【プロ講師解説】このページでは『銅の工業的製法「粗銅の精製・電解精錬」(仕組みから陽極泥の詳細など)』について解説しています。(銅の性質等については銅の単体・酸化物・銅原子を含む塩の性質や製法などを参照)解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

工業的製法の流れ・仕組み

銅の工業的製法は主に「粗銅の精製」と「電解精錬」の2段階に分けることができる。
ここでは、これらの段階をより細かくした以下の3STEPで、工業的製法の流れ・仕組みを確認していこう。

STEP1 原料となる黄銅鉱(CuFeS2)にコークス(C)と石灰石(CaCO3)を混ぜて溶鉱炉で加熱
→ 硫化銅(Ⅰ)Cu2Sが生成
STEP2 STEP1で得たCu2Sに転炉でO2を吹き込み加熱
→ 粗銅が生成
STEP3 電解精錬を行う
→ 純銅が生成
Point!

STEP1

原料となる黄銅鉱(CuFeS2)にコークスCと石灰石CaCO3を混ぜて溶鉱炉で加熱し、硫化銅(Ⅰ)Cu2Sを得る

まずは、原料となる黄銅鉱(CuFeS2コークスC石灰石CaCO3を混ぜて溶鉱炉で加熱する。

\[
4CuFeS_{2}+9O_{2}→2Cu_{2}S+2Fe_{2}O_{3}+6SO_{2}
\]

これにより硫化銅(Ⅰ)Cu2Sが生じる。

STEP2

STEP1で得たCu2Sに転炉でO2を吹き込み加熱し、粗銅を得る

次に、STEP1で得たCu2Sに転炉でO2を吹き込み加熱する。

\[
2Cu_{2}S + 3O_{2} → 2Cu_{2}O + 2SO_{2}・・・①\\
2Cu_{2}O + Cu_{2}S → 6Cu+SO_{2}・・・②
\]

①と②の反応式を足し合わせると…

\[
3Cu_{2}S + 3O_{2} → 6Cu + 3SO_{2}
\]

全係数を3で割って…

\[
Cu_{2}S + O_{2} → 2Cu + SO_{2}
\]

ここで精製した銅は粗銅と呼ばれる不純物を多く含んだ銅。
STEP3で電解精錬を行うことで不純物を取り除き、より純粋な銅にしていく。

STEP3

電解精錬を行い、純銅を得る

最後に、電解精錬を行い純銅を得る。
※電解精錬の仕組みについて詳しくは以下に別枠で記載

電解精錬の仕組み

STEP1 粗銅を陽極に、純銅を陰極にして硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液中で電気分解(電解精錬)を行う
STEP2 陽極(粗銅)に含まれる金属のうち、銅と銅よりイオン化傾向が高い金属が電子eを放出して溶け出し、残りは陽極板の下に沈殿する
STEP3 陰極で(水溶液中で最もイオン化傾向が低い)Cu2+がeを受け取り、単体のCu(純銅)になり、陰極板の純銅にはりつく
Point!

STEP1

粗銅を陽極に、純銅を陰極にして硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液中で電気分解(電解精錬)を行う

まずは、粗銅を陽極に、純銅を陰極にして硫酸銅(Ⅱ)CuSO4水溶液中で電気分解(=電解精錬)を行う。

STEP2

陽極(粗銅)に含まれる金属のうち、銅と銅よりイオン化傾向が高い金属が電子eを放出して溶け出し、残りは陽極板の下に沈殿する

CuSO4水溶液中には当然銅イオンCu2+が存在している。
したがって、銅よりもイオン化傾向が大きい金属は「銅がイオンになってるのに自分がなっていないのはおかしい!」という感じで溶液中に溶け出し、陽イオンとなる。(銅も、周りの液に既に銅イオンが存在しているので、溶け出してCu2+となる)

