【プロ講師解説】このページでは『酸化物の反応(金属元素・非金属元素)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
Recipes
前提知識:酸化物について
酸化物の基礎事項をまだ理解できていないという人は初めに酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を見てからこのページを読み進めていこう。
金属元素の酸化物の反応
金属元素の酸化物は全て酸化物イオンO2-を含んでおり、塩基性酸化物に分類される。
この特徴故、金属元素の酸化物はO2-に由来する共通の反応を示す。
OH–がH2OからH+が1コ取れたものと考えられるのと同様、O2-はH2OからH+が2コ取れたものと考えられる。
つまり、O2-はOH–よりもH+が欠乏している状態であり、H+を受け取りやすいことで有名なOH–よりもさらにH+を受け取りやすい。
これを前提知識として、金属元素の酸化物の反応を検討していこう。
金属元素の酸化物と水の反応
金属元素の酸化物を水に加えると、(金属元素の酸化物の多くは水に溶けないが)水に溶けるものの場合は、水中にO2-が溶け出してくる。
O2-はH2Oと比べてH+が2コ少ない状態なので、H2OからH+を奪い、次のようなイオン反応が起こる。
O^{2-}+H_{2}O→OH^{-}+OH^{-}
\]
このように、金属元素の酸化物が水と反応すると、対応する水酸化物が生じる。
以上を踏まえて、金属元素の酸化物と水の反応を表す反応式は次の3STEPで作ることができる。
STEP1 | 酸化物をバラバラにする |
STEP2 | O2-とH2Oを2つのOH–にする |
STEP3 | 2つの式を組み合わせる |
例)酸化カルシウムCaOと水の反応
STEP1
まずは酸化物をバラバラにする。
CaO→Ca^{2+}+O^{2-}
\]
STEP2
次にSTEP1でできたO2-をH2Oと反応させ、2つのOH–をつくる。
O^{2-}+H_{2}O→2OH^{-}
\]
STEP3
最後に、STEP1とSTEP2で作った2つの式を組み合わせる。
両辺に共通しているO2-は消すことができる。
また、右辺のCa2+と2つのOH–は組み合わさってCa(OH)2となる。
金属元素の酸化物と酸の反応
次に金属元素の酸化物と酸の反応を考えていく。
O2-はH+を受け取りやすく、酸はH+を出すので、O2-が酸からH+をもらって次のようなイオン反応が起こる。
O^{2-}+2H^{+}→H_{2}O
\]
このように、金属元素の酸化物が酸と反応すると、水が生じる。
以上を踏まえて、金属元素の酸化物と酸の反応を表す反応式は次の4STEPで作ることができる。
STEP1 | 酸化物をバラバラにする |
STEP2 | O2-と2つのH+をH2Oにする |
STEP3 | 2つの式を組み合わせる |
STEP4 | 足りないイオンを付け加える |
例)酸化カルシウムCaOと塩酸HClの反応
STEP1
まずは酸化物をバラバラにする。
CaO→Ca^{2+}+O^{2-}
\]
STEP2
次にSTEP1でできたO2-を2つのH+と反応させ、H2Oをつくる。
O^{2-}+2H^{+}→H_{2}O
\]
STEP3
次に、STEP1とSTEP2で作った2つの式を組み合わせる。
両辺に共通しているO2-は消すことができる。
STEP4
最後に、足りないイオンを付け加える。
今回はHCl中に存在するCl–が使われていないのでそれを両辺に足す。
非金属元素の酸化物の反応
非金属元素の酸化物は全て、大きく分極した共有結合XOをもち、酸性酸化物に分類される。
この特徴故、非金属元素の酸化物にはXOに由来する共通の反応がある。
非金属元素の酸化物と水の反応
非金属元素の酸化物を水に加えると、大きく分極したXOとH2Oが出会うことになる。
電子はマイナスの電荷をもっており、δ+と引き合うため、水分子は分子中の酸素O原子が有している非共有電子対を頭にして、Xのδ+の部分を攻撃する。結果、水分子が以下のように酸化物にくっつくことになる。


このとき生じるXOHはオキソ酸に特有の構造であり、したがって、非金属の酸化物が水と反応すると、対応するオキソ酸が生じることがわかる。
※オキソ酸について詳しくはオキソ酸(例・酸化力・一覧・強さ・構造・酸化数など)を参照
以上を踏まえると、非金属元素の酸化物と水の反応を表す反応式は次の2STEPで作ることができる。
STEP1 | 酸化物に対応するオキソ酸を考える |
STEP2 | 酸化物と水を反応物、オキソ酸を生成物とし反応式を立てる |
例)二酸化炭素CO2と水の反応
STEP1
非金属元素の酸化物と水を反応させるとオキソ酸が生成するため、まずは酸化物に対応するオキソ酸を考える。
H_{2}CO_{3}
\]
オキソ酸(例・酸化力・一覧・強さ・構造・酸化数など)にあるように、CO2に対応するオキソ酸は炭酸H2CO3である。
STEP2
次に酸化物と水を反応物、オキソ酸を生成物とし反応式を立てる。
CO_{2}+H_{2}O→H_{2}CO_{3}
\]
非金属元素の酸化物と塩基の反応
次に非金属元素の酸化物を塩基に加えた場合を見ていこう。
非金属元素の酸化物を塩基に加えると、XOと(塩基由来の)OH–が出会うことになる。
水分子中の酸素O原子同様、水酸化物イオンもXのδ+の部分を攻撃する力があるため、次のような反応を起こす。(OH–は全体としてマイナスの電荷をもっているので、δ+を攻撃する力は水分子中の酸素O原子と比較して非常に強い)
この過程において、一度生じた構造XOHは、オキソ酸の部分構造でH+を出しやすいため、すぐに別のOH–と反応している。
最終的に生じた物質は、炭酸イオンCO32-や硫酸イオンSO42-といったオキソ酸由来の陰イオンである。
この陰イオンは、溶液中に存在する塩基由来の陽イオンと組み合わさって塩を形成する。つまり、非金属元素の酸化物が塩基と反応すると、対応するオキソ酸の塩と水が生成する。


以上を踏まえて、非金属元素の酸化物と塩基の反応を表す反応式は次の4STEPで作ることができる。
STEP1 | 酸化物に対応するオキソ酸を考える |
STEP2 | 酸化物と塩基を反応物、オキソ酸の塩と水を生成物とし反応式を立てる |
例)二酸化炭素CO2と水酸化カルシウムCa(OH)2の反応
STEP1
非金属の酸化物と水を反応させるとオキソ酸が生成するため、まずは酸化物に対応するオキソ酸を考える。
H_{2}CO_{3}
\]
オキソ酸(例・酸化力・一覧・強さ・構造・酸化数など)にあるように、CO2に対応するオキソ酸は炭酸H2CO3である。
STEP2
次に酸化物と塩基を反応物、オキソ酸の塩と水を生成物とし反応式を立てる。
CO_{2}+Ca(OH)_{2}→CaCO_{3}+H_{2}O
\]
上述の通り、オキソ酸由来の陰イオンCO32-が塩基由来の陽イオンと組み合わさって、オキソ酸の塩である炭酸カルシウムCaCO3が生じている。
関連:無機のドリルが、できました。
無機化学の問題演習を行うための"ドリル"ができました。解答・解説編には大学入試頻出事項が網羅的にまとまっています。詳細は【公式】無機化学ドリルにて!

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細