はじめに

最初の方の単元にも関わらず、受験生の中で同素体と同位体それぞれについて自分でしっかり説明できる人は意外と少ない。このページでは同素体・同位体の定義から入試頻出の事項まで1つ1つ丁寧に解説していく。ぜひこの機会に2つの違いを把握してライバルと差をつけよう!


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同素体・同位体とは

まずは同素体と同位体の定義を確認しよう。

同素体 同じ元素からなる単体で、化学的性質(反応性など)が異なるもの
同位体 原子番号が同じで、質量数の異なる原子同士のこと。
化学的性質(反応性など)にあまり変化が見られない

この表だけを見て2つの違いを理解できる人なかなかいないはず。これ以降で同素体・同位体それぞれについて詳しく解説していくのでそれを見てわかってもらえれば問題ない。

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同素体

同じ元素からなる単体で化学的性質(反応性など)が異なる物質同士を互いに同素体という。

例を挙げると「酸素(O2)とオゾン(O3)」。この2つは同じ「O」という元素からできているが、色や臭いなどの化学的性質は異なる。

同素体の単元では「S・C・O・P」の4つの元素しか登場しない。まず一覧表にまとめた後、個別に解説していく。

元素記号 元素名 単体名 化学式 特性
S 硫黄 斜方硫黄 S8 黄色 非常に安定
単斜硫黄 S8 黄色 放っとくと斜方硫黄になる
ゴム状硫黄 S(組成式) 高純度で黄色、低純度で褐色 放っとくと斜方硫黄になる
C 炭素 ダイヤモンド C(組成式) 無色透明 非常に固い
電気伝導性なし
黒鉛(グラファイト) C(組成式) 黒色 もろい(砕けやすい)
電気伝導性あり
フラーレン C60,C70 (溶液中) ナノテクノロジーに関与
O 酸素 酸素 O2 無色 無臭
助燃性有り
オゾン O3 淡青色 特異臭
紫外線吸収効果
P リン 黄リン P4 黄色 有毒、不安定
赤リン P(組成式) 赤色 無毒、安定

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硫黄

硫黄の同素体は斜方硫黄単斜硫黄ゴム状硫黄の3種類である。

常温では斜方硫黄が最も安定しており、単斜硫黄もゴム状硫黄も常温で放置しておくと斜方硫黄に変化するが、高温(95度以上)では単斜硫黄が安定である。

斜方硫黄・単斜硫黄・ゴム状硫黄はそれぞれ次のような特徴をもつ。

斜方硫黄 単斜硫黄 ゴム状硫黄
化学式 S8 S8 S
構造 環状 環状 高分子
特徴
  • 黄色
  • 八面体状結晶
  • 安定
  • 黄色
  • 針状結晶
  • 不安定
  • 放置すると斜方硫黄になる
  • 弾性あり
  • これ以上詳しいことは無機化学「硫黄Sの単体と化合物の性質・製法」無機化学「単斜硫黄・斜方硫黄・ゴム状硫黄・液状硫黄の化学式と構造式まとめ」で扱う。

    炭素

    炭素の同素体はダイヤモンド黒鉛(グラファイト)フラーレンの3つである。

    ダイヤモンドと黒鉛は多くの人がすでに知っているはず。ダイヤモンドは宝石として指輪などに使われていて、黒鉛は鉛筆の芯の原料になる。フラーレンはナノテクノロジーで用いられる。それぞれの特徴は以下の通り。

    黒鉛 ダイヤモンド フラーレン
    化学式 C(化学式) C(組成式) C60,C70(,C80
    黒色 無色透明
    構造 C原子により形成された6角形の層が分子間力で結合 C原子が四面体の頂点方向に共有結合 C原子がサッカーボール型に結合
    性質 やわらかい
    もろい
    電気をよく通す
    金属光沢あり
    極めて硬い
    電気を通さない
    ナノテクノロジーに利用

    さらに詳しいことは無機化学「炭素Cの単体・化合物の性質・製法」で扱う。

    酸素

    酸素(O2 オゾン(O3
    化学式 O2 O3
    直線型 折れ線型
    無色 淡青色
    におい 無臭 特異臭
    特性 助燃性有り 紫外線吸収効果

    酸素の同素体は酸素オゾンの2つである。酸素を知らないはずはないし、オゾンもどこかで聞いたことがあるだろう。

    理論化学を学んでいる段階で覚えておくべきなのは、酸素が無色無臭なのに対して、オゾンは淡青色で特異臭がするということくらいである。(酸素やオゾンに関する細かい知識は無機化学「酸素Oの単体・化合物の性質・製法」の方で紹介しているのでそちらを参照)

    リン

    リンの同素体は黄リン赤リンの2つである。

    黄リン 赤リン
    化学式 P4
    (分子式)
    P
    (組成式)
    構造 正四面体 無定形
    毒性 あり なし
    その他特徴 自然発火する
    (水中に保存)
    真空中で加熱すると赤リンに
    マッチの箱の横に付いているヤツ

    黄リンはとても危険な物質。空気中で放置しておくと、突然火が点いてしまうことがある。(こういうのを自然発火という)
    従って、研究室とかで保存するときはビンに水をいれてその中に突っ込んでおく。(水中に置いておけば、空気に直接触れないから自然発火は起こらない)
    また、黄リンは毒性ももっている。

