【プロ講師解説】このページでは『遷移元素の1種である銅の性質や製法』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

銅の単体

①展性/延性がある
②電気伝導性が高い
③赤色である
④イオン化傾向がH2より小さい
⑤柔らかい
Point!

銅の単体の性質として知っておいてほしいのは上の5つ。
順番に確認していこう。

①展性・延性がある

展性

薄く広げることができる性質(例:金箔)

延性

長く延ばすことができる性質(例:銅線)

Point!

あらゆる金属は展性や延性をもつものが多いが、銅の単体は、その中でも特にその性質が強い。

②電気伝導性をもつ

金属は基本的に電気を通す性質(=電気伝導性)をもつが、銅は特にこの性質が強い。

③赤色である

銅の単体は基本的に赤色をしている。
他の多くの金属は銀に近い色をしているので、これも銅の特徴的な性質として考えることができる。

※無機化学で頻出の色について詳しくは無機化学の色まとめ(イオン/化合物(沈殿)/ハロゲンなど)を参照

④イオン化傾向がH2より小さい

銅はイオン化傾向がH2より小さい。

したがって、酸化力の強い酸(希硝酸・濃硝酸・熱濃硫酸)や王水と反応して銅イオンとなることはできるが、水や希酸とは反応できない。

※イオン化傾向について詳しくはイオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)を参照

⑤やわらかい

銅の単体は比較的柔らかめの金属なので(硬度を獲得するために)ニッケルやスズなど他の金属と混ぜて”合金”にして用いることがある。

合金 組成
黄銅 Cu+Zn
青銅 Cu+Sn
白銅 Cu+Ni

※高校化学でよく出るメッキや合金について詳しくはめっき・合金一覧を参照

銅の酸化物

酸化銅(Ⅱ)CuO → 黒色
酸化銅(Ⅰ)Cu2O → 赤色
Point!

銅の単体を空気中で酸化すると、黒色の酸化銅(Ⅱ)CuOが生じる。

\[
Cu → CuO(黒色)
\]

ここでさらに高温にすると、赤色の酸化銅(Ⅰ)Cu2Oが生じる。

\[
CuO → Cu_{2}O(赤色)
\]

Cu2Oはフェーリング反応によって生じる物質であり、アルデヒド基(-CHO)の検出に用いられる。

※フェーリング反応について詳しくは【銀鏡反応 & フェーリング反応】原理や反応式、沈殿、色変化など総まとめ!を参照

銅を含む塩

硫酸銅(Ⅱ)CuSO4 → 白色
Point!

銅を含む塩として入試等で頻出なのは硫酸銅(Ⅱ)CuSO4である。

先ほど酸化物のところで登場したCuOは塩基性酸化物の一種であり、酸である硫酸H2SO4と以下のような反応を起こす。

\[
CuO + H_{2}SO_{4} → H_{2}O + CuSO_{4}
\]

この反応により生じたCuSO4水溶液から結晶を析出させると、青色のCuSO4・5H2Oを得ることができる。
このCuSO4・5H2Oを加熱していくと、徐々にH2 Oがとれていって最終的に無水和物であるCuSO4の白色沈殿となる。

銅の製法

銅は、粗銅の精製と電解精錬を行うことによって工業的に作られる。

※製法の詳しい仕組みについて詳しくは銅の工業的製法「粗銅の精製・電解精錬」(仕組み・陽極泥・反応式など)を参照

銅に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅の単体は、薄く広げることができる性質である【1】、長く延ばすことができる性質である【2】をもつ。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】展性【2】延性
展性

薄く広げることができる性質(例:金箔)

延性

長く延ばすことができる性質(例:銅線)

Point!

あらゆる金属は展性や延性をもつものが多いが、銅の単体は、その中でも特にその性質が強い。

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅は電気を通す性質(=【1】)が比較的大きい。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】電気伝導性

金属は基本的に電気を通す性質(=電気伝導性)をもつが、銅は特にこの性質が強い。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅は基本的に【1】色である。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】赤

銅の単体は基本的に赤色をしている。
他の多くの金属は銀に近い色をしているので、これも銅の特徴的な性質として考えることができる。

※無機化学で頻出の色について詳しくは無機化学の色まとめ(イオン/化合物(沈殿)/ハロゲンなど)を参照

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅は比較的柔らかいため他の金属と混ぜて【1】として用いられることが多い。銅と亜鉛の【1】を【2】、銅とスズの【1】を【3】、銅とニッケルの【1】を【4】という。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】合金【2】黄銅【3】青銅【4】白銅

銅の単体は比較的柔らかめの金属なので(硬度を獲得するために)ニッケルやスズなど他の金属と混ぜて”合金”にして用いることがある。

合金 組成
黄銅 Cu+Zn
青銅 Cu+Sn
白銅 Cu+Ni

※合金について詳しくはめっき・合金一覧を参照

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅の単体を空気中で酸化すると、黒色の【1】が生じる。ここでさらに高温にすると、赤色の【2】が生じる。【2】は【3】反応によって生じる物質であり、【4】の検出に用いられる。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】酸化銅(Ⅱ)CuO【2】酸化銅(Ⅰ)Cu2O【3】フェーリング【4】アルデヒド基(ーCHO)
酸化銅(Ⅱ)CuO → 黒色
酸化銅(Ⅰ)Cu2O → 赤色
Point!

銅の単体を空気中で酸化すると、黒色の酸化銅(Ⅱ)CuOが生じる。

\[
Cu → CuO(黒色)
\]

ここでさらに高温にすると、赤色の酸化銅(Ⅰ)Cu2Oが生じる。

\[
CuO → Cu_{2}O(赤色)
\]

Cu2Oはフェーリング反応によって生じる物質であり、アルデヒド基(-CHO)の検出に用いられる。

※フェーリング反応について詳しくは銀鏡反応とフェーリング反応(原理・反応式・沈殿・色変化など)を参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

【1】色のCuSO4・5H2Oを加熱していくと徐々にH2Oがとれていき最終的に無水和物であるCuSO4の【2】色沈殿となる。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】青【2】白

銅を含む塩として入試等で頻出なのは硫酸銅(Ⅱ)CuSO4である。

酸化銅(Ⅱ)CuOは塩基性酸化物の一種であり、酸である硫酸H2SO4と以下のような反応を起こす。

\[
CuO + H_{2}SO_{4} → H_{2}O + CuSO_{4}
\]

この反応により生じたCuSO4水溶液から結晶を析出させると、青色のCuSO4・5H2Oを得ることができる。
このCuSO4・5H2Oを加熱していくと、徐々にH2 Oがとれていって最終的に無水和物であるCuSO4の白色沈殿となる。


問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅は工業的に【1】の精製と【2】を行うことで作られる。

【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】粗銅【2】電解精錬

銅は、粗銅の精製と電解精錬を行うことによって工業的に作られる。

※粗銅の生成・電解精錬について詳しくは銅の工業的製法「粗銅の精製・電解精錬」(仕組み・陽極泥・反応式など)を参照

関連:無機のドリルが、できました。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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