一方、粗銅に含まれる”銅よりもイオン化傾向が小さい金属(銀や金など)”は(陽イオンにはならず)金属板からはがれて沈殿を形成する。(=陽極泥

STEP3

陰極で(水溶液中で最もイオン化傾向が低い)Cu2+がeを受け取り、単体のCu(純銅)になり、陰極板の純銅にはりつく

陰極では、Cu2+がeを受けとり単体のCu(純銅)となり、陰極板の純銅にはりつく。

Zn2+やFe2+はCu2+に比べてイオン化傾向が大きいので、eを受け取り単体になることはない。

電解精錬の反応式まとめ

陽極の反応式

\[
Zn → Zn^{2+} + 2e^{-}\\
Fe → Fe^{2+} + 2e^{-}\\
Cu → Cu^{2+} + 2e^{-}\\
(AgやAuは陽極泥として沈殿)
\]

陰極の反応式

\[
Cu^{2+} + 2e^{-} → Cu
\]

銅の製法に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅は工業的に【1】の精製と【2】を行うことで作られる。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】粗銅【2】電解精錬

銅は、粗銅の精製と電解精錬を行うことによって工業的に作られる。

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

銅の生成では、まず原料となる【1】にコークスCと石灰石CaCO3を混ぜて溶鉱炉で加熱し【2】を得る。次に【2】に転炉で酸素O2を吹き込み加熱し【3】を得る。最後に【4】を行い純粋な銅が完成する。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】黄銅鉱(CuFeS2)【2】硫化銅(Ⅰ)Cu2S【3】粗銅【4】電解精錬
STEP1 原料となる黄銅鉱(CuFeS2)にコークス(C)と石灰石(CaCO3)を混ぜて溶鉱炉で加熱
→ 硫化銅(Ⅰ)Cu2Sが生成
STEP2 STEP1で得たCu2Sに転炉でO2を吹き込み加熱
→ 粗銅が生成
STEP3 電解精錬を行う
→ 純銅が生成
Point!

STEP1

原料となる黄銅鉱(CuFeS2)にコークスCと石灰石CaCO3を混ぜて溶鉱炉で加熱し、硫化銅(Ⅰ)Cu2Sを得る

まずは、原料となる黄銅鉱(CuFeS2コークスC石灰石CaCO3を混ぜて溶鉱炉で加熱する。

\[
4CuFeS_{2}+9O_{2}→2Cu_{2}S+2Fe_{2}O_{3}+6SO_{2}
\]

これにより硫化銅(Ⅰ)Cu2Sが生じる。

STEP2

STEP1で得たCu2Sに転炉でO2を吹き込み加熱し、粗銅を得る

次に、STEP1で得たCu2Sに転炉でO2を吹き込み加熱する。

\[
2Cu_{2}S + 3O_{2} → 2Cu_{2}O + 2SO_{2}・・・①\\
2Cu_{2}O + Cu_{2}S → 6Cu+SO_{2}・・・②
\]

①と②の反応式を足し合わせると…

\[
3Cu_{2}S + 3O_{2} → 6Cu + 3SO_{2}
\]

全係数を3で割って…

\[
Cu_{2}S + O_{2} → 2Cu + SO_{2}
\]

ここで精製した銅は粗銅と呼ばれる不純物を多く含んだ銅。
STEP3で電解精錬を行うことで不純物を取り除き、より純粋な銅にしていく。

STEP3

電解精錬を行い、純銅を得る

最後に、電解精錬を行い純銅を得る。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

電解精錬では、陽極に【1】を、陰極に【2】を用いる。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】粗銅【2】純銅


問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

粗銅に含まれる「銅よりもイオン化傾向が【1(大きor小さ)】い金属」は金属板からはがれて【2】と呼ばれる沈殿を形成する。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】小さ【2】陽極泥


問5

電解精錬の陰極、陽極の反応式を書け。
【問5】解答/解説:タップで表示
解答:以下参照

陽極の反応式

\[
Zn → Zn^{2+} + 2e^{-}\\
Fe → Fe^{2+} + 2e^{-}\\
Cu → Cu^{2+} + 2e^{-}\\
(AgやAuは陽極泥として沈殿)
\]

陰極の反応式

\[
Cu^{2+} + 2e^{-} → Cu
\]

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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