【プロ講師解説】このページでは『2族元素(アルカリ土類金属・Mg)の色や炎色反応・水との反応など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
アルカリ土類金属とは
周期表(覚え方・語呂合わせ・族や周期の見方など)にあるように、アルカリ土類金属とはベリリウムBeとマグネシウムMgを除く2族元素の総称である。
2族元素の単体
まずは、2族の単体に関する以下の情報を暗記しよう。
Mg | Ca | Sr | Ba | |
---|---|---|---|---|
炎色反応 | × | 橙色 | 紅色 | 黄緑色 |
H2Oとの反応 | 熱水と反応 | 冷水と反応 | 冷水と反応 | 冷水と反応 |
SO42-との反応 | 沈殿なし | CaSO4 (白) |
SrSO4 (白) |
BaSO4 (白) |
OH–との反応 | Mg(OH)2 (白) |
Ca(OH)2 (白)(注) |
沈殿なし | 沈殿なし |
(注)”多量”にOH–を加えた場合に生じる。
2族元素の酸化物(酸化カルシウム)
②水に溶けて強塩基性を示す(水酸化物になる)
③塩基性の乾燥剤として用いられる
①生石灰とも呼ばれる
酸化カルシウムCaOは生石灰(読み方:せいせっかい)とも呼ばれる。
②水に溶けて強塩基性を示す(水酸化物になる)
酸化カルシウムは水に溶けて強塩基性を示す。
CaO + H_{2}O → Ca(OH)_{2}
\]
CaOは塩基性酸化物であるため、水と反応すると水酸化物になる。
※酸化物の反応について詳しくは酸化物の反応(金属元素・非金属元素)を参照
③塩基性の乾燥剤として用いられる
酸化カルシウムは”塩基性の乾燥剤”として用いられる。
塩基性故、酸性気体の乾燥には用いることができない。(中和反応してしまう)
CaO + 2HCl → CaCl_{2} + H_{2}O
\]
※乾燥剤について詳しくは【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照
2族元素の水酸化物(水酸化カルシウム)
②石灰水に二酸化炭素を吹き込むと白く濁る→続けると再び無色に
③鍾乳洞・鍾乳石の生成
①消石灰とも呼ばれる(水溶液は石灰水)
水酸化カルシウムCa(OH)2は消石灰とも呼ばれ、これを水に溶かしてできた水溶液を石灰水と呼ぶ。
②石灰水に二酸化炭素を吹き込むと白く濁る→続けると再び無色に
石灰水に二酸化炭素CO2を通じると、炭酸カルシウムCaCO3の沈殿が生成して白濁する。
Ca(OH)_{2}+CO_{2}→CaCO_{3}↓+H_{2}O
\]
ここでさらにCO2を吹き込むと…
CaCO_{3} + CO_{2} + H_{2}O → Ca(HCO_{3})_{2}
\]
炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2は水に溶けやすいため、沈殿が溶解する。(=白濁が消える)
また、白濁が消えた後、水溶液を加熱すると上記の逆反応が進み、CaCO3の沈殿が生成し、再度白濁する。
Ca(HCO_{3})_{2}→CaCO_{3} + CO_{2} + H_{2}O
\]
これらはCO2の検出反応として用いられる。
※入試頻出の気体の検出反応については気体の検出反応まとめを参照
③鍾乳洞・鍾乳石の生成
鍾乳洞(読み方:しょうにゅうどう)と鍾乳石(読み方:しょうにゅうせき)の生成に水酸化カルシウムは深く関わっている。
サンゴなどの主成分はCaCO3なので海底が隆起してできた地層には石灰岩CaCO3が多く含まれている。
そこにCO2を含んだ地下水が流れ続けると、次のような反応が起きて石灰岩が溶けて洞窟ができる。
これが鍾乳洞である。
CaCO_{3} + CO_{2} + H_{2}O → Ca(HCO_{3})_{2}
\]
このとき、鍾乳洞の上からはCa(HCO3)2を含んだ地下水が滴り落ちている。
また、少量の地下水が蒸発している。
その結果、次の反応が起き、少しずつ鍾乳石や石筍(読み方:せきじゅん)が成長する。
鍾乳洞の上から垂れ下がったものが鍾乳石で、下から突き出しているものが石筍である。
