【プロ講師解説】このページでは『沸点上昇(理由・グラフ・計算問題の解き方など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

沸点上昇とは

純溶媒に溶質を溶かすと、気体に変わる溶媒分子数が減少する。

つまり、沸点が上がることになり、これを沸点上昇という。

沸点上昇のグラフ

水の状態図は次の通り。

水にブドウ糖などの溶質を溶解させると次のようになる。

グラフより、沸点は純水よりもブドウ糖水溶液の方が高いことが確認できる。

PLUS+

沸点が上がる理由

沸点とは蒸気圧が外圧(大気圧)を上回る温度である。溶質があることで蒸気圧が下がるので(蒸気圧降下)、蒸気圧が外圧以上になるためにはより多くの加熱が必要になる。その結果、沸点が上昇する。

沸点上昇の公式

沸点上昇の公式

ΔTb = Kb・m

ΔTb:沸点上昇度
Kb:モル沸点上昇(K・kg/mol)(定数:溶媒に固有)
m:質量モル濃度(mol/kg)

Point!

この公式は、沸点上昇関連の計算問題を解く上で必要なので必ず覚えておこう。

ΔTbは沸点上昇度といい、モル沸点上昇Kb(溶媒によって決まる値)と質量モル濃度をかけたものである。

沸点上昇の計算問題

ここでは、入試で頻出の「スクロース(ショ糖)の沸点上昇度を求める問題」と「スクロース(ショ糖)の沸点を求める問題」の解き方を紹介する。

スクロース(ショ糖)の沸点上昇度を求める問題

問題

質量モル濃度が0.10(mol/kg)であるスクロース水溶液の沸点上昇度はいくつか。ただし、水のモル沸点上昇は0.52(K・kg/mol)とする。

先ほど紹介した沸点上昇の公式を用いると…

\[
\begin{align} ΔT_{b}&=K_{b}・m \\
&= 0.52×0.10\\
&= 0.052 \end{align}
\]

スクロース(ショ糖)の沸点を求める問題

問題

スクロースC12H22O1168.4gを400gの水に溶かしてできたスクロース水溶液の沸点は何℃か。ただし、水のモル沸点上昇は0.52(K・kg/mol)で、原子量はH=1,C=12、O=16とする。

これも、上で示した沸点上昇の公式を用いて式をたてる。

\[
\begin{align} ΔT_{b}&=K_{b}・m \\
&= 0.52×\frac{ \frac{ 68.4 }{ 342 } }{ \frac{ 400 }{ 1000 } }\\
&= 0.26 \end{align}
\]

よって、沸点は100.26(℃)となる。

演習問題

必要であれば以下の値を用いること。
水のモル沸点上昇Kb=0.52(K・kg/mol)
原子量:H=1.00、C=12.0、N=14.0、0=16.0、Na=23.0、Cl=35.5、Ca=40.0、Ba=137

沸点上昇に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

溶媒に溶質を加えると、一般に沸騰する温度(=沸点)は上昇する。これを【1】という。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】沸点上昇

純溶媒に溶質を溶かすと、気体に変わる溶媒分子数が減少する。

つまり、沸点が上がることになり、これを沸点上昇という。

問2

スクロースC12H22O1168.4gを200gの水に溶かしてできた水溶液の沸点は何℃か。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:100.52℃
\[
\begin{align} ΔT_{b}&=K_{b}・m \\
&= 0.52×\frac{ \frac{ 68.4 }{ 342 } }{ \frac{ 200 }{ 1000 } }\\
&= 0.52 \end{align}
\]

よって沸点は100.52℃

問3

グルコースC6H12O690gを200gの水に溶かしてできた水溶液の沸点は何℃か。
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:101.3℃
\[
\begin{align} ΔT_{b}&=K_{b}・m \\
&= 0.52×\frac{ \frac{ 90 }{ 180 } }{ \frac{ 200 }{ 1000 } }\\
&= 1.3 \end{align}
\]

よって沸点は101.3℃

問4

尿素CO(NH2)212gを400gの水に溶かしてできた水溶液の沸点は何℃か。
【問4】解答/解説:タップで表示
解答:100.26℃
\[
\begin{align} ΔT_{b}&=K_{b}・m \\
&= 0.52×\frac{ \frac{ 12 }{ 60 } }{ \frac{ 400 }{ 1000 } }\\
&= 0.26 \end{align}
\]

よって沸点は100.26℃

問5

ある非電解質3.0gを測りとり100gの水に溶かした。水溶液が100.26℃で沸騰したとすると、この非電解質の分子量はいくつと考えられるか。
【問5】解答/解説:タップで表示
解答:60

沸点が100.26℃ということは沸点上昇度は0.26なので、分子量をx(g/mol)とおくと次のような式をたてることができる。

\[
\begin{align} &ΔT_{b}=K_{b}・m \\
↔︎&0.26= 0.52×\frac{ \frac{ 3.0 }{ x } }{ \frac{ 100 }{ 1000 } }\\
↔︎&x= 60 \end{align}
\]

問6

ある非電解質6.0gを測りとり100gの水に溶かした。水溶液が101.04℃で沸騰したとすると、この非電解質の分子量はいくつと考えられるか。
【問6】解答/解説:タップで表示
解答:30

沸点が101.04℃ということは沸点上昇度は1.04なので、分子量をx(g/mol)とおくと次のような式をたてることができる。

\[
\begin{align} &ΔT_{b}=K_{b}・m \\
↔︎&1.04= 0.52×\frac{ \frac{ 6.0 }{ x } }{ \frac{ 100 }{ 1000 } }\\
↔︎&x= 30 \end{align}
\]

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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