【高校】ミカエリス・メンテン式を攻略!酵素反応速度論/ミカエリス定数の導出など

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はじめに

【プロ講師解説】このページでは『【高校】ミカエリス・メンテン式を攻略!酵素反応速度論/ミカエリス定数の導出など』について解説しています。


反応速度

  • これに基づいて、酵素反応の速度式を導く。
  • 酵素(E)、基質(S)、酵素-基質複合体(ES)、生成物(P)が絡む各反応の速度定数をk1、k-1、k2とする。

\[ \begin{align}&\mathrm{E + S} \underset{k_{-1}}{\overset{k_{1}}{\rightleftarrows}} \mathrm{ES・・・①}\\
&\mathrm{ES} \overset{k_{2}}{\rightarrow} \mathrm{E + P・・・②} \end{align}\]

  • 酵素(E)、基質(S)、酵素-基質複合体(ES)、生成物(P)の濃度をそれぞれ[E]、[S]、[ES]、[P]とする。
  • ①におけるESの生成速度v1は次のようになる。

\[v_{1}=k_{1}\mathrm{[E][S]} \]

  • ①におけるESの分解速度v-1は次のようになる。

\[ v_{-1}=k_{-1}\mathrm{[ES]} \]

  • ②におけるESの分解速度v2は次のようになる。

\[ v_{2}=k_{2}\mathrm{[ES]} \]

  • よってESの分解の合計速度v3は次のようになる。

\[ v_{3}=v_{-1}+v_{2}=k_{-1}\mathrm{[ES]}+k_{2}\mathrm{[ES]}=(k_{-1}+k_{2})\mathrm{[ES]} \]

  • 「酵素」には基質と結合していない状態のEと結合している状態のESがあるから全酵素濃度を[E_{T}]とすると、次のようになる。

\[\mathrm{ [E_{T}]=[E]+[ES]・・・③ }\]

  • 多くの酵素反応では①の平衡には瞬時に達する(単純にくっつくか離れるかだけの話なので)。
  • 一方、②の反応は①に比べてかなり遅く、いわゆる律速段階となる。

律速段階とは、反応が複数の段階を経て進むとき、その中で最も反応速度が遅い段階のことです。この段階の反応速度によって全体の反応速度が決まります(=速度が律せられます)。

  • 通常、酵素反応は[E]<<[S]の条件で行う(触媒である酵素Eは少量で良い)ため、ESがE+Pに変化してもEは瞬時に過剰のSと反応してESとなる。
  • したがって、Sが過剰のとき、[ES]は一定となる(定常状態:ESの生成と分解がつり合う状態)。
  • このとき、v1=v3なので…

\[ k_{1}\mathrm{[E][S]}=(k_{-1}+k_{2})\mathrm{[ES]・・・④} \]

  • ③と④から[E]を消去して、[ES]について解く。④より…

\[\mathrm{ [E]=}\frac{ (k_{-1}+k_{2})\mathrm{[ES]} }{ k_{1}\mathrm{[S]} } \]

  • これを③に代入すると次のようになる。

\[ \begin{align}
\mathrm{[E_{T}]}&=\frac{ (k_{-1}+k_{2})\mathrm{[ES]} }{ k_{1}\mathrm{[S]} }+\mathrm{[ES]} \\
&=\Biggl( \frac{ k_{-1}+k_{2}\mathrm{[ES]} }{ k_{1}\mathrm{[S]} }+1\mathrm{[ES]} \Biggr) \\
&=\frac{ k_{-1}+k_{2}+k_{1}\mathrm{[S]} }{ k_{1}\mathrm{[S]} }\mathrm{[ES]}
\end{align} \]

  • よって…

\[ \begin{align}
\mathrm{[ES]}&=\frac{ k_{1}\mathrm{[S][E_{T}]} }{ k_{-1}+k_{2}+k_{1}\mathrm{[S]} } \\
&= \frac{ \mathrm{[S][E_{T}]} }{ \frac{ k_{-1}+k_{2} }{ k_{1} }+\mathrm{[S]} }\\
&=\frac{\mathrm{ [S][E_{T}] }}{ K_{m}+\mathrm{[S]} }\Biggl(ミカエリス定数K_{m=} \frac{ k_{-1}+k_{2} }{ k_{1} } \Biggr)
\end{align} \]

