鉄の工業的製法(手順・反応式・銑鉄・スラグ・鋼など)

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はじめに

【プロ講師解説】このページでは『鉄の工業的製法(手順・反応式・銑鉄・スラグ・鋼など)』について解説しています。


鉄の工業的製法

  • 鉄Feの工業的製法は次の手順で考える。

●STEP1
溶鉱炉で鉄鉱石(主成分:Fe2O3)・コークスC・石灰石CaCO3に熱風を吹き込み、銑鉄を得る。
●STEP2
転炉で融解した銑鉄に酸素O2を吹き込み、鋼を得る。

STEP
溶鉱炉で鉄鉱石(主成分:Fe2O3)・コークスC・石灰石CaCO3に熱風を吹き込み、銑鉄を得る。

まず、溶鉱炉(高炉)に鉄鉱石(主成分:Fe2O3)・コークスC・石灰石CaCO3を入れ、熱風を吹き込む。

熱風によりCaCO3の熱分解及びCの燃焼が起こり、二酸化炭素CO2が生じる。

\[ \begin{align}&\mathrm{CaCO_{3}→CaO+CO_{2}}\\
&\mathrm{C+O_{2}→CO_{2}} \end{align}\]

このCO2をコークスの存在下で加熱すると、一酸化炭素COになる。

\[ \mathrm{C+CO_{2}→2CO} \]

COにより、Fe2O3が段階的に還元されて銑鉄(Fe)となる。

\[ \begin{align}&\mathrm{3Fe_{2}O_{3}+CO→2Fe_{3}O_{4}+CO_{2}}\\
&\mathrm{Fe_{3}O_{4}+CO→3FeO+CO_{2}}\\
&\mathrm{FeO+CO→Fe+CO_{2}} \end{align}\]

ちなみに、STEP1の全体の反応式は次の通りである。

\[ \mathrm{Fe_{2}O_{3}+3CO→2Fe+3CO_{2}} \]

銑鉄は炭素を多く含み(C>2%)、硬くてもろいという性質がある。

なお、不純物として鉄鉱石に含まれていたSiO2やAl2O3は、石灰石の熱分解で生じたCaOと反応し、CaSiO3やCa(AlO2)2に変化する。これをスラグという。

STEP
転炉で融解した銑鉄に酸素O2を吹き込み、鋼を得る。

次に、転炉で融解した銑鉄に酸素O2を吹き込むことでを得る。

鋼は(銑鉄と異なり)炭素をほとんど含んでおらず(0.02%<C<2%)、粘り気があって硬いという性質をもつ。

間接還元と直接還元

  • 先述のように、鉄鉱石(主成分:Fe2O3)を、コークスCから生じる一酸化炭素COにより還元することを間接還元という。
  • 一方、鉄鉱石の一部は高温のコークスCに触れて直接的に還元される。これを直接還元という。

\[ \mathrm{Fe_{2}O_{3}+3C→2Fe+3CO} \]

水素還元

  • 近年、鉄の工業的製法として水素還元という技術が注目されている。
  • 水素還元では、溶鉱炉(高炉)に鉄鉱石(主成分:Fe2O3)をいれ、これを水素により還元する。

\[ \mathrm{Fe_{2}O_{3}+3H_{2}→2Fe+3H_{2}O} \]

  • 先述の通り、コークスCを使った鉄鉱石の還元では二酸化炭素CO2が生じる。水素還元ではCO2の代わりにH2Oが生じるため、 CO2排出量を抑えることができ、環境への影響を軽減できる可能性がある。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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