【プロ講師解説】このページでは『アルコール・エーテル(一覧・違い・命名法・製法・反応・性質など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
Recipes
アルコールとは
アルコールとは炭化水素のHをヒドロキシ基-OHで置換した化合物である。
アルコール一覧
価数 | 名称 | 構造式 |
---|---|---|
1 | メタノール | CH3OH |
エタノール | CH3CH2OH | |
1-プロパノール | CH3CH2CH2OH | |
2-プロパノール | ![]() ![]() |
|
2 | エチレングリコール(慣用名) | HO-CH2-CH2-OH |
3 | グリセリン(慣用名) | ![]() ![]() |
高校化学で頻出のアルコールは上の通り。
命名法についてはこれ以降で解説していく。
アルコールの命名法
STEP1 | 主鎖の炭素数を見て、ベースとなるアルカン名を決定する |
STEP2 | アルカン名の語尾を「アン(ane)」から「オール(ol)」にかえ、先頭にヒドロキシ基が付いている炭素の番号を書く |
STEP3 | ヒドロキシ基の他に官能基が付いている場合は、官能基名と官能基が付いている炭素の番号をアルカン名の前に書く |
アルコールの命名法は上の通り。
今回は次の2つのアルコールを例に説明していこう。
STEP1
まずは、主鎖の炭素数を見て、ベースとなるアルカン名を決定する。
①は主鎖の炭素数が4つなのでブタン、②は3つなのでプロパンである。
※アルカン名について詳しくはアルカン(一般式の作り方・一覧・命名法・製法・性質・置換反応など)を参照
STEP2
次に、アルカン名の語尾を「アン(ane)」から「オール(ol)」にかえ、先頭にヒドロキシ基が付いている炭素の番号を書く。
①は1番の炭素にOHが付いているので「1-ブタノール」、②は2番の炭素にOHが付いているので「2-プロパノール」となる。
ちなみに、①はヒドロキシ基以外の官能基がないので次の3STEPをする必要がなく、ここで完成となる。
STEP3
最後に、ヒドロキシ基の他に官能基が付いている場合は、官能基名と官能基が付いている炭素の番号をアルカン名の前に書く。
先ほど述べたように、①はヒドロキシ基以外の官能基が付いていないのでもう何もする必要がない。
②は2番目の炭素にメチル基が付いているのでSTEP2で作った「2-プロパノール」の名称の前に「2-メチル」を付けて「2-メチル-2-プロパノール」としよう。
命名法まとめ
アルコールの性質
・分子間で水素結合を形成するため(異性体のエーテルと比べて)沸点が高い
アルコールは親水基(水と親和性が高い官能基)であるヒドロキシ基をもつため、炭素数が1コ〜3コくらいまでだと水によく溶ける。(炭素数があまりに多いと炭素に対する親水基の割合が下がり溶けづらくなる)
また、ヒドロキシ基のOと、近くのヒドロキシ基のHが水素結合を形成することにより分子間の結合が強固になっており、それ故アルコールの沸点は異性体であるエーテルと比較して高くなっている。(エーテルはOに付いたHが存在しないため水素結合を形成することができない。水素結合について詳しくは分子間力(水素結合・ファンデルワールス力・沸点のグラフなど)を参照)
アルコールの価数
アルコールの価数とは、分子内に存在するヒドロキシ基(-OH)の数である。
アルコールの級数
アルコールの級数とは、ヒドロキシ基(-OH)が結合した炭素に付いている炭素の数である。
炭素が1コの場合は第一級アルコール、2コの場合は第二級アルコール、3コの場合は第三級アルコールという。
アルコールの製法
アルコールの製法として知っておくべきは以下の3つである。
・メタノールの工業的製法
・エタノールの工業的製法
アルケンの水H2O付加



アルケン(一般式の作り方・一覧・命名法・製法・付加反応など)でやったように、アルケンに水H2Oを付加させることでアルコールが生成する。
メタノールの工業的製法
一酸化炭素COと水素H2を反応させることでメタノールが発生する。
CO + 2H_{2} → CH_{3}OH
\]
エタノールの工業的製法
エタノールはグルコースC6H12O6を発酵させることで発生する。
C_{6}H_{12}O_{6} → 2C_{2}H_{5}OH + 2CO_{2}
\]
アルコールの反応①(ナトリウムNaとの反応)
アルコール(のヒドロキシ基)はアルカリ金属であるナトリウムNaと反応しナトリウムアルコキシドとなる。
R-OH + Na → R-ONa + 1/2H_{2}
\]
このとき水素が発生するので、この反応はヒドロキシ基(-OH)の検出反応として用いられる。(=異性体であるエーテルとの区別)
具体的な反応例としてエタノールC2H5OHとナトリウムNaの反応を確認しておこう。
2C_{2}H_{5}OH + 2Na → 2C_{2}H_{5}ONa + H_{2}
\]
この反応ではナトリウムアルコキシドの一種であるナトリウムエトキシドが生成している。
アルコールの反応②(脱水反応)


