鉛蓄電池(仕組み・反応式・充電・計算問題の解き方など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『鉛蓄電池(仕組み・反応式・充電・計算問題の解き方など)』について解説しています。


鉛蓄電池とは

  • 鉛Pbと酸化鉛(Ⅳ)PbO2を希硫酸H2SO4に浸してできる電池を鉛蓄電池という。
  • 鉛蓄電池の起電力は約2.1Vである。

鉛蓄電池の電池式

  • 先述の通り、鉛蓄電池とは、鉛Pbと酸化鉛(Ⅳ)PbO2を希硫酸H2SO4に浸してできる電池である。
  • これを踏まえて、鉛蓄電池の電池式は次のように表すことができる。

\[ \mathrm{(-)Pb|H_{2}SO_{4}aq|PbO_{2}(+) }\]


鉛蓄電池の仕組み

  • 鉛蓄電池の仕組みについて、正極と負極に分けて解説する。

負極

Pb→Pb2+
PbO2→Pb4+

  • Pb2+とPb4+は同じ「鉛」がイオンとなったものではあるが、その「安定性」に少し差がある。

【安定性】Pb2+>Pb4+

  • Pb2+とPb4+の安定性を比べると、Pb2+の方がより安定である。
  • したがって、(イオンがより安定な方が溶けてイオンになりやすいので)鉛蓄電池で先に溶け出す極板、つまり負極は「Pb板」ということになる。
  • ここからは、次の3STEPにしたがって負極における反応の流れを解説する。

●STEP1
Pb板が溶ける(Pb → Pb2+ + 2e
●STEP2
電子eがPbO2板の方へと移動する
●STEP3
STEP1で発生したPb2+は溶液中のSO42ーとくっつく
→ PbSO4ができる

STEP
Pb板が溶ける(Pb → Pb2+ + 2e

まず、イオン化傾向の大きいPb板が溶け出す。

STEP
電子eがPbO2板の方へと移動する

STEP1でPb板が溶け出すことによって発生したeが、正極であるPbO2板の方へと移動する。

STEP
STEP1で発生したPb2+は溶液中のSO42ーとくっつく
→ PbSO4ができる

STEP1で発生したPb2+は、希H2SO4水溶液中の硫酸イオンSO42ーとくっつき「PbSO4」が生成する。

正極

●STEP1
負極から流れてきたeをPbO2板が受け取る
→ Pb2+ができる
●STEP2
STEP1で発生したPb2+は溶液中のSO42ーとくっつく
→ PbSO4ができる

STEP
負極から流れてきたeをPbO2板が受け取る
→ Pb2+ができる

Pb板から流れてきたeがPbO2板まで到達すると、PbO2板を構成しているPb4+がこれを受け取る。

eを受け取ったPb4+はPb2+となる。

STEP
STEP1で発生したPb2+は溶液中のSO42ーとくっつく
→ PbSO4ができる

STEP1で発生したPb2+が、希H2SO4水溶液中の硫酸イオンSO42ーとくっつき「PbSO4」が生成する。


各極の反応

  • 鉛蓄電池の負極・正極での反応をそれぞれまとめる。

負極

  • 鉛蓄電池の負極では、Pb板が溶けてPb2+が発生する。

\[ \mathrm{Pb → Pb^{2+} + 2e^{-}} \]

  • Pb2+は溶液中のSO42ーと反応するので、両辺にSO42ーを足すと…

\[ \mathrm{Pb + SO_{4}^{2-} → PbSO_{4} + 2e^{-}} \]

  • これが、鉛蓄電池の負極の反応式である。

正極

  • 鉛蓄電池の正極では、PbO2板が、負極から流れてきたeを受け取る。

\[ \mathrm{PbO_{2} + 4H^{+} + 2e^{-} → Pb^{2+} + 2H_{2}O} \]

  • 負極同様、Pb2+は溶液中のSO42ーと反応するため、両辺にSO42ーを足すと…

\[ \mathrm{PbO_{2} + 4H^{+} + SO_{4}^{2-} + 2e^{-} → PbSO_{4} + 2H_{2}O} \]

  • これが、鉛蓄電池の正極の反応式である。

全体

  • 最後に、負極・正極の反応式を使って、鉛蓄電池全体の反応式をつくる。
  • 負極・正極の反応式と併せて覚えておこう。

鉛蓄電池は2次電池

  • 電子を負極から正極に流して電流を発生させることを放電、それとは逆向きに電子を流すことを充電という。
  • また、充電を行って繰り返し使用できる電池を二次電池、1回しか使うことができない電池を一次電池という。
  • 鉛蓄電池は「二次電池」なので充電可能である。

鉛蓄電池の計算問題

  • 鉛蓄電池に関する計算問題は入試でもよく出題される。基本的にワンパターンなので解き方を覚えてしまおう。
  • 問題を解く前に、”前準備”として鉛蓄電池の「負極・正極における質量の変化」について確認する。
  • 鉛蓄電池の負極・正極での反応式を見ると、負極では「SO4分」、正極では「SO2分」の質量が増加していることが分かる。したがって、(どちらの式もeの係数が2なので)e2molあたり、負極では96g、正極では64g、質量が増加する。
  • このことを踏まえて、次の例題を解いてみよう。
問題

鉛蓄電池を20秒間放電したところ、平均して2.0Aの電流が流れた。
このとき、次の問いに答えなさい。
ただし、電解液は30%の希H2SO4200ml(密度:1.25g/ml)とする。

(1)両極での反応を、eを含むイオン反応式で書け。
(2)最初と比べて、放電後のPbO2の質量は何g増加したか。(有効数字2桁で解答、ファラデー定数F=9.65×104(C/mol))
(3)この鉛蓄電池を充電する場合、外部電源の負極はPbとPbO2のどちらにつなげば良いか。

(1)

負極

\[ \mathrm{Pb + SO_{4}^{2-} → PbSO_{4} + 2e^{-}} \]

正極

\[ \mathrm{PbO_{2} + 4H^{+} + SO_{4}^{2-} + 2e^{-} → PbSO_{4} + 2H_{2}O} \]

(2)

  • まずは、電子eのmolを求める。

\[ \begin{align} \mathrm{e^{-}(mol)}&=\mathrm{\frac{ 2.0(A)×20(秒) }{ 9.65×10^{4}(C/mol) }}\\
&\mathrm{≒4.15×10^{-4}}\end{align} \]

  • 前準備として説明したように、反応の前後で正極の質量を比較すると、次のようになる。
  • これは、電子が2molのときの話なので、今回の数値で求めていく。
  • 比を用いてxを求めると、次のようになる。

\[ 2:64=4.15×10^{-4}:x \\
\leftrightarrow x≒1.3×10^{-2}(g) \]

(3)

  • 充電するときは、外部電源の負極は電池の負極に、正極は正極につなぐ。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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