【プロ講師解説】このページでは『接触法(濃硫酸の工業的製法・仕組み・反応式・触媒など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
接触法の仕組み
STEP1 | 硫黄又は黄鉄鉱を燃焼させる → 二酸化硫黄SO2が生成 |
STEP2 | STEP1で得たSO2をO2により酸化させる → 三酸化硫黄SO3が生成 |
STEP3 | STEP2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、そこに希硫酸を加える → 濃硫酸H2SO4が生成 |
接触法の流れは上の通り。
これから、各STEPについて順番に解説していく。
STEP1
まずは、硫黄S又は黄鉄鉱FeS2を燃焼させることで二酸化硫黄SO2を得る。
S + O_{2} → SO_{2}
\]
4FeS_{2} + 11O_{2} → 2Fe_{2}O_{3} + 8SO_{2}
\]
STEP2
次に、STEP1で得たSO2を空気中のO2によって酸化させることで三酸化硫黄SO3を得る。
2SO_{2}+O_{2} \overset{酸化バナジウム(Ⅴ)V_{2}O_{5}}{→} 2SO_{3}
\]
※この反応は活性化エネルギーが非常に高く、反応の進行が遅い。そこで、「酸化バナジウム(Ⅴ)V2O5」を触媒として用いることで、活性化エネルギーを下げ、反応を起こり易くしている。
※この反応は“可逆反応”で正反応が”発熱反応”なので、逆反応が進まないかつ正反応の反応速度が小さくならないような温度(200〜600℃)で操作を行う必要がある。
STEP3
最後に、STEP2で得たSO3を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、そこに希硫酸を加えることで濃硫酸を得る。(発煙硫酸中のSO3と希硫酸中のH2Oが反応する)
SO_{3} + H_{2}O → H_{2}SO_{4}
\]
接触法の反応式
上のSTEP1〜STEP3で出てきた反応式をもう一度確認した後、それらをまとめて1つの反応式にしていこう。
【STEP1】4FeS_{2} + 11O_{2} → 2Fe_{2}O_{3} + 8SO_{2}\\
【STEP2】2SO_{2} + O_{2} → 2SO_{3}\\
【STEP3】SO_{3} + H_{2}O → H_{2}SO_{4}
\]
中間生成物(一連の反応の中で生成し消えるもの)が消えるように係数を調整して…
4FeS_{2} + 15O_{2} + 8H_{2}O → 2Fe_{2}O_{3} + 8H_{2}SO_{4}
\]
これが接触法の全体式である。
接触法に関する演習問題
濃硫酸H2SO4の工業的製法を【1】という。
接触法では、まず硫黄Sを含む化合物を燃焼させ【1】を得る。次に、【1】を空気中の酸素O2により酸化させ【2】を得る。この反応は【3】が非常に高く、反応の進行が遅いため触媒として【4】を用いる。最後に、【2】を水H2Oと反応させ【5】を得る。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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