【プロ講師解説】このページでは『相対質量・原子量・分子量・式量の定義、求め方、計算問題』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
相対質量
このページでは、相対質量・原子量・分子量・式量の4つについて、定義から求め方、計算問題の解法まで一から丁寧に解説していく。
まずは、相対質量から見ていこう。
相対質量とは
相対質量とは、12Cの質量を12と定めて、これを基準に他の原子の質量を相対的に比べたものである。
原子1コの質量は極めて小さいため、計算などをするとき非常に扱いづらい。
そこで、質量をより扱い易くするために考えられたのが相対質量である。
昔、偉い人が「原子の質量はそのままじゃ小さすぎて使いづらいから、炭素の質量を12と決め、他の原子はそれと比べてどれくらい重い(軽い)かどうかで表せばいいんじゃない?」
と考えた。
→炭素の3倍の重さがある原子の質量は…12×3=36
→炭素の半分の重さしかない原子の質量は…12×1/2=6
実際、それでやってみると思いのほか上手くいき、この考え方が今原子の質量を考える上での基本となっている。
相対質量の求め方
相対質量は、基準である炭素の相対質量12に、その原子と炭素との質量の比をかけると求めることができる。
例えば次の問題を見てみよう。
問題
問題に「水素の質量は炭素の$\frac{ 1 }{ 12 }$」と書いてあるので、炭素の相対質量である12に$\frac{ 1 }{ 12 }$をかけてあげればよい。
12 × \frac{ 1 }{ 12 } = 1
\]
よって、1Hの相対質量は1となる。
原子量
原子量とは、各同位体の相対質量にそれぞれの存在比をかけて足した値である。
同位体(一覧・例・性質・存在比を使った計算など)や同素体・同位体(違い・例・硫黄・炭素・酸素・リンなど)で説明しているように、元素の多くは同位体が存在するため、それぞれの相対質量にその存在比をかけて最後に足すわけである。
文字だけでは分かりにくいため、炭素を例に実際計算してみよう。
問題
同位体の相対質量に、それぞれの存在比をかけて足す。
\underbrace{12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } }
_{ ^{ 12 }\text{ C }} +
\underbrace{13.0 × \frac{ 1.1 }{ 100 } }
_{ ^{ 13 }\text{ C }} = 12.011
\]
これが炭素の原子量である。
ちなみに、このような原子量計算をするときの有名な工夫がある。
12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } + 13.0 × \frac{ 1.1 }{ 100 } \\
= 12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } + (12.0+1.00) × \frac{ 1.1 }{ 100 } \\
= 12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } + 12.0 × \frac{ 1.1 }{ 100 } + 1.00 × \frac{ 1.1 }{ 100 }\\
= 12.0 × (\frac{ 98.9 }{ 100 } + \frac{ 1.1 }{ 100 }) + 1.00 × \frac{ 1.1 }{ 100 }\\
= 12.0 × 1 + 1.00 × \frac{ 1.1 }{ 100 }\\
= 12.0 + 0.011\\
= 12.011
\]
これは定期テストなどでよく出るパターンの問題なので、しっかり解けるようにしておこう。
また、もう1つのパターンとして「原子量が分かっている状態で存在比を求める」ものがある。
そちらも一応練習しておこう。
問題
こちらも同じように、「同位体の相対質量に、それぞれの存在比をかけて足すと原子量が出る」ということを利用して解く。
\underbrace{35.0 × \frac{ x }{ 100 } }
_{ ^{ 35 }\text{ Cl }} +
\underbrace{37.0 × \frac{ 100-x }{ 100 } }
_{ ^{ 37 }\text{ Cl }} = 35.5
\]
片方の存在比(%)をxとおけば、全部で100(%)だからもう片方は100-x(%)と考えられる。
この式をxについて解くと、x=0.75となるので、
^{35}Cl = 75(\%) \\
^{37}Cl = 25(\%)
\]
PLUS+
ただし、計算で使用する際には[g/mol]という単位をつけて計算する場合がある。(詳しくは【モル計算】単位を駆使!物質量molが絡む問題の解法(原子量・体積・アボガドロ数など)を参照)
分子量
分子量とは、分子を構成している原子の原子量の和である。
例えば、水(H2O)の分子量は、水素の原子量「1」と酸素の原子量「16」を使って、
1×2 + 16×1 = 18
\]
というように求めることができる。
水素の原子量に2を、酸素の原子量に1をかけているのは、水分子中に水素原子は2コ、酸素原子は1コあるからである。
式量
式量とは、組成式またはイオン式で表される物質を構成している原子の原子量の和である。
例として「NaCl」の式量を求めてみよう。
Naの原子量23.0、Clの原子量35.5を用いると…
23.0×1 + 35.5×1 = 58.5
\]
Naの原子量とClの原子量にそれぞれ1をかけているが、これはNaClという式の中のNaとClの比が「1:1」だからである。
相対質量・原子量・分子量・式量に関する演習問題
問1
12Cの質量を12と定めて、これを基準に他の原子の質量を相対的に比べたものを【1】という。
このとき、1Hの相対質量を求めよ。
問3
各同位体の相対質量にそれぞれの存在比をかけて足した値を【1】という。
問4
炭素原子の2つの同位体12C(相対質量=12.0),13C(相対質量=13.0)の存在比が、 それぞれ98.9%、1.1%であるとき、炭素の原子量は【1(有効数字3桁で解答)】である。
問5
塩素原子の原子量が35.5のとき、塩素原子の2つの同位体35Cl(相対質量=35.0),37Cl(相対質量=37.0)の存在比はそれぞれ【1】、【2】である。
問6
分子を構成している原子の原子量の和を【1】という。
問7
水H2Oの分子量は【1】である。(O=16,H=1とする)
組成式またはイオン式で表される物質を構成している原子の原子量の和を【1】という。
問9
塩化ナトリウムNaClの式量は【1】である。(Na=23.0,Cl=35.5とする)