【プロ講師解説】このページでは『油脂の構成要素の1つである高級脂肪酸(種類一覧や構造式、分子量、炭素数、融点、水溶性など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

高級脂肪酸とは

炭素数の多い1価のカルボン酸を高級脂肪酸という。
油脂を構成する脂肪酸は全て高級脂肪酸の仲間であり、以下の特徴をもっている。

  • 全炭素数が偶数
  • 炭化水素基の部分が直鎖
  • 炭化水素基の部分に存在する不飽和結合はシス(cis)型

具体例を挙げて構造を見ていこう。

パルミチン酸

【分子式】C15H31COOH
【全炭素数】16
【官能基】-COOH1コ
【炭化水素基】長い、飽和

オレイン酸

【分子式】C17H33COOH
【全炭素数】18
【官能基】-COOH1コ
【炭化水素基】長い、不飽和、C=C1コ(cis型)

高級脂肪酸一覧

全炭素数 名称 示性式 分子量 C=Cの数 融点(℃)
12 ラウリン酸 C11H23COOH 200 0 44
14 ミリスチン酸 C13H27COOH 228 0 54
16 パルミチン酸 C15H31COOH 256 0 63
18 ステアリン酸 C17H35COOH 284 0 70
18 オレイン酸 C17H33COOH 282 1 13
18 リノール酸 C17H31COOH 280 2 -5
18 リノレン酸 C17H29COOH 278 3 -11
20 アラキドン酸 C19H31COOH 304 4 -50
20 エイコサペンタエン酸 C19H29COOH 302 5 -54
22 ドコサヘキサエン酸 C21H31COOH 328 6 -44

高級脂肪酸の融点

飽和脂肪酸の場合

飽和脂肪酸は炭素数が増加するにつれて融点が上昇する。
これは、炭素数が増えると分子量が大きくなるため、分子間に働く引力が強くなるためである。

不飽和脂肪酸の場合

不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて融点が低い。
不飽和脂肪酸はC=C結合部分がcis型の配置を取るため、炭素鎖が折れ線形構造をしている。
したがって、直線形の飽和脂肪酸と比べて分子同士が接近しにくくなるため、分子間に働く引力が弱くなり、融点が低くなる。

演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭素数の多い1価のカルボン酸を【1】という。
【1】の特徴として、全炭素数が【2(偶or奇)】数、炭化水素基の部分に存在する不飽和結合は【3(シスorトランス)】型などがある。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】高級脂肪酸【2】偶【3】シス

炭素数の多い1価のカルボン酸を高級脂肪酸という。
油脂を構成する脂肪酸は全て高級脂肪酸の仲間であり、以下の特徴をもっている。

  • 全炭素数が偶数
  • 炭化水素基の部分が直鎖
  • 炭化水素基の部分に存在する不飽和結合はシス(cis)型

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

飽和脂肪酸は炭素数が増加するにつれて融点が【1(上昇or下降)】する。
これは、炭素数が増えると分子量が【2(大きor小さ)】くなるため、分子間に働く引力が【3(強or弱)】くなるためである。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】上昇【2】大き【3】強

飽和脂肪酸は炭素数が増加するにつれて融点が上昇する。
これは、炭素数が増えると分子量が大きくなるため、分子間に働く引力が強くなるためである。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

不飽和脂肪酸はC=C結合部分が【1(シスorトランス)】型の配置を取るため、炭素鎖が【2(直線or折れ線)】形構造をしている。
したがって、分子同士が接近しにくくなるため、分子間に働く引力が【3(強or弱)】くなり、融点が【4(高or低)】くなる。
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】シス【2】折れ線【3】弱【4】低

不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて融点が低い。
不飽和脂肪酸はC=C結合部分がcis型の配置を取るため、炭素鎖が折れ線形構造をしている。
したがって、直線形の飽和脂肪酸と比べて分子同士が接近しにくくなるため、分子間に働く引力が弱くなり、融点が低くなる。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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