Ca(HCO_{3})_{2}→CaCO_{3} + CO_{2} + H_{2}O
\]
2族元素の塩(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウムCaCO3は石灰石や大理石の成分として有名で、熱分解するとCaOが生成する。(炭酸塩の熱分解については【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説を参照)
CaCO_{3} → CaO + CO_{2}
\]
また、水酸化カルシウムのところでやったように、CaCO3は水に溶けづらい(沈殿になりやすい)ということも把握しておこう。
※沈殿について詳しくは水に難溶なイオン結晶(水酸化物・硫化物・塩化物・硫酸・クロム酸・炭酸イオン)を参照
2族元素の塩(塩化カルシウム)
塩化カルシウムCaCl2は吸湿性・潮解性をもっており、中性の乾燥剤として使用される。(NH3とは反応してしまうためNH3の乾燥には使用不可)
※乾燥剤について詳しくは【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照
硫酸カルシウム
硫酸カルシウムCaSO4の水和物であるCaSO4・2H2Oはセッコウと呼ばれ、これを加熱をすることによって得られる物質CaSO4・1/2H2Oを焼セッコウという。(1/2H2Oが付いている物質のことを”半水和物”という)
CaSO_{4}・2H_{2}O ⇄ CaSO_{4}・1/2H_{2}O + 3/2H_{2}O
\]
また、焼セッコウに水を加えて練ると元の普通のセッコウ(CaSO4・2H2O)に戻るということも併せて覚えておこう。
炭化カルシウム
炭化カルシウムCaC2はカーバイドとも呼ばれ、生石灰CaOにコークスCを混ぜ高温に熱することで製造する。
これに水を加えると、次のように加水分解反応が起こりアセチレンC2H2が発生する。
CaC_{2} + 2H_{2}O → C_{2}H_{2} + Ca(OH)_{2}
\]
※アセチレンについて詳しくは有機化学のアルキン(一般式の作り方・一覧・製法・付加重合・置換反応など)を参照
マグネシウムの還元作用
ここまでカルシウムを中心に説明してきたが、最後にマグネシウムMgの還元作用について紹介しておこう。
マグネシウムは空気中で加熱すると発光を伴って燃焼する。
この反応は花火やフラッシュランプに利用される。
2Mg + O_{2} → 2MgO
\]
また、マグネシウムは二酸化炭素と酸化還元反応を起こし、二酸化炭素を還元する。
2Mg+CO_{2}→2MgO+C
\]
2族元素(アルカリ土類金属)に関する演習問題
炎色反応において、Caは【1】色、Srは【2】色、Baは【3】色を示す。
Mg、Ca、Sr、Baのうち、冷水と反応しないものは【1】である。
Mg、Ca、Sr、Baのうち、SO42-と沈殿を形成しないものは【1】である。
酸化カルシウムは【1】とも言われ、水に溶けて【2】性を示す。また塩基性の【3】剤としても用いられる。
水酸化カルシウムは【1】とも呼ばれ、これを水に溶かしてできた水溶液を【2】と呼ぶ。
石灰水に二酸化炭素CO2を吹き込むと、水に不溶性である【1】が沈殿として溜まってしまうため、水溶液が【2】く濁る。ここで、CO2をさらに吹き込んでいくと、(不溶性で)沈殿になっている【1】が水溶性の【3】になるため濁りが消える。
CaCO3は【1】や大理石の成分として有名で、熱分解すると【2】が生成する。
CaCl2は【1】性・【2】性をもっており、【3】性の乾燥剤として使用される。
CaSO4の水和物であるCaSO4・2H2Oは【1】と呼ばれ、これを加熱をすることによって得られる物質CaSO4・1/2H2Oのことを【2】という。また、【2】は、水を加えて練ると元の【1】に戻る。
炭化カルシウムは【1】とも呼ばれ、生石灰CaOに【2】を混ぜ高温に熱することで製造する。また、炭化カルシウムに水を加えると加水分解反応が起こり【3】が発生する。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細