    赤リンは、マッチの箱の横に付いていて、マッチに火を点けるときに使う物質である。(擦る部分)
    日常で使われているものなので当然無毒で自然発火もしない

    リンについてさらに詳しいことはリンPの単体・化合物の性質・製法を参照。


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    同位体

    同位体とは

    同位体とは原子番号が同じで、質量数の異なる原子同士のことである。

    水素を例に説明する。

    水素には、天然に3つの同位体が存在する。

    これら3つは、同じ”水素”の仲間ではあるけれど、質量数が異なっている。原子番号(=陽子の数)が一緒なのに質量数が違うということはつまり、中性子の数が異なっている」ということである。(この辺りについては原子の構造!陽子・中性子・電子・原子核・質量数・原子番号の数と関係を参照)

    また、同位体によって存在比が存在比が違っていることにも注意。普通の水素が一番多く99.9%、次が重水素で0.1%。三重水素はほとんど存在しない。

    さらに、同位体は「化学的性質(反応性など)にあまり変化が見られない。」ということも知っておくべきである。同素体は「変化が見られる」ので、対比させて聞かれる。同位体の存在比など詳しいことを覚える必要はないが、同位体を使った計算は定期テストや入試で頻出なのでぜひ出来るようにしておこう。(【決定版】相対質量・原子量・分子量・式量の定義、求め方、計算問題化合物に含まれる同位体の物質量比を求める問題の解き方などに記載)


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    同位体の存在比

    上で説明したように、同位体は全てが等量存在している訳ではなく、存在比が異なる場合がある。

    代表的な同位体の存在比に関しては「同位体の存在比一覧表」を参照。

    放射性同位体

    同位体の中には原子核が“不安定”で放射線を出しながら崩壊(壊変)していくものがあり、このような同位体を放射性同位体という。

    放射性同位体は遺物の年代測定・医療などに利用される。

    プラスの知識

    【α(アルファ)壊変】
    α線(=ヘリウムの原子核)を放出する。
    ヘリウムの原子核は「陽子2個+中性子2個」で構成されているので、α壊変が一回起こると原子番号は2減少、質量数は4減少する。

    【β(ベータ)壊変】
    β線(=電子)を放出する。
    放出される電子は中性子が陽子に変化することで放出されるので、β壊変が一回起こると質量数は変わらないが原子番号は1増加する。

    【γ(ガンマ)壊変】
    γ線(=α、β壊変の後に出る余分なエネルギー)を放出する。質量数や原子番号に変化はない。


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    演習問題

    問1

    同じ元素からなる単体で、化学的性質(反応性など)が異なるものをなんと呼ぶか。

    【問1】解答/解説:タップで表示
    解答:同素体

    同じ元素からなる単体で、化学的性質(反応性など)が異なるものは同素体と呼ばれる。

    問2

    原子番号が同じで、質量数の異なる化学的性質(反応性など)にあまり変化が見られない原子同士のことをなんと呼ぶか。

    【問2】解答/解説:タップで表示
    解答:同位体

    原子番号が同じで、質量数の異なる化学的性質(反応性など)にあまり変化が見られない原子同士のことは同位体と呼ばれる。

    問3

    同素体を持つ代表的な原子を4つ挙げなさい。

    【問3】解答/解説:タップで表示
    解答:硫黄S・炭素C・酸素O・リンP

    同素体を持つ原子で大学入試で頻出なのは硫黄S・炭素C・酸素O・リンPの4つである。

    問4

    硫黄の同素体を3つ挙げなさい。

    【問4】解答/解説:タップで表示
    解答:斜方硫黄・単斜硫黄・ゴム状硫黄

    硫黄の同素体は斜方硫黄・単斜硫黄・ゴム状硫黄の3つである。

    問5

    硫黄の同素体の中で中で最も安定しているものは何か。

    【問5】解答/解説:タップで表示
    解答:斜方硫黄

    硫黄の同素体の中で最も安定しているのは斜方硫黄である。それ故に単斜硫黄やゴム状硫黄は放っておくと斜方硫黄になる。

    問6

    炭素の同素体のうち、サッカーボール状でナノテクノロジーに用いられるものは何か。

    【問6】解答/解説:タップで表示
    解答:フラーレン

    炭素の同素体として有名なのはダイヤモンド・黒鉛・フラーレンの3つである。これらのうちサッカーボール状でナノテクノロジーに用いられるものはフラーレンである。また、ダイヤモンドは宝石や研磨剤として、黒鉛は鉛筆の芯などとして用いられる。

    問7

    酸素の同素体を2つ挙げなさい。

    【問7】解答/解説:タップで表示
    解答:酸素・オゾン

    酸素の同位体は酸素とオゾンの2つである。

    問8

    リンの同素体のうち毒性をもち、自然発火を起こす可能性もあるものは何か。

    【問8】解答/解説:タップで表示
    解答:黄リン

    リンの同素体として有名なのは赤リンと黄リンの2つである。これらのうち、毒性をもち自然発火を起こす可能性があるのは黄リンである。黄リンは自然発火を防ぐために通常は水を入れたビンの中に保存される。ちなみに、赤リンはマッチの箱の側面に付いており着火をする際などに用いられ、無毒である。

    問9

    水素の同位体のうち、最も存在量が少ないのはどれか。

    【問9】解答/解説:タップで表示
    解答:三重水素

    水素の同位体は、水素・重水素・三重水素の3種類存在する。これらの同位体は陽子の数は同じであるが中性子の数が異なっている(水素0コ・重水素1コ・三重水素2コ)。3つの自然界での存在確率は順に「99.9:0.09:極微量」となっており、最も存在確率が低いのは三重水素である。


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    関連:同位体の存在比を、一覧表で。

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