【プロ講師解説】このページでは『中和滴定の一種である逆滴定(例題・計算問題の解き方・原理など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
逆滴定とは
気体(例:アンモニア)など、通常の中和滴定を行いにくい物質を滴定するための特殊な滴定法を逆滴定という。
逆滴定の流れ
逆滴定の流れについて「アンモニアの逆滴定」を例に説明していこう。
まず始めに、酸である「硫酸H2SO4」を大量に用意する。
ここにアンモニアNH3を完全に吸収させる。
すると、NH3は水中に存在するH+の一部と反応してNH4+になる。
ここに指示薬(メチルオレンジorメチルレッド)を入れ、先ほどNH3と反応しなかったH+を水酸化ナトリウムNaOHで滴定する。
徐々に中和されていき…
完全に中和したときこのような状態になる。
H+はすべてOH–と合わさり水になっている。(Na+は省略)
これが、逆滴定の流れである。要するに、酸である硫酸を2つの塩基(水酸化ナトリウム、アンモニア)で滴定しているということである。
それでは、この実験からアンモニアの濃度を求める計算問題の解き方を解説していこう。
逆滴定計算の流れ
問題
STEP1 | 直線を書き、数値を並べる |
STEP2 | 中和計算をする |
これが逆滴定王道の2STEP。この通りやれば、逆滴定の問題はほぼ必ず解くことができる。
STEP1
まずは、直線を書き数値を並べる。
酸と塩基で上下に分けて、それぞれの物質とそのmol/L、Lを書き並べる。
STEP2
次に、STEP1で作った直線を使って中和計算をしていく。
【公式あり】中和計算を一瞬で解く方法を理由を交えて徹底解説!でやったように、中和点で酸と塩基のmol数が等しくなることを利用して計算式を立てよう。
\underbrace{ 0.50(mol/L) × \frac{ 200 }{ 1000 }(L) × 2 }
_{ H_{2}SO_{4}\text{ の放出する }H^{+}\text{ のmol }}
=
\underbrace{ 1.0(mol/L) × \frac{ 20 }{ 1000 }(L) × 1 }
_{ NaOH\text{ の受け取る }H^{+}\text{ のmol }}
+
\underbrace{ x(mol/L) × \frac{ 100 }{ 1000 }(L) × 1 }
_{ NH_{3}\text{ の受け取る }H^{+}\text{ のmol }} \\
↔︎ x=1.8(mol/L)
\]
価数をかけるのを忘れないように。
計算演習
問1
【実験】1.0(mol/L)の硫酸200(ml)にアンモニアをすべて溶かした。その後、この溶液に0.50(mol/L)の水酸化ナトリウムを滴下した。すると、200(ml)加えたところで完全に中和した。
このときのアンモニアの濃度は何(mol/L)か。
問2
【実験】2.0(mol/L)の硫酸100(ml)にアンモニアをすべて溶かした。その後、この溶液に0.5(mol/L)の水酸化ナトリウムを滴下した。すると、40(ml)加えたところで完全に中和した。
このときのアンモニアの濃度は何(mol/L)か。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細