  • 以上より、Pの生成速度v2は次のようになる。

\[ v_{2}=k_{2}\mathrm{[ES]}=\frac{ k_{2}\mathrm{[S][E_{T}]} }{ K_{m}+\mathrm{[S]} } \]

  • また、[E]<<[S]のとき、全ての酵素Eが基質Sと結合し、酵素-基質複合体ESをつくっている。つまり、すべての酵素EがPの生成に関与している。
  • このとき、[ES]=[ET]が成立し、生成物Pの生成速度は最大値vmaxになる。
  • よって、v2=k2[ES] より…

\[ \begin{align}v_{max}&=k_{2}\mathrm{[E_{T}]}\\
\therefore v_{2}&=\frac{ k_{2}\mathrm{[S][E_{T}]} }{ K_{m}+\mathrm{[S]} }\\
&=\frac{ v_{max}\mathrm{[S]} }{ K_{m}+\mathrm{[S]} } (ミカエリス・メンテンの式)
\end{align} \]

  • これがミカエリス・メンテン式である。
  • 以下、ミカエリス・メンテンの式及びミカエリス定数についてさらに詳しく解説する。

[S]がKmよりも十分に小さいとき

  • [S]<<KmよりKm+[S]≒Kmなので…

\[ \begin{align} v_{2}&=\frac{ v_{max}\mathrm{[S]} }{ K_{m}+\mathrm{[S]} }\\
&≒\frac{ v_{max} }{ K_{m} }\mathrm{[S]}
\end{align} \]

  • よって、v2は[S]に比例する。

[S]がKmよりも十分に大きいとき

  • [S]>>KmよりKm+[S]≒[S]なので…

\[ \begin{align} v_{2}&=\frac{ v_{max}\mathrm{[S]} }{ K_{m}+\mathrm{[S]} }\\
&≒\frac{ v_{max}\mathrm{[S]} }{\mathrm{ [S]} }\\
&=v_{max}
\end{align} \]

  • よって、v2は[S]によらず一定(最大値)となる。

[S]=Kmのとき

\[ \begin{align} v_{2}&=\frac{ v_{max}\mathrm{[S]} }{ K_{m}+\mathrm{[S]} }\\
&≒\frac{ v_{max}K_{m} }{ K_{m}+K_{m} }\\
&=\frac{ v_{max} }{ 2 }
\end{align} \]

  • 普通k2はk1、k-1よりも十分小さいから…

\[ \begin{align} K_{m}&=\frac{ k_{-1}+k_{2} }{ k_{1} }\\
&≒\frac{ k_{-1} }{ k_{1} }
\end{align} \]

  • 一方…

\[ \mathrm{E + S} \underset{k_{-1}}{\overset{k_{1}}{\rightleftarrows}} \mathrm{ES} \]

  • 上式において、ESの解離平衡定数をKsとすると…

\[ \begin{align} K_{s}&=\frac{\mathrm{ [E][S]} }{\mathrm{ [ES]} }\\
&≒\frac{ k_{-1} }{ k_{1} }(\because v_{1}=v_{-1}よりk_{1}\mathrm{[E][S]}=k_{-1}\mathrm{[ES]})
\end{align} \]

  • よって…

\[ K_{m}≒K_{s} \]

  • 最後の式(Km≒Ks)から分かるのは、ミカエリス定数Kmの大きさと複合体ESの解離しやすさは一致するということである。
  • 複合体ESが酵素Eと基質Sに解離してしまうと、その分生成物Pが生じなくなる。つまり、ミカエリス定数Kmの大きさは酵素の触媒能力の指標になる。
  • 結論、Kmが小さいほど基質Sとの親和性が高く、触媒能力が高い酵素であるということである。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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