【プロ講師解説】このページでは『気体の製法(反応式・原理・注意事項など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

中性気体の製法

一酸化炭素CO

【脱水】ギ酸HCOOHに濃硫酸を加えて加熱する
\[
HCOOH → CO↑ + H_{2}O
\]

※濃硫酸は脱水作用があるためギ酸HCOOHから水H2Oが引き抜かれる。

一酸化窒素NO

【酸化還元】 イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を希硝酸HNO3で酸化する
\[
3Cu + 8HNO_{3} → 3Cu(NO_{3})_{2} + 2NO↑ + 4H_{2}O\\
3Ag + 4HNO_{3} → 3AgNO_{3} + NO↑ + 2H_{2}O
\]

※銅や銀は金属元素の単体なので還元剤、希硝酸は代表的な酸化剤である。したがって酸化還元反応が起こる。

水素H2

【酸化還元】イオン化傾向がH2より大きな金属(亜鉛Znなど)を希硫酸H2SO4や塩酸HClと反応させる。
\[
Zn + H_{2}SO_{4} → ZnSO_{4} + H_{2}↑
\]

※イオン化傾向がH2より大きな金属と希酸を反応させるとH2が発生する。
詳しくはイオン化傾向とは?定義から反応のしやすさとの関わりまで徹底解説!を参照

酸素O2

過酸化水素H2O2や塩素酸カリウムKClO3などの酸化物を分解する。(触媒として酸化マンガンMnO2を用いる)
\[
2H_{2}O_{2} → O_{2}↑ + 2H_{2}O\\
2KClO_{3} → 3O_{2}↑ + 2KCl
\]

※これらの反応は自己酸化還元反応の一種である
※どちらの反応も触媒として酸化マンガン(Ⅳ)が必要
※試薬が固体だけの場合は加熱しないと反応が進みにくいため、下のKClO3を用いる場合は加熱が必要

オゾンO3

酸素O2の無声放電または紫外線照射で得られる。
\[
3O_{2} ⇄ 2O_{3}
\]

※無声放電とは音を発しない放電の総称である。

窒素N2

亜硝酸アンモニウムNH4NO2を熱分解する。
\[
NH_{4}NO_{2} → N_{2}↑ +2H_{2}O
\]

酸性気体

二酸化炭素CO2

【弱酸遊離】炭酸イオンCO32-を含む塩(炭酸カルシウムCaCO3など)に強酸を加える。
\[
CaCO_{3} + 2HCl → CaCl_{2} + CO_{2}↑ + H_{2}O
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

二酸化窒素NO2

【酸化還元】イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を濃硝酸HNO3で酸化する。
\[
Cu + 4HNO_{3} → Cu(NO_{3})_{2} + 2NO_{2}↑ + 2H_{2}O\\
Ag + 2HNO_{3} → AgNO_{3} + NO_{2}↑ + H_{2}O
\]

二酸化硫黄SO2

方法① 酸化還元

イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を熱濃硫酸H2SO4で酸化する。
\[
Cu + 2H_{2}SO_{4} → CuSO_{4} + SO_{2}↑ + 2H_{2}O\\
2Ag + 2H_{2}SO_{4} → Ag_{2}SO_{4} + SO_{2}↑ + 2H_{2}O
\]

方法② 弱酸遊離

亜硫酸イオンSO32-を含む塩に強酸を加える。
\[
Na_{2}SO_{3} + H_{2}SO_{4} → Na_{2}SO_{4} + SO_{2}↑ + H_{2}O
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

硫化水素H2S

【弱酸遊離】硫化物イオンS2-を含む塩に強酸を加える。
\[
FeS + 2HCl → FeCl_{2} + H_{2}S↑\\
FeS + H_{2}SO_{4} → FeSO_{4} + H_{2}S↑
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

塩素Cl2

方法① 酸化還元

酸化マンガンMnO2に濃塩酸HClを加えて加熱する。
\[
MnO_{2} + 4HCl → MnCl_{2} + Cl_{2}↑ + 2H_{2}O
\]

