【プロ講師解説】このページでは『鉄メッキ(ブリキとトタンの違い・イオン化傾向に基づく錆びやすさの理由など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
鉄の腐食
鉄板に水が付着しているとする。
空気中から水に溶けた酸素が鉄から電子を奪い、鉄はイオンとなる。(鉄が溶けていく)
この酸化還元反応が、電池のように鉄板上の異なった位置で起こり、鉄の腐食は進んでいく。
鉄メッキの分類
トタン
鉄の表面に亜鉛メッキを施したもの
(例:屋根など)
ブリキ
鉄の表面にスズメッキを施したもの
(例:おもちゃ・缶詰など)
メッキは、鉄の防御力を高め、腐食を防ぐために施すものである。
鉄メッキの中で、高校生が知っておかなければいけないのは、ブリキとトタンの2種類。
ブリキは鉄の表面をスズSnで覆ったもので、鉄で作られたおもちゃや缶詰の加工などに用いられる。
一方、トタンは鉄の表面を亜鉛Znで覆ったもので、鉄の板で作られた屋根の加工などに用いられる。
トタンめっきの仕組み
繰り返すが、トタンは鉄Feの表面を亜鉛Znで覆ったものである。
トタンは主に屋根に”トタン屋根”として用いられているので、(外の雨風に晒され)傷がつくことが多い。
傷ついた部分に雨水などの水滴が付くと…
FeとZnのイオン化傾向を比較すると、Znの方が大きい。
したがって、Znが優先的に溶け出して亜鉛イオンZn2+となる。
その結果、鉄がイオンになって溶ける(=腐食する)のを防ぐことができる。(Znが溶けることによって生じた電子e–は水に溶けたO2が受け取る)
※イオン化傾向について詳しくはイオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)を参照
ブリキめっきの仕組み
ブリキは、鉄Feの表面をスズSnで覆ったものである。
ブリキに傷がついたとする。
ここに水滴が付くと…
SnとFeのイオン化傾向を比較すると、Feの方が大きい。
したがって、Feが優先的に溶け出して鉄(Ⅱ)イオンFe2+となる。
Feの方が先に溶けてしまうんじゃ意味がないじゃないか!と思った人がいるかもしれないが、そんなことはない。
Snはトタンで使われているZnよりもイオン化傾向が小さいため、傷が付いていない状態では水がついても溶けにくい(=腐食しにくい)。
したがって、傷が付く危険性が低いところ(おもちゃ・缶詰など)においては、亜鉛メッキ(トタン)よりもスズメッキ(ブリキ)が用いられる。
ブリキとトタンに関する重要事項まとめ
トタン | ブリキ | |
---|---|---|
メッキ | 亜鉛 | スズ |
通常時の強度 | 弱い | 強い |
傷がつき水が付着したとき | Znが溶ける (=鉄が錆びにくい) |
Feが溶ける (=鉄が錆びやすい) |
用途 | 屋根 | おもちゃ・缶詰 |
ブリキ・トタンに関する演習問題
鉄(Fe)の表面を亜鉛(Zn)で覆ったものを【1】という。
鉄(Fe)の表面をスズ(Sn)で覆ったものを【1】という。
ブリキとトタンのうち、基本的な強度が高いのは【1】である。
ブリキとトタンのうち、傷がついて水が付着したときに強度が高いのは【1】である。
ブリキとトタンのうち、おもちゃや缶詰に使われるのは【1】である。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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