【プロ講師解説】このページでは『熱化学方程式の用語(吸熱/発熱)・計算問題の解き方など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
発熱反応・吸熱反応
化学反応や状態変化によって物質の結合状態が変化すると物質の持つエネルギー(化学エネルギー)が変化する。
反応前後の化学エネルギー差が、熱の出入りとして現れるとき、熱が発生する場合を発熱反応、吸収する場合を吸熱反応という。
熱化学方程式
化学反応式に熱量を書き込んだものを熱化学方程式という。
熱化学方程式では係数は物質量、化学式はその物質1molがもつ化学エネルギーを表している。
熱化学方程式では両辺を「=」で結ぶ。(化学反応式のように「→」ではない)
これは両辺のエネルギーの総和が等しいことを意味している。
そこで、化学エネルギーの変化を次のようなエネルギー図として書くこともできる。
※エネルギー図について詳しくはエネルギー図・ヘスの法則(書き方・計算問題の解き方など)を参照
熱化学方程式を使った計算問題
STEP1 | 求める反応熱をQkJとし、それを含む熱化学方程式を書く |
STEP2 | STEP1で作った熱化学方程式の中にある物質を与式から探す |
STEP3 | それらが同じ側にあれば与式の反応熱をそのまま、逆側にあればマイナスの符号をつけて、全てを足し合わせる |
熱化学方程式を使った問題は上の3STEPで解くことができる。次の問題を使って練習してみよう。
問題
H2(気)+1/2O2(気)=H2O(液)+286kJ
C(固)+O2(気)=CO2(気)+394kJ
2C(固)+2H2(気)=C2H4(気)-52KJ
STEP1
今回は「エチレンの燃焼熱」を求める問題なので、エチレンの燃焼反応を表す熱化学方程式を書く。
C_{2}H_{4}(気)+3O_{2}(気)=2CO_{2}(気)+2H_{2}O(液)+QkJ
\]
反応熱(燃焼熱)はまだ分からないので「QkJ」とする。
STEP2
次に、今作った熱化学方程式中に含まれる物質を問題文中に書いてあった3つの式から探していく。
O2は無視してOK。
この解法を使うときは、2つ以上の式に出てきている物質は無視する。今回の場合、O2は無視。
STEP3
CO2は両方の式で右側にあるので、与式の反応熱である+394kJをそのまま(ただし作った式でのCO2の係数は2なので2をかける)用いる。
C2H4は与式では右側にあるのに対し作った式では左側にあるので、マイナス(-)の符号をつけて-(-52)kJとなる。
H2Oは、両方の式で右側にあるので、CO2同様+286kJをそのまま用いる。(係数の2は付く)
出た値を全て足し合わせれば、求めたい反応熱Qを求めることができる。
熱化学方程式に関する演習問題
問1
化学反応式の右辺に【1】を書き、右辺と左辺を【2(記号)】で結んだ式を【3】という。
問2
熱化学方程式で表される化学反応が発熱反応である場合、反応熱は【1(+or-)】で表される。吸熱反応である場合、反応熱は【2(+or-)】で表される。
問3
熱化学方程式の左辺(反応物)のエネルギーの総量が右辺(生成物)のエネルギーの総量よりも大きい場合は【1】反応、小さい場合は【2】反応である。
問4
C(黒鉛)+2H2(気)=CH4(気)+QkJ
以下の反応熱を用いてメタンの生成熱Qを求めよ。
黒鉛の燃焼熱:394kJ/mol
メタンの燃焼熱:890kJ/mol
水素の燃焼熱:286kJ/mol
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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