はじめに

金属の単位格子は面心立方格子・体心立方格子・六方最密構造に分類することができる。
今回はそのうちの1つである六方最密構造について、単位格子に含む原子数や配位数、高さ、密度、充填率の求め方・計算方法を丁寧に解説していこうと思う。入試でも頻繁に問われる部分なので、是非この機会にマスターしておこう!!


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六方最密構造とは

六方最密構造とは次のような構造である。

上下の層は、1コの原子の周りを6コの原子が取り囲む形になっている。

そして真ん中の層は、上下の層の「隙間」を埋めるような形で配置されている。

六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数

もう一度、上で見た六方最密構造の図を確認しよう。

実は「六方最密構造」は上の構造で間違いないんだけど、六方最密構造の「単位格子(最小単位)」はこのうち1/3なんだ。

従って、六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数を答える時は、六方最密構造中の3分の1に注目して原子の個数を考える必要がある。

まず、六方最密構造を上から見た図を確認しよう。

六方最密構造を上から見ると「正六角形」であり、従って1つの角度は120度である。

先ほどから述べているように、六方最密構造の単位格子は六角柱の1/3の部分なので、上からの図で考えると…

このようになる。平行四辺形の4つの格のうち2つの角が120°を半分にした60°になっていることに注意しよう。

ここで、もう一度全体の図を見てみよう。

角度が120°の割球(1/6の割球)と60°の割球(1/12の割球)は4つずつ存在しているのがわかるよね。(上の面に2つずつ、下の面に2つずつ)

これらの割球と、サイドに存在している「合わせて1コ」の割球を考慮すると次のような式を立てることができる。

従って、六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数は「2コ」となる。

注意

「合わせて1コ」と書いてある部分に疑問を感じる人がいるんじゃないかな。

「六方最密構造の構造では、真ん中の層には3つの原子を隙間を1つずつ空けて置いたはずなのに、なんで隣合ってる2つの面に原子があるの?」なんて質問はよく受ける。

そこについて少し詳しく説明しておこう。(テストでなぜ合わせて1コなのかが問われることは考えにくい。実際には覚えておけばそれでOK)

六方最密構造というのは、実は無数に繫がっている結晶の一部分に過ぎない。
上の図の”六角形の部分(色が濃い部分)”は六方最密構造の下層と中層を表しており、本来はこれに下層と同じ配置で上層が重なりあうことで六方最密構造が完成している。(上層は見やすさの関係で省いている)

ここで、六方最密構造の単位格子を図中に示すと…

このようになる。
六方最密構造の中層の原子の一部が切り取られ、そのかわり本来中層に含まれていなかった(隣の六方最密構造の)原子の一部が取り込まれていることがわかるかな。

この、切り取られる部分と取り込まれる部分が一致するため、結果的に「合わせて1コ」という表現がよくされているんだ。よく理解しておこう。

実際に立体的な図で確認してみたいという人は以下の動画(youtube)が参考になるので見てみてね。


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六方最密構造の配位数

配位数とは「1コの原子を取り囲む他の粒子の数」のことである。

六方最密構造の中には「まるごと1コ」の状態で存在する原子がないので、2つの六方最密構造を重ねあわせて考える。

2つの六方最密構造を重ねあわせると、真ん中が「まるごと1コ」の原子になる。従って、この原子に隣接する原子の数を数えてあげれば良い。

六方最密構造の配位数は12である。


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六方最密構造の高さの求め方と原子半径

上のSTEPに従って、六方最密構造の高さの求め方を説明していく。

STEP1

高さを測る場所を確認する。

六方最密格子の高さとして、以下の赤矢印の部分を測定する。

しかし、この長さを一気に測るのではなく「半分の長さを測って二倍する」という方針でいく。

STEP2

六方最密格子から高さを求めるのに必要な部分を取り出し、形を確認する。

次に、六方最密格子から高さを求めるのに必要な部分を取り出し、形を確認する。

STEP3

正四面体の頂点から垂線を降ろす。

それぞれの原子にA〜Dの記号をふる。また、垂線を降ろした先は点Hとする。

STEP4

DとBCの中点Mの距離を求める。

CDの長さは2r、MCの長さはr(rは原子半径)なので、三平方の定理よりDとBCの中点Mの距離は√3rとなる。

STEP5

DHの長さを求める。

正四面体の垂線の足であるHはこの立方体の“重心”である。従って、HはDMを2:1に内分する点なので(この辺は数学の知識)先ほどSTEP4で求めたDMの長さの2/3がDHの長さとなる。

