揮発性酸遊離反応とは?原理や疑問点を具体例を使って解説!

はじめに

揮発性酸遊離反応がいまいち理解出来ないという高校生は非常に多い。このページでは揮発性酸遊離反応の原理や疑問に感じやすいポイントなどを一から丁寧に解説していく。ぜひこの機会に揮発性酸遊離反応をマスターして他の受験生と差をつけよう!


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揮発性酸遊離反応とは

揮発性酸遊離反応とはHClなどの揮発性の酸(蒸発しやすい酸)の塩に、濃硫酸H2SO4などの不揮発性の酸(蒸発しにくい酸)を加えることで揮発性の酸を取り出す反応である。

揮発性酸遊離反応の原理

揮発性酸遊離反応の原理について「【保存板】気体の発生方法・反応式まとめ!」でHClの発生法として紹介した「塩化ナトリウムNaClと濃硫酸H2SO4の反応」を例に説明していこう。

揮発性の酸(HCl)由来の塩であるHClにH2SO4を加えると、水溶液中にはNa+、Cl、H+、SO42-が混在する状態になる。

この状態では4つの化合物NaCl、Na2SO4、HCl、H2SO4が生成する可能性が考えられるが、加熱をすると、揮発性のHClのみがどんどん蒸発する。

その結果、HClを増やす方向の反応が起こる。(ルシャトリエの原理

\[
揮発性の酸を含む塩 + 不揮発性の酸 → 揮発性の酸 + 不揮発性の酸を含む塩
\]
\[
NaCl+H_{2}SO_{4}\overset{加熱}{→}NaHSO_{4}+HCl
\]

揮発性酸遊離反応のポイントまとめ

揮発性酸遊離反応を考える上で肝となるポイントをいくつか紹介していく。案外奥が深い反応なので各事項の理論をきちんと理解しておこう。

濃硫酸を使う理由

揮発性酸遊離反応を学習している高校生から「濃硫酸じゃなくて希硫酸だとダメなの?」という質問をよく受ける。

結論から言うと「ダメ」である。

まず酸の強さについてきちんと理解しておく必要がある。塩酸と硫酸はともに強酸ではあるが、強酸同士にも強弱というものが存在しており、塩酸と硫酸で比較すると硫酸の方が圧倒的に強い。したがって弱酸遊離反応により希硫酸がもつ水素イオンH+を塩化物イオンClに押し付けようとする。

しかし希硫酸(濃”硫酸”を水で”希”釈したもの)の場合、溶液中に水分子H2Oがたくさん存在する。塩酸も(硫酸より劣るものの一応強酸なので)酸としてH+を投げる力は十分に強いため、希硫酸から来たH+をH2Oに押し付ける。

その結果、塩化ナトリウムに希硫酸を加えた場合、両方とも普通に溶けるという結果になる。

一方、濃硫酸だとどうなるだろうか。

まず希硫酸と同様に濃硫酸が自身のH+を塩化物イオンClに押し付ける。

希硫酸であればこの後塩酸はH2OにH+を押し付けようとするが、濃硫酸だと(水で希釈されていないため)溶液中にH2がほぼ存在しない。したがって、塩酸はH+を押し付ける相手がいない。

この状態で加熱をすると、塩酸は揮発性の酸なので蒸発する。さらに、上で説明したようにルシャトリエの原理にによってHClはどんどんと作られ、蒸発していく。

なぜNaHSO4で止まるのか

\[
NaCl+H_{2}SO_{4}\overset{加熱}{→}NaHSO_{4}+HCl
\]

この反応式において、H2SO42SO4までいかずNaHSO4で止まっているが、これは酸の強さの観点から説明できる。

硫酸は次のような二段階で電離する。

\[
H_{2}SO_{4}→H^{+}+HSO_{4}^{-}\\
HSO_{4}^{-}→H^{+}+SO_{4}^{2-}
\]

酸としての強さ(H+の放出しやすさ)はH2SO4(第一電離)>HCl>HSO3(第二電離)である。

HClの方がHSO3よりも酸として強力なので、HClがある状態でHSO3がH+を放出することはない。

したがって、H2SO4がNa2SO4までいくことはなくNaHSO4で止まるのである。

濃硫酸は弱酸ではないのか

先ほどから「塩酸よりも濃硫酸の方が圧倒的に強い」と言っているが、濃硫酸は弱酸だと習ったという人も多いのではないだろうか。

濃硫酸が弱酸だと説明されるのは濃硫酸中には水分子がほとんど存在しないからである。

確かに濃硫酸はH+をあまり放出しない。しかしこれは(濃硫酸の濃度は98%のため)H+を放出したときにそれを受け取るH2Oが存在しないからである。決してH+を放出する力そのものが弱いわけではなく、めちゃくちゃ電離したいのに電離できない、言わば欲求不満状態ということ。

もしH+を受け取る相手がいれば当然H+をたくさん放出する強酸として働く。

不揮発性の酸は何種類あるのか

高校化学で不揮発性の酸として出てくるのは濃硫酸のみである。一応リン酸も不揮発性の酸ではあるが、濃硫酸よりも酸として弱く、硫酸を用いるのが通例である。

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