【プロ講師解説】このページでは『炭素Cの単体・化合物の性質・製法』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

炭素の単体

黒鉛 ダイヤモンド フラーレン
化学式 C C C60,C70(,C80
黒色 無色透明
構造
 
C原子により形成された6角形の層が分子間力で結合

 
C原子が四面体の頂点方向に共有結合

 
C原子がサッカーボール型に結合
性質 やわらかい
もろい
電気をよく通す
金属光沢あり
極めて硬い
電気を通さない
ナノテクノロジーに利用

炭素の酸化物(一酸化炭素)

①無色無臭なのにも関わらず有毒
②水に溶けにくく、中性
③還元性がある
④実験室的製法:ギ酸に濃硫酸を加えて加熱する
⑤工業的製法:炭素に水蒸気を反応させる
Point!

①無色無臭なのにも関わらず有毒

一酸化炭素COは、無色無臭で有毒な気体である。
通常、有毒な気体は異臭がしたり、色がついていたりすることが多いので、一酸化炭素の大きな特徴と言える。

※気体の色や匂いについて詳しくは気体の性質(色・臭い・毒性・水溶液の液性など)を参照

②水に溶けにくく、中性

一酸化炭素COは水に溶けにくい中性気体である。

※気体の水溶液の液性について詳しくは気体の性質(色・臭い・毒性・水溶液の液性など)を参照

③還元性がある

一酸化炭素COは還元性をもつ。

\[
Fe_{2}O_{3} + 3CO → 2Fe + 3CO_{2}
\]

この反応はCOによるFe2O3の還元である。
COが酸素を受け取ってCO2に、酸化鉄Fe2O3は酸素がとれて(=還元されて)単体のFeになっている。

④実験室的製法:ギ酸に濃硫酸を加えて加熱する

一酸化炭素COを実験室で作るときには、ギ酸HCOOHに濃硫酸H2SO4を加えて加熱する。

\[
HCOOH → CO + H_{2}O
\]

※気体の製法について詳しくは気体の製法(反応式・原理・注意事項など)を参照

⑤工業的製法:炭素に水蒸気を反応させる

一酸化炭素COを工業的に作るときには、炭素Cに水蒸気H2Oを反応させる。

\[
C + H_{2}O → CO + H_{2}
\]

炭素の酸化物(二酸化炭素)

①無色無臭の気体
②水に溶け、弱酸性を示す
③石灰水を白濁させる
④実験室的製法:炭酸カルシウムに塩酸を加える
⑤工業的製法:炭酸カルシウムを加熱する
Point!

①無色無臭の気体

二酸化炭素CO2は無色無臭の気体であり、一酸化炭素と異なり毒性はない。

※気体の色や匂い、毒性について詳しくは気体の性質(色・臭い・毒性・水溶液の液性など)を参照

②水に溶け、弱酸性を示す

水に(少しだけ)溶けて、弱酸性を示す。

\[
CO_{2} + H_{2}O → H_{2}CO_{3}
\]

※気体の水溶液の液性について詳しくは気体の性質(色・臭い・毒性・水溶液の液性など)を参照

③石灰水を白濁させる

石灰水(水酸化カルシウムCa(OH)2の水溶液:詳しくは2族元素(アルカリ土類金属・Mg)の特徴・性質・反応などを参照)に二酸化炭素CO2を通じると、炭酸カルシウムCaCO3の沈殿が生成して白濁する。

\[
Ca(OH)_{2}+CO_{2}→CaCO_{3}↓+H_{2}O
\]

ここでさらにCO2を吹き込むと…

\[
CaCO_{3} + CO_{2} + H_{2}O → Ca(HCO_{3})_{2}
\]

炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2は水に溶けやすいため、沈殿が溶解する。(=白濁が消える

また、白濁が消えた後、水溶液を加熱すると上記の逆反応が進み、CaCO3の沈殿が生成し、再度白濁する。

\[
Ca(HCO_{3})_{2}→CaCO_{3} + CO_{2} + H_{2}O
\]

