気体の製法(反応式・原理・注意事項など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『気体の製法(反応式・原理・注意事項など)』について解説しています。


中性気体の製法

  • 代表的な中性気体の製法を紹介する。

一酸化炭素CO

【脱水】ギ酸HCOOHに濃硫酸を加えて加熱する

\[ \mathrm{HCOOH → CO↑ + H_{2}O} \]

  • 濃硫酸は脱水作用があるためギ酸HCOOHから水H2Oが引き抜かれる。

一酸化窒素NO

【酸化還元】 イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を希硝酸HNO3で酸化する

\[ \begin{align}&\mathrm{3Cu + 8HNO_{3} → 3Cu(NO_{3})_{2} + 2NO↑ + 4H_{2}O}\\
&\mathrm{3Ag + 4HNO_{3} → 3AgNO_{3} + NO↑ + 2H_{2}O}\end{align} \]

水素H2

【酸化還元】イオン化傾向がH2より大きな金属(亜鉛Znなど)を希硫酸H2SO4や塩酸HClと反応させる。

\[ \mathrm{Zn + H_{2}SO_{4} → ZnSO_{4} + H_{2}↑} \]

  • イオン化傾向がH2より大きな金属と希酸を反応させるとH2が発生する。
  • イオン化傾向について詳しくは次のページを参照のこと。

参考:イオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)

酸素O2

過酸化水素H2O2や塩素酸カリウムKClO3などの酸化物を分解する。(触媒として酸化マンガンMnO2を用いる)

\[ \begin{align}&\mathrm{2H_{2}O_{2} → O_{2}↑ + 2H_{2}O}\\
&\mathrm{2KClO_{3} → 3O_{2}↑ + 2KCl} \end{align}\]

  • これらの反応は自己酸化還元反応の一種である。
  • どちらの反応も触媒として酸化マンガン(Ⅳ)が必要である。
  • 試薬が固体だけの場合は加熱しないと反応が進みにくいため、KClO3を用いる場合は加熱が必要である。

オゾンO3

酸素O2の無声放電または紫外線照射で得られる。

\[ \mathrm{3O_{2} ⇄ 2O_{3}} \]

  • 無声放電とは音を発しない放電の総称である。

窒素N2

亜硝酸アンモニウムNH4NO2を熱分解する。

\[ \mathrm{NH_{4}NO_{2} → N_{2}↑ +2H_{2}O} \]


酸性気体の製法

  • 代表的な酸性気体の製法を紹介する。

二酸化炭素CO2

【弱酸遊離】炭酸イオンCO32ーを含む塩(炭酸カルシウムCaCO3など)に強酸を加える。

\[ \mathrm{CaCO_{3} + 2HCl → CaCl_{2} + CO_{2}↑ + H_{2}O} \]

参考:【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方など

二酸化窒素NO2

【酸化還元】イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を濃硝酸HNO3で酸化する。

\[ \begin{align}&\mathrm{Cu + 4HNO_{3} → Cu(NO_{3})_{2} + 2NO_{2}↑ + 2H_{2}O}\\
&\mathrm{Ag + 2HNO_{3} → AgNO_{3} + NO_{2}↑ + H_{2}O}\end{align} \]

二酸化硫黄SO2

方法① 酸化還元

イオン化傾向がH2よりも小さい金属(銅Cuや銀Agなど)を熱濃硫酸H2SO4で酸化する。

\[ \begin{align}&\mathrm{Cu + 2H_{2}SO_{4} → CuSO_{4} + SO_{2}↑ + 2H_{2}O}\\
&\mathrm{2Ag + 2H_{2}SO_{4} → Ag_{2}SO_{4} + SO_{2}↑ + 2H_{2}O}\end{align} \]

方法② 弱酸遊離

亜硫酸イオンSO32ーを含む塩に強酸を加える。

\[ \mathrm{Na_{2}SO_{3} + H_{2}SO_{4} → Na_{2}SO_{4} + SO_{2}↑ + H_{2}O} \]

参考:【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方など

硫化水素H2S

【弱酸遊離】硫化物イオンS2ーを含む塩に強酸を加える。

\[ \begin{align}&\mathrm{FeS + 2HCl → FeCl_{2} + H_{2}S↑}\\
&\mathrm{FeS + H_{2}SO_{4} → FeSO_{4} + H_{2}S↑} \end{align}\]

参考:【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方など

塩素Cl2

方法① 酸化還元

酸化マンガンMnO2に濃塩酸HClを加えて加熱する。

\[ \mathrm{MnO_{2} + 4HCl → MnCl_{2} + Cl_{2}↑ + 2H_{2}O} \]

方法② 弱酸遊離

さらし粉CaCl(ClO)・H2Oに希塩酸HClを加える。

\[ \mathrm{CaCl(ClO)・H_{2}O + 2HCl → CaCl_{2} + Cl_{2}↑ + 2H_{2}O} \]

参考:【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方など

複塩

  • さらし粉は塩化物イオンClと次亜塩素酸イオンClOの2種類の陰イオンを含んでいる。
  • このように2種類以上の陽イオン又は陰イオンを含む塩を複塩という。

塩化水素HCl

【揮発酸遊離】塩化ナトリウムNaClに濃硫酸H2SO4を加えて加熱する。

\[ \mathrm{NaCl + H_{2}SO_{4} → NaHSO_{4} +HCl} \]

参考:揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)

フッ化水素HF

【揮発酸遊離】フッ化カルシウムCaF2(ホタル石)に濃硫酸H2SO4を加えて加熱する。

\[ \mathrm{CaF_{2} + H_{2}SO_{4} → CaSO_{4} + 2HF↑} \]

参考:揮発性酸遊離反応(原理・例・濃硫酸を使う理由など)


塩基性気体の製法

  • 代表的な塩基性気体の製法を紹介する。

アンモニアNH3

【弱塩基遊離】塩化アンモニウムNH4Clに水酸化カルシウムCa(OH)2を加えて加熱する。

\[ \mathrm{2NH_{4}Cl + Ca(OH)_{2} → CaCl_{2} + 2NH_{3}↑ + 2H_{2}O} \]

参考:【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方など

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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