方法② 弱酸遊離

さらし粉CaCl(ClO)・H2Oに希塩酸HClを加える。
\[
CaCl(ClO)・H_{2}O + 2HCl → CaCl_{2} + Cl_{2}↑ + 2H_{2}O
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

PLUS+

さらし粉は塩化物イオンClと次亜塩素酸イオンClOの2種類の陰イオンを含んでいる。
このように2種類以上の陽イオン又は陰イオンを含む塩を複塩という。

塩化水素HCl

【揮発酸遊離】塩化ナトリウムNaClに濃硫酸H2SO4を加えて加熱する。
\[
NaCl + H_{2}SO_{4} → NaHSO_{4} +HCl
\]

※揮発性酸遊離反応について詳しくは揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)を参照

フッ化水素HF

【揮発酸遊離】フッ化カルシウムCaF2(ホタル石)に濃硫酸H2SO4を加えて加熱する。
\[
CaF_{2} + H_{2}SO_{4} → CaSO_{4} + 2HF↑
\]

※揮発性酸遊離反応について詳しくは揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)を参照

塩基性気体

アンモニアNH3

【弱塩基遊離】塩化アンモニウムNH4Clに水酸化カルシウムCa(OH)2を加えて加熱する。
\[
2NH_{4}Cl + Ca(OH)_{2} → CaCl_{2} + 2NH_{3}↑ + 2H_{2}O
\]

※弱塩基遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

気体の製法に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

中性気体は水に溶けにくいため【1】法で捕集する。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】水上置換
問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

ギ酸HCOOHに濃硫酸を加えて加熱すると【1】が発生する。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】一酸化炭素CO
\[
HCOOH → CO↑ + H_{2}O
\]

※濃硫酸は脱水作用があるためギ酸HCOOHから水H2Oが引き抜かれる。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を希硝酸HNO3で酸化すると【1】が発生する。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】一酸化窒素NO
\[
3Cu + 8HNO_{3} → 3Cu(NO_{3})_{2} + 2NO↑ + 4H_{2}O\\
3Ag + 4HNO_{3} → 3AgNO_{3} + NO↑ + 2H_{2}O
\]

※銅や銀は金属元素の単体なので還元剤、希硝酸は代表的な酸化剤である。したがって酸化還元反応が起こる。

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン化傾向がH2より大きな金属(亜鉛Znなど)を希硫酸H2SO4HClと反応させると【1】が発生する。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】水素H2
\[
Zn + H_{2}SO_{4} → ZnSO_{4} + H_{2}↑
\]

※イオン化傾向がH2より大きな金属と希酸を反応させるとH2が発生する。
詳しくはイオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)を参照

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

(触媒として酸化マンガンMnO2を用いて)過酸化水素H2O2や塩素酸カリウムKClO3などの酸化物を分解すると【1】が発生する。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】酸素O2
\[
2H_{2}O_{2} → O_{2}↑ + 2H_{2}O\\
2KClO_{3} → 3O_{2}↑ + 2KCl
\]

※これらの反応は自己酸化還元反応の一種である
※どちらの反応も触媒として酸化マンガン(Ⅳ)が必要
※試薬が固体だけの場合は加熱しないと反応が進みにくいため、下のKClO3を用いる場合は加熱が必要

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

酸素O2の無声放電または紫外線照射により【1】が発生する。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】オゾンO3
\[
3O_{2} ⇄ 2O_{3}
\]

※無声放電とは音を発しない放電の総称である。

問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

亜硝酸アンモニウムNH4NO2を熱分解すると【1】が発生する。

【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】窒素N2
\[
NH_{4}NO_{2} → N_{2}↑ +2H_{2}O
\]
問8

【】に当てはまる用語を答えよ。

酸性気体は水に溶けやすく空気より重いので【1】法で捕集する。

【問8】解答/解説:タップで表示
解答:【1】下方置換
問9

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭酸イオンCO32-を含む塩(炭酸カルシウムCaCO3など)に強酸を加えると【1】が発生する。