これらはCO2の検出反応として用いられている。

※気体の検出反応について詳しくは気体の検出反応まとめを参照

④実験室的製法:炭酸カルシウムに塩酸を加える

二酸化炭素CO2を実験室で作る時には、炭酸カルシウムCaCO3に塩酸HClを加える。

\[
CaCO_{3} + 2HCl → CO_{2} + CaCl_{2} + H_{2}O
\]

この反応は、弱酸遊離反応の一種である。

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

⑤工業的製法:炭酸カルシウムを加熱する

二酸化炭素CO2を工業的に作る時には、炭酸カルシウムCaCO3を加熱する。

\[
CaCO_{3} → CaO + CO_{2}
\]

この反応は、熱分解反応の一種である。

※熱分解反応について詳しくは【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説を参照

炭素に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭素の同素体のうち、C原子により形成された6角形の層が分子間力で結合したものを【1】という。【1】は【2】色で【3】を通し【4】光沢がある。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】黒鉛【2】黒【3】電気【4】金属
黒鉛 ダイヤモンド フラーレン
化学式 C C C60,C70(,C80
黒色 無色透明
構造
 
C原子により形成された6角形の層が分子間力で結合

 
C原子が四面体の頂点方向に共有結合

 
C原子がサッカーボール型に結合
性質 やわらかい
もろい
電気をよく通す
金属光沢あり
極めて硬い
電気を通さない
ナノテクノロジーに利用
問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

C原子が四面体の頂点方向に共有結合したものを【1】という。【1】は【2】色で【3】は通さない。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】ダイヤモンド【2】無【3】電気
問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

C原子がサッカーボール型に結合したものを【1】という。分子式で表すと【2】となり【3】に利用されている。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】フラーレン【2】C60(C70,C80もある)【3】ナノテクノロジー
問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

ギ酸HCOOHに濃硫酸H2SO4を加えて加熱すると【1】が発生する。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】一酸化炭素(CO)

一酸化炭素COを実験室で作るときには、ギ酸HCOOHに濃硫酸H2SO4を加えて加熱する。

\[
HCOOH → CO + H_{2}O
\]

※気体の製法について詳しくは気体の製法(反応式・原理・注意事項など)を参照

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭素Cに水蒸気H2Oを反応させると【1】が発生する。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】一酸化炭素(CO)

一酸化炭素COを工業的に作るときには、炭素Cに水蒸気H2Oを反応させる。

\[
C + H_{2}O → CO + H_{2}
\]

※気体の製法について詳しくは気体の製法(反応式・原理・注意事項など)を参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

一酸化炭素COは【1】で有害な気体である。また一酸化炭素は水に溶けにくい【2】性気体で、【3(酸化or還元)】性をもつ。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】無色無臭【2】中【3】還元
問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸カルシウムCaCO3に塩酸HClを加えると【1】が発生する。

【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】二酸化炭素(CO2

二酸化炭素CO2を実験室で作る時には、炭酸カルシウムCaCO3に塩酸HClを加える。

\[
CaCO_{3} + 2HCl → CO_{2} + CaCl_{2} + H_{2}O
\]

この反応は、弱酸遊離反応の一種である。

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問8

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸カルシウムCaCO3を加熱すると【1】が発生する。

【問8】解答/解説:タップで表示
解答:【1】二酸化炭素(CO2

二酸化炭素CO2を工業的に作る時には、炭酸カルシウムCaCO3を加熱する。

\[
CaCO_{3} → CaO + CO_{2}
\]

この反応は、熱分解反応の一種である。

※熱分解反応について詳しくは【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説を参照

問9

【】に当てはまる用語を答えよ。

二酸化炭素(CO2)は【1】の気体であり、毒性はない。また、水に少し溶けて【2】性を示す。さらに、【3】を白濁させるという性質をもつ。白濁の原因はCO2と水が反応してできる【4】であり、過剰のCO2を吹き込むと再び溶解する。

【問9】解答/解説:タップで表示
解答:【1】無色無臭【2】弱酸【3】石灰水(Ca(OH)2水溶液)【4】CaCO3

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細