ハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)の原理・反応式・高温高圧下の理由など

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はじめに

【プロ講師解説】このページでは『ハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)の原理・反応式・高温高圧下の理由など』について解説しています。


ハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)

  • 窒素N2は非常に安定しており、ほとんど化合物を作らないことで有名である。
  • 窒素元素は肥料の三要素の1つであり、固定化して植物に与える必要があったため、研究者は苦難していた。そんな中、20世紀の初め頃、ドイツのフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによってアンモニアNH3の製法であるハーバー法(ハーバー・ボッシュ法)が開発された。
  • この方法では、四酸化三鉄Fe3O4を触媒に用い、高温高圧下で次の反応を進める。

\[ \mathrm{N_{2}+3H_{2} \overset{触媒(Fe_{3}O_{4})}{→} 2NH_{3}} \]


ハーバー・ボッシュ法を高圧下で行う理由

  • ハーバー・ボッシュ法を高圧下で行うのは、平衡時のアンモニアNH3の吸収率を上げるためである。
  • 先述のように、ハーバー・ボッシュ法の反応式は次の通りである。

\[ \mathrm{N_{2}+3H_{2} \overset{触媒(Fe_{3}O_{4})}{→} 2NH_{3}} \]

  • この反応は可逆的反応であり、一定の条件下で平衡状態に達する。
  • 式の左右の気体分子数を比較すると、左>右である。したがって、ルシャトリエの原理より、高圧下では気体分子数が減少する方向、つまり右方向に反応が進む。
  • その結果、NH3を効率よく回収できる。

参考:可逆反応と不可逆反応


ハーバー・ボッシュ法を高温下で行う理由

  • ハーバー・ボッシュ法を行う際の温度は、2つの観点から考える必要がある。

反応速度

  • 一般に、温度を上げると反応速度が大きくなる(参考:反応速度が変化する要因)。
  • その結果、平衡状態に達するのがはやくなり、効率よくアンモニアNH3を回収できる。

ルシャトリエの原理

  • 一方、この反応は発熱反応である。

\[ \mathrm{N_{2}+3H_{2} \overset{触媒(Fe_{3}O_{4})}{→} 2NH_{3}\color{#dc143c}{ +92kJ }} \]

  • したがって、温度を下げると、ルシャトリエの原理により発熱方向に反応が進むため、効率よくNH3を回収できる。

結論

  • 2つの観点を総合的に考え、ハーバー・ボッシュ法は、中程度の温度(約500℃)で行う。
  • また、反応速度を大きくするため、触媒としてFe3O4を用いる。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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