である。
反応熱は、最初と最後の状態だけで決まるということだね。
例えば、A=B+QkJという熱化学方程式の反応熱Qは、Cという途中の経路を考慮すると、次のようにAからC、CからBに変化するときに出入りする熱量Q1、Q2を用いて次のように表すことができる
エネルギー図・ヘスの法則を使った計算問題の解き方
STEP1 | 求める反応熱をQkJとし、それを含む熱化学方程式を書く |
STEP2 | STEP1で作った式を元に、エネルギー図を書く。また、問題で他に熱化学方程式が与えられている場合はその情報も書き込む |
STEP3 | 図に書き込んだ分子(化合物)を「バラバラ」の状態にし、エネルギー図の上の位置に書く |
STEP4 | それぞれの結合を切るために必要なエネルギーを書き込む |
STEP5 | ヘスの法則を利用して方程式を作成し、それを解く |
例題を用いて説明しよう。
問題
STEP1
\frac{ 1 }{ 2 }H_{2}(気)+\frac{ 1 }{ 2 }Cl_{2}(気)=HCl(気)+QkJ
\]
「HClの生成熱」なので、求めたい係数を1として、他の分子の係数はそれに合わせる。
また、求めたい熱量はQkJとしておこう。
STEP2
H2とCl2という2つの物質がまとまってHClという1つの物質になるわけなので、より「バラバラ」であるH2とCl2の方がエネルギーが高い。従って、より高い位置に書く。
STEP3
H2とCl2が、それぞれH原子とCl原子になった場合を考える。
STEP4
問題文に書いてあったHーH、ClーCl、HーCl結合の結合エネルギーを図中に書き込もう。
係数がついていた場合は、それをかけるのを忘れずにね。
STEP5
ヘスの法則
反応経路が違っても、出入りする熱の量は変わらない
ヘスの法則により、反応経路が違っても出入りする総熱量は変化しない。
従って、次の式が成り立つ。
Q=92.5となり、これが求める反応熱である。
問題演習
問題
STEP1
まずは、求めたい熱量を含む熱化学方程式を書く。
\frac{ 1 }{ 2 }H_{2}(気)+\frac{ 1 }{ 2 }I_{2}(気)=HI(気)+QkJ
\]
今回は、ヨウ素の生成反応を表す式を書けばいいね。
STEP2
STEP1で作成した式をもとにエネルギー図を書く。又、問題で他に熱化学方程式が与えられている時はそれも書き込む。
より「バラバラ」であるH2とI2の方がエネルギーが高いので、上の位置に書く。
STEP3
図に書き込んだ分子(化合物)を「バラバラ」の状態にし、エネルギー図の上の位置に書く。
H2とCl2が、それぞれH原子とCl原子になった場合を考える。
STEP4
それぞれの結合を切るために必要なエネルギーを書きこむ。
問題文に書いてあったHーH、IーI、HーI結合の結合エネルギーを図中に書き込もう。
STEP5
ヘスの法則を利用して方程式を作成し、それを解く。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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