【プロ講師解説】このページでは『鉄の単体・化合物の性質や特徴・製法・イオンの色など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
鉄の単体
②不動態を形成
①イオン化傾向が大きい
鉄の単体は、水素H2よりもイオン化傾向が大きく、希酸(塩酸や希硫酸など)と反応してH2を発生する。
※イオン化傾向について詳しくはイオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)を参照
②不動態を形成
鉄の単体は、濃硝酸NHO3と反応して不動態を形成する。
ちなみに、鉄の他にもニッケルNi・アルミニウムAl・クロムCr・コバルトCoなどの金属も不動態を形成する。
※不動態について詳しくは不動態(覚え方・ゴロ・原理など)を参照
鉄のイオン
鉄イオンには、鉄(Ⅱ)イオンFe2+と鉄(Ⅲ)イオンFe3+の2種類が存在する。
これら2つは、イオン自体の色や各種物質と反応させたときの沈殿物の色に特徴があり、下に書いてあるものは全て知っておく必要がある。
すぐに全部は覚えられないかも知れないが、色を答えさせる問題は出題者側としては非常に出しやすい問題なだけにテストでの出題率は比較的高め。定期試験や受験までには必ず覚えておくようにしよう。
鉄(Ⅱ)イオンFe2+ | 鉄(Ⅲ)イオンFe3+ | |
---|---|---|
色 | 淡緑色 | 黄褐色 |
OH–を加える | Fe(OH)2(緑白↓) | Fe(OH)3(赤褐↓) |
酸化剤を加える | 黄褐色へ | 変化なし |
チオシアン酸カリウムKSCNを加える | 変化なし | 血赤色溶液 |
ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウムK3[Fe(CN)6]を加える | 濃青色↓ | (赤褐色液) |
ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムK4[Fe(CN)6]を加える | (青白色沈殿) | 濃青色↓ |
※無機化学で出てくるイオンや沈殿の色について詳しくは無機化学の色まとめ(イオン/化合物(沈殿)/ハロゲンなど)を参照
鉄の酸化物
四酸化三鉄 Fe3O4
酸化鉄(Ⅲ) Fe2O3
鉄の酸化物には酸化鉄(Ⅱ)FeO・四酸化三鉄Fe3O4・酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3の3種類が存在する。
鉄が酸化したものはサビなので、鉄の酸化物(FeO・Fe3O4)は基本黒色(黒サビと呼ばれる)。
さらに酸化が進むとFe2O3のように赤色になってくる(赤サビと呼ばれる)。
また、Fe3O4はアンモニアの工業的製法であるハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)の触媒として用いられる。
※ハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)について詳しくはハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)の原理・反応式・高温高圧下の理由などを参照
鉄の製法
鉄は、鉄鉱石(主成分:Fe2O3)・コークスC・石灰石CaCO3を原料にして作られる。
※鉄の(工業的)製法について詳しくは鉄の工業的製法(手順・反応式・銑鉄・スラグ・鋼など)を参照
鉄のメッキ
トタン(Fe+Zn)
鉄のメッキで知っておかなければいけないのはブリキとトタンの2種類。
※メッキについて詳しくは【鉄メッキ】ブリキとトタン(違い・イオン化傾向に基づく錆びやすさの理由など)を参照
鉄に関する演習問題
鉄の単体は水素H2よりもイオン化傾向が【1(大きor小さ)】く、希酸(塩酸や希硫酸など)と反応して【2】を発生する。
鉄の単体は、濃硝酸HNO3と反応して【1】を形成する。
鉄の酸化物のうち、【1】は鉄の単体が燃えたり錆びたりすると生じる赤褐色の酸化物で、一般的に”赤さび”と呼ばれる。また、【2】はアンモニアの工業的製法である【3】の触媒として用いられ、色が黒いため一般に”黒さび”と呼ばれる。
鉄は【1】(主成分:Fe2O3)・コークスC・石灰石CaCO3を原料にして作られる。
鉄(Fe)の表面を亜鉛(Zn)で覆ったものを【1】という。
鉄(Fe)の表面をスズ(Sn)で覆ったものを【1】という。
関連:無機のドリルが、できました。
無機化学の問題演習を行うための"ドリル"ができました。解答・解説編には大学入試頻出事項が網羅的にまとまっています。詳細は【公式】無機化学ドリルにて!

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細