【問9】解答/解説:タップで表示
解答:【1】二酸化炭素CO2
\[
CaCO_{3} + 2HCl → CaCl_{2} + CO_{2}↑ + H_{2}O
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問10

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cu銀Agなど)を濃硝酸HNO3で酸化すると【1】が発生する。

【問10】解答/解説:タップで表示
解答:【1】二酸化窒素NO2
\[
Cu + 4HNO_{3} → Cu(NO_{3})_{2} + 2NO_{2}↑ + 2H_{2}O\\
Ag + 2HNO_{3} → AgNO_{3} + NO_{2}↑ + H_{2}O
\]
問11

【】に当てはまる用語を答えよ。

イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を熱濃硫酸H2SO4で酸化する、又は亜硫酸イオンSO32-を含む塩に強酸を加えると【1】が発生する。

【問11】解答/解説:タップで表示
解答:【1】二酸化硫黄SO2

方法① 酸化還元

\[
Cu + 2H_{2}SO_{4} → CuSO_{4} + SO_{2}↑ + 2H_{2}O\\
2Ag + 2H_{2}SO_{4} → Ag_{2}SO_{4} + SO_{2}↑ + 2H_{2}O
\]

方法② 弱酸遊離

\[
Na_{2}SO_{3} + H_{2}SO_{4} → Na_{2}SO_{4} + SO_{2}↑ + H_{2}O
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問12

【】に当てはまる用語を答えよ。

硫化物イオンS2-を含む塩に強酸を加えると【1】が発生する。

【問12】解答/解説:タップで表示
解答:【1】硫化水素H2S
\[
FeS + 2HCl → FeCl_{2} + H_{2}S↑\\
FeS + H_{2}SO_{4} → FeSO_{4} + H_{2}S↑
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問13

【】に当てはまる用語を答えよ。

酸化マンガンMnO2に濃塩酸HClを加えて加熱する、又はさらし粉CaCl(ClO)・H2Oに希塩酸HClを加えると【1】が発生する。

【問13】解答/解説:タップで表示
解答:【1】塩素Cl2

方法① 酸化還元

\[
MnO_{2} + 4HCl → MnCl_{2} + Cl_{2}↑ + 2H_{2}O
\]

方法② 弱酸遊離

\[
CaCl(ClO)・H_{2}O + 2HCl → CaCl_{2} + Cl_{2}↑ + 2H_{2}O
\]

※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問14

【】に当てはまる用語を答えよ。

塩化ナトリウムNaClに濃硫酸H2SO4を加えて加熱すると【1】が発生する。

【問14】解答/解説:タップで表示
解答:【1】塩化水素HCl
\[
NaCl + H_{2}SO_{4} → NaHSO_{4} +HCl
\]

※揮発性酸遊離反応について詳しくは揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)を参照

問15

【】に当てはまる用語を答えよ。

フッ化カルシウムCaF2(ホタル石)に濃硫酸H2SO4を加えて加熱すると【1】が発生する。

【問15】解答/解説:タップで表示
解答:【1】フッ化水素HF
\[
CaF_{2} + H_{2}SO_{4} → CaSO_{4} + 2HF↑
\]

※揮発性酸遊離反応について詳しくは揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)を参照

問16

【】に当てはまる用語を答えよ。

塩基性気体は水に溶けやすく空気より軽いので【1】法で捕集する。

【問16】解答/解説:タップで表示
解答:【1】上方置換
問17

【】に当てはまる用語を答えよ。

塩化アンモニウムNH4Clに水酸化カルシウムCa(OH)2を加えて加熱すると【1】が発生する。

【問17】解答/解説:タップで表示
解答:【1】アンモニアNH3
\[
2NH_{4}Cl + Ca(OH)_{2} → CaCl_{2} + 2NH_{3}↑ + 2H_{2}O
\]

※弱塩基遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細