STEP6

AHの長さを求める。また、それを二倍して六方最密構造全体の高さを求める。

STEP5で求めたDHの長さを使って、AHの長さを求める。

AHの長さの2倍が六方最密構造全体の高さなので、この値を2倍する。


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六方最密構造の充填率

充填率とは「単位格子の体積に占める原子の体積の割合」である。

六方最密構造の充填率は次の3STEPで求めていく。

STEP1

六方最密構造の上層(下層)の表面積を求める。

六方最密構造の充填率を求めるために、まずは六方最密構造の上層(下層)の表面積を求めていく。

六方最密構造の上層(下層)は正六角形であるため、以下のように6つの正三角形に分けることができる。

従って、6つの三角形のうち1つの三角形の面積を求め、それを6倍することで上層(下層)の面積を求めることができる。

STEP2

STEP1で求めた面積に六方最密構造の高さをかけることで六方最密構造の体積を出す。

次に、STEP1で求めた面積に六方最密構造の高さをかけることで六方最密構造の体積を出す。

六方最密構造の体積は24√2r3となる。
高さの求め方については上の「六方最密構造の高さの求め方と原子半径」のところを見てね!

STEP3

公式を使って充填率を求める。

最後に、公式を使って六方最密構造の充填率を求めていく。

最密構造の体積に関してはSTEP2で求めた値を使う。

また、球の体積は4/3πr3と表すことができる(これは数学の知識)ので、六方最密構造中に6コの原子が含まれる(上でやったように六方最密構造の1/3である単位格子中に含まれる原子の数が2コのため六方最密構造全体に含まれる原子の数は3倍の6コ)ことを考えると、原子の体積の合計は4/3πr3×6となる。

以上より、六方最密構造の充填率は74%である。

六方最密構造の密度

六方最密構造の密度は『g/cm3』という単位で表されることが多い。

この単位のうち、分子のgは六方最密構造に含まれる原子の重さを、分母のcm3は六方最密構造全体の体積を示している。

従って、アボガドロ定数をN(コ/mol)、六方最密構造に含まれる原子の原子量をM(g/mol)とすると、六方最密構造の密度は次のように表すことができる。

ちなみに分子の部分は、原子量M(g/mol)をアボガドロ定数N(コ/mol)で割ることで(molとmolが約分されて)「g/コ」を出し、それに原子の数(コ)をかけることで「g」を導き出している。

あとはこの式に、アボガドロ定数である6.0×1023(コ/mol)、六方最密構造に含まれる原子の数である6(コ)、問題文で与えられている分子量(g/mol)、六方最密構造の体積(rには実際の値を入れる)を代入すれば、六方最密構造の密度を求めることができる。

まとめ

単位格子に含まれる原子の個数 2コ
六方最密構造の配位数 12コ
六方最密構造の充填率 74%

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演習問題

 問1

六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数はいくつか。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:2コ

角度が120°の割球(1/6の割球)と60°の割球(1/12の割球)は4つずつ存在しているのがわかる。(上の面に2つずつ、下の面に2つずつ)

これらの割球と、サイドに存在している「合わせて1コ」の割球を考慮すると次のような式を立てることができる。

従って、六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数は「2コ」となる。

「合わせて1コ」になるのがなぜなのかが知りたいときは、上の「六方最密構造の単位格子に含まれる原子の数」の注意のところを見てみよう。

 問2

六方最密構造全体に含まれる原子の数はいくつか。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:6コ

上で説明したように六方最密構造の単位格子は全体の1/3である。

従って、問1で求めたように六方最密構造の単位格子に含まれる原子数は2コなので、構造全体に含まれる原子数はその3倍の6コである。

 問3

六方最密構造の配位数はいくつか。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:12

六方最密構造の中には「まるごと1コ」の状態で存在する原子がないので、2つの六方最密構造を重ねあわせて考える。

2つの六方最密構造を重ねあわせると、真ん中が「まるごと1コ」の原子になる。従って、この原子に隣接する原子の数を数えてあげれば良い。

六方最密構造の配位数は12である。

 問4

六方最密構造の充填率はいくつか。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:74%

六方最密構造の充填率は74%である。求め方については上の「六方最密構造の高さの求め方と原子半径」及び「六方最密構造の充填率・密度」の項目を参照して欲しい。


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