脱水作用をもつ濃硫酸H2SO4を触媒としてアルコールを加熱脱水すると、アルケンが生成する。
例として「エタノールの脱水によるエチレンの生成反応」を確認しよう。
この反応はアルケンの製法として有名なのでしっかり押さえておこう。
PLUS+.1
この脱水反応を考える際はザイツェフ則というルールを考慮する必要がある。
2-ブタノール中のヒドロキシ基が付いている炭素(C2)の右の炭素にはHが3つ、左の炭素にはHが2つ付いている。
このような場合、濃H2SO4で脱水しようとすると、ザイツェフ則に基づき、ヒドロキシ基と共に、より付いているHが少ない左側のCからHが引き抜かれる。
その結果、主生成物は2-ブテン(C-C=C-C)となる。
また、2-ブテンにはシストランス異性体が存在するため、生成物は全部で3つになるということも把握しておこう。
PLUS+.2
温度の違いにより、脱水した際の主生成物が異なる場合がある。
例として「エタノールC2H5OHの脱水」を確認しておこう。
低温だと今までやってきたような”分子内”脱水は起こらず、”分子間”での脱水が起こり、2つのアルコールが繫がって「エーテル」が生じる。(エーテルに関しては後述)
アルコールの反応③(酸化反応)
アルコールの酸化反応は硫酸酸性過マンガン酸カリウムKMnO4水溶液か硫酸酸性二クロム酸カリウムK2Cr2O7水溶液を試薬として用いて行われる。
第1級アルコールの酸化



第1級アルコールを酸化すると、一段階目でアルデヒドが、二段階目でカルボン酸が生成する。
第2級アルコールの酸化



第2級アルコールを酸化すると、ケトンが生成する。
2-プロパノールを酸化して生じるアセトンという物質は有機関連の実験を行う際によく用いられる大切なものなのでよく覚えておこう。
第3級アルコールの酸化


第3級アルコールは(Hをもたないため)酸化されづらい。
エーテルとは
エーテルとはエーテル結合(R-O-R‘)をもつ化合物である。
エーテルは、アルコールと「原子の種類とその数」が一緒であるためアルコールの異性体として知られている。
エーテルの命名法
STEP1 | エーテル結合の両サイドの炭化水素基を確認する |
STEP2 | アルファベットの若い順に官能基名をつける。また、2つの官能基名が同じ場合は官能基名の前に「ジ」をつける |
エーテルの命名法は上の通り。今回は次の2つの物質の例に説明していこう。
STEP1
まず、エーテル結合の両サイドの炭化水素基を確認する。
(1)は左側の官能基がエチル基、右側がメチル基、(2)は両側ともエチル基である。
STEP2
次に、アルファベットの若い順に官能基名をつける。また、2つの官能基名が同じ場合は官能基名の前に「ジ」をつける。
(1)は”エーテル”の前に2つの官能基をアルファベット順につけて「エチルメチルエーテル」、(2)はエチル基が2つなのでジエチルエーテルとする。
エーテルの反応
エーテルは(異性体であるアルコールと比べて)反応性が極めて低い。
したがって、アルコールの反応として扱った脱水反応や酸化反応がほとんど起こらない。
アルコール・エーテルに関する演習問題
炭化水素のHをヒドロキシ基-OHで置換した化合物を【1】という。
アルコール分子内に存在するヒドロキシ基-OHの数をアルコールの【1】という。
ヒドロキシ基-OHが付いている炭素に繋がっている炭素の数をアルコールの【1】という。
アルコールはアルケンに【1】を付加させることで生成する。
一酸化炭素COと水素H2を反応させることで【1】が生成する。
グルコースC6H12O6を発酵させると【1】が生成する。
アルコールは親水基(水と親和性が高い官能基)である【1】基をもつため、炭素数が1コ〜3コくらいまでだと水によく溶ける。また、【1】基のOと、近くの【1】基のHが【2】結合を形成することにより分子間の結合が強固になっており、それ故、異性体であるエーテルと比較してアルコールの沸点は【3(高or低)】くなっている。
アルコールはアルカリ金属であるナトリウムNaと反応し【1】となる。このとき、【2】が発生するのでこの反応はヒドロキシ基(-OH)の検出反応として用いられる。
脱水作用をもつ【1】を触媒としてアルコールを加熱脱水すると、【2】が生成する。
2-ブタノールを加熱脱水した場合、主生成物となるのは【1】である。
エタノールC2H5OHを加熱脱水する場合、160℃以上だと【1】が、130〜140℃だと【2】が生成する。
アルコールの【1(酸化or還元)】反応は硫酸酸性KMnO4か硫酸酸性K2Cr2O7を試薬として用いて行われる。
第1級アルコールを酸化すると、一段階目で【1】が、二段階目で【2】が生成する。
第2級アルコールを酸化すると、【1】が生成する。
エーテル結合(R-O-R‘)をもつ化合物を【1】という。
エーテルはアルコールと「原子の種類とその数」が一緒であるため、アルコールの【1】と考えることができる。
エーテルは(異性体であるアルコールと比べて)反応性が極めて【1(高or低)】い。
関連:有機のドリルが、できました。
有機化学の問題演習を行うための"ドリル"ができました。解答・解説編には大学入試頻出事項が網羅的にまとまっています。詳細は【公式】有機化学ドリルにて!

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細