【プロ講師解説】このページでは『蒸留と分留(違い・例・原理・図など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
蒸留
蒸留とは
塩化ナトリウム水溶液を枝付きフラスコに入れ、加熱して沸騰させると塩化ナトリウム水溶液中の水だけが水蒸気となる。
その水蒸気を管で繋がれたリービッヒ冷却器で冷却すると純粋な水(蒸留水)が得られる。
このように、液体と固体の混合物を加熱し、液体だけを気化させ、それを冷却して純粋な液体として取り出す操作のことを蒸留という。
蒸留の注意点(入試頻出ポイント)
蒸留を行う上で注意すべき事項で、入試でもよく出題されるものをいくつか紹介しておこうと思う。
NO.1 | 枝付きフラスコに入れる溶液の量は1/2以下にする |
NO.2 | 枝付きフラスコを加熱する際は金網を敷く (水浴の場合もあり) |
NO.3 | 枝付きフラスコを加熱する際は沸騰石を入れる |
NO.4 | 温度計は枝付きフラスコの枝元に来るようにする |
NO.5 | リービッヒ冷却器を通す冷却水は「下から上」に流す |
NO.6 | アダプターと受け器は密閉しない |
NO.7 | 蒸留の始めと終わりに出る液体は捨てる |
枝付きフラスコに入れる溶液に量は1/2以下にする。これは、溶液を入れすぎると沸騰したときに液が枝側に入りリービッヒ冷却器の方に行ってしまうためである。
枝付きフラスコを直接加熱するとフラスコが破損する可能性があるため、枝付きフラスコを加熱する際は金網を敷かなければいけない。
金網以外では、水を溜めた水浴に枝付きフラスコを浸けて加熱したり、水浴で加熱できない沸点が100℃以上の溶液は(水は100℃以上に加熱できないため)油浴や砂浴を使ったり、といった場合もある。
また、加熱する際は”沸騰石”と呼ばれる石を入れる必要がある。これは突沸(液体が沸点になっても沸騰せず、わずかに刺激を与えた時に急激に沸騰する現象:溶液が噴き出したり容器が破損する恐れがある)を防ぐためである。(突沸について詳しくは突沸(原理・防ぐ方法・沸騰石など)を参照)
発生した蒸気の温度を測るため枝付きフラスコに温度計を設置する必要があるが、この時温度計の球部は「フラスコの枝元」にする必要がある。これは、溶液につけたりすると溶液の温度を測っていることになってしまうためである。
リービッヒ冷却器に通す冷却水は「下から上」に流すようにする。上から下に流すと水が溜まりづらく冷却効率が悪くなってしまう。
アダプターと受け器は密閉してはならない。アダプターと受け器をゴム栓やガラス栓で密閉して蒸留すると装置内