【プロ講師解説】このページでは『けん化価(定義、分子量を使った計算問題、ヨウ素価との違いなど)』について解説しています。(ヨウ素価についてはヨウ素価とは(計算問題・けん化価との違いなど)を参照)解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

けん化価とは

けん化価とは油脂1gをけん化(=油脂を水酸化カリウムなどのアルカリで加水分解すること)するために必要な水酸化カリウムのmg数である。

\[
けん化価=\frac{ KOH(mg)}{ 油脂(g) }
\]

けん化価の計算

油脂の水酸化カリウム(KOH)によるけん化は次の反応式で表すことができる。

\[
C_{3}H_{5}(OCOR)_{3}+3KOH→C_{3}H_{5}(OH)_{3}+3RCOOK
\]

この反応において、係数比より、油脂1molはKOH3molと反応するので、油脂の分子量をM(g/mol)とすると…

\[
\begin{align}
けん化価&=\frac{ KOH(mg)}{ 油脂(g) }\\
&=\frac{ 3(mol)×56(g/mol)×1000}{ 1(mol)×M(g/mol) }\\
&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ M }
\end{align}
\]

けん化価はこのように表すことができる。

それではこの式を用いて次の例題を解いてみよう。

問題

分子量600の油脂のけん化価を求めなさい。(整数値で解答)

分子量が600と書かれているので、これを先ほどの式のMに600を代入すれば良い。

\[
\begin{align}
けん化価&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ M }\\
&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ 600 }\\
&=280
\end{align}
\]

よって、この油脂のけん化価は280である。

PLUS+

けん化価の式をもう一度確認しよう。

\[
けん化価=\frac{ 1.68×10^{5} }{ M }
\]

式を見てわかるように、けん化価は油脂の分子量Mに反比例する。
ヨウ素価が「”二重結合”の数に“比例”する」ことと混同しやすいので注意しよう。

※ヨウ素価について詳しくはヨウ素価とは(計算問題・けん化価との違いなど)を参照

演習問題

問1

けん化価とは何か。定義を答えなさい。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:下記参照

けん化価とは油脂1gをけん化(=油脂を水酸化カリウムなどのアルカリで加水分解すること)するために必要な水酸化カリウムのmg数である。

問2

分子量450の油脂と600の油脂のけん化価を比較するとどちらが大きいか。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:分子量450の油脂

けん化価は油脂の分子量に反比例する。したがって、分子量450の油脂のけん化価と分子量600の油脂のけん化価を比較すると分子量450の油脂のけん化価の方が大きい。

問3

分子量300の油脂のけん化価を求めなさい。(整数値で解答)
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:560

けん化価を求める公式に今回の油脂の分子量300を代入すると…

\[
\begin{align}
けん化価&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ M }\\
&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ 300 }\\
&=560
\end{align}
\]

けん化価は560となる。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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