【プロ講師解説】このページでは『水酸化ナトリウムの溶解熱の求め方』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
はじめに
水酸化ナトリウムNaOHを水に溶解させると、溶解熱と呼ばれる熱が発生する。
この溶解熱の発生によって変化する温度の時間経過を表した以下のようなグラフが大学入試でよく出題されるので、今回はこのグラフの見方を確認していこう。
水酸化ナトリウムNaOHを溶解することによる溶解熱の発生
水酸化ナトリウムNaOHを水に溶解させると、溶解熱が発生する。
NaOHの溶解は発熱反応なので、反応が進むほど温度は上昇していく。
NaOHが全て溶けきると、温度上昇はストップする。それ以上熱の発生がなく、熱は自然に放出されるので、温度は徐々に低下していく。
以上が、基本的なグラフの見方である。
最高温度を求める際に冷却直線を延長する理由
「NaOHを溶解すると溶解熱が発生して温度はだんだん上昇する」というのは確かに正しい。
しかし、実は発生した熱の一部は(発生した直後から)徐々に外に逃げてしまっている。
したがって、★の所を最大温度とするのではなく「もし途中で一切熱が逃げなかったら(もしくは逃げる間もなく一瞬で溶解したら)」と仮定した温度に補正する必要がある。
補正の方法は簡単。冷却直線を延長して、温度を表す縦軸との交点を求めるだけである。
なぜ冷却直線を延長させたときの温度を表す縦軸との交点が「冷却が起こらなかった場合の温度」を表すのだろうか。
冷却を示すのが青線。溶解熱を表すのが緑線。
もし冷却がなければ溶解熱により温度は緑のように上昇していくはず。
しかし、冷却(– – – – –の部分)が発熱と同時進行で行われているため、緑線は黒線の所まで押し下げられている。(つまり– – – – –の部分は延長して無理矢理作っている線ではなく、本来存在しており、緑線と組み合わさって黒線になっているだけ)
冷却直線(青線)はNaOHの冷却を表す唯一の線であり「〜分冷却したときの温度」を表すものである。
したがって、「冷却しなかったときの温度(発熱をしているときに逃げている温度も含めて熱の放出(=冷却)が一切なかったときの温度)」はこのグラフ(冷却直線)が「0分冷却したときの温度」になる。
ちなみに、冷却直線は発熱を表す曲線(黒線)の続きにあるので「冷却直線は黒い線を元に作られている」ので発熱の方もきちんと考慮されていることになる。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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