【プロ講師解説】このページでは『リンの単体と化合物の性質・製法』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
リンの単体
リンの単体には黄リンP4と赤リンPの2種類が存在する。
これら2つは、同じリン元素からできているため同素体の関係にあるが、様々な点で違いがある。
黄リン | 赤リン | |
---|---|---|
化学式 | P4 | P |
構造 | ![]() ![]() 正四面体 |
![]() ![]() ![]() 無定形 |
毒性 | あり | なし |
CS2に | 溶ける | 溶けない |
その他特徴 | 自然発火するため水中に保存 真空中で加熱すると赤リンに |
マッチの箱の横に付いているヤツ |
黄リンはP原子4つから成り立っているので分子式P4で表すのに対し、赤リンは無数のPが集まってできているので組成式Pで表す。また、毒性についても決定的な違いがあり、黄リンは毒性を示すが、赤リンは示さない。
黄リンP4は無極性分子なので極性溶媒の水には溶けないが、無極性溶媒の二硫化炭素CS2には溶ける。(沈殿生成反応の仕組みと沈殿生成反応式の作り方を参照)
一方、赤リンPは無定形分子であり、CS2にも溶けない。
リンの酸化物(十酸化四リン)
黄リンや赤リンを空気中で燃焼させると、白色粉末の酸化物が生成する。これが十酸化四リンP4O10である。
十酸化四リンは潮解性があり吸湿性が極めて高いため、酸性の乾燥剤として用いられる。
※乾燥剤について詳しくは【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照
リンのオキソ酸(リン酸)
リンを含むオキソ酸として有名なのはリン酸H3PO4である。
リン酸は、十酸化四リンに水を加えて加熱すると生じる。
P_{4}O_{10} + 6H_{2}O \overset{加熱}{→} 4H_{3}PO_{4}
\]
リンの塩(リン酸カルシウム/リン酸水素カルシウム/リン酸二水素カルシウム)
リン酸イオン PO43- |
リン酸水素イオン HPO42- |
リン酸二水素イオン H2PO4– |
|
---|---|---|---|
Ca2+ | リン酸カルシウム Ca3(PO4)2 |
リン酸水素カルシウム CaHPO4 |
リン酸二水素カルシウム Ca(H2PO4)2 |
リン酸を含む塩で有名なのはこの3つ。
リン酸カルシウムCa3(PO4)2は骨や歯の主成分で、リン酸二水素カルシウムCa(H2PO4)2はCaSO4と混合して肥料などに用いられる。
また、Ca(H2PO4)2とCaSO4の混合物は過リン酸石灰と呼ばれ、これを作る反応式は以下の通り。
Ca_{3}(PO_{4})_{2} + 2H_{2}SO_{4} → Ca(H_{2}PO_{4})_{2} + 2CaSO_{4}
\]
リンに関する演習問題
問1
【】に当てはまる用語を答えよ。
リンの同素体には【1】と【2】の2種類が存在し、【1】は分子式P4、【2】は組成式Pで表される。
問2
【】に当てはまる用語を答えよ。
黄リンと赤リンのうち、毒性をもつのは【1】である。
問3
【】に当てはまる用語を答えよ。
黄リンは自然発火する可能性があるため【1】中に保存する。
問4
【】に当てはまる用語を答えよ。
黄リンは【1】中で加熱すると赤リンになる。
問5
【】に当てはまる用語を答えよ。
黄リンや赤リンを空気中で燃焼させると【1】の白色粉末が生成する。【1】は潮解性があり吸湿性が極めて高いため、【2】性の【3】として用いられる。
問6
【】に当てはまる用語を答えよ。
十酸化四リンP4O10に水を加えて加熱すると【1】が生成する。
問7
【】に当てはまる用語を答えよ。
リン酸を含む塩のうち、【1】は骨や歯の主成分で、【2】はCaSO4と混合して【3】とし、肥料などに用いられる。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細