【鉄メッキ】ブリキとトタン(違い・イオン化傾向に基づく錆びやすさの理由など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『【鉄メッキ】ブリキとトタン(違い・イオン化傾向に基づく錆びやすさの理由など)』について解説しています。


鉄の腐食

  • 鉄板に水が付着すると、鉄Feは鉄(Ⅱ)イオンとなり、水に移行する(鉄板が溶ける)。

\[ \mathrm{Fe→Fe^{2+}+2e^{-}} \]

  • また、空気中から水に溶けた酸素O2がFeの放出した電子eを受け取り、水酸化物イオンOHとなる。

\[ \mathrm{O_{2}+4e^{-}+2H_{2}O→4OH^{-}}(還元反応) \]

  • この酸化還元反応が鉄板上で連続して起こることで、腐食が進む。
  • ちなみに、上記2つの半反応式を足し合わせると、酸化還元反応全体の反応式を導くことができる。

参考:半反応式・酸化還元反応式(作り方・覚え方・問題演習など)

  • 生成物のFe(OH)2は非常に酸化されやすいため、すぐに酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3などを生じる。Fe2O3は鉄の赤さびの主成分である。

参考:鉄の単体・化合物の性質や特徴・製法・イオンの色など


鉄メッキの分類

  • 鉄の表面を加工する(メッキを施す)ことで、鉄の腐食を防ぐことができる。
  • 代表的な鉄メッキとして、トタンとブリキが存在する。
鉄メッキ解説
トタン鉄の表面に亜鉛メッキを施したもの屋根など
ブリキ鉄の表面にスズメッキを施したものおもちゃ・缶詰など
  • 鉄メッキのうち、トタンは鉄の表面を亜鉛Znで覆ったもので、鉄板でつくられた屋根の加工などに用いられる。
  • 一方、ブリキは鉄の表面をスズSnで覆ったもので、鉄でつくられたおもちゃや缶詰の加工などに用いられる。

トタンメッキの仕組み

  • トタンは鉄Feの表面を亜鉛Znで覆ったものである。
  • トタンは主に”トタン屋根”として用いられているので、(外の雨風に晒され)傷がつくことが多い。
  • 傷ついた部分に雨水などの水滴が付くと、次の反応が起こる。
  • FeとZnのイオン化傾向を比較すると、Znの方が大きい。

参考:イオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)

  • したがって、Znが優先的に溶け出して亜鉛イオンZn2+となる。

\[ \mathrm{Zn→Zn^{2+}+2e^{-}} \]

  • その結果、Feがイオンになって溶ける(=腐食する)のを防ぐことができる。

ブリキメッキの仕組み

  • ブリキは鉄Feの表面をスズSnで覆ったものである。
  • ブリキに傷がついたとする。
  • ここに水滴が付くと、次の反応が起こる。
  • SnとFeのイオン化傾向を比較すると、Feの方が大きい。
  • したがって、Feが優先的に溶け出して鉄(Ⅱ)イオンFe2+となる。

\[ \mathrm{Fe→Fe^{2+}+2e^{-}} \]

  • 「Feの方が先に溶けてしまうんじゃ意味がないのでは」と考える人がいるかもしれないが、Snはトタンで使われているZnよりもイオン化傾向が小さいため、傷がついていない状態では水がついても溶けにくく、丈夫である。
  • したがって、傷がつく危険性が低いもの(おもちゃ・缶詰など)においては、ブリキが用いられることが多い。

トタンとブリキまとめ

  • トタンとブリキの特徴についてまとめる。
トタンブリキ
メッキ亜鉛スズ
通常時の強度弱い強い
傷がつき水が付着したときZnが溶ける (=鉄が錆びにくい)Feが溶ける (=鉄が錆びやすい)
用途屋根おもちゃ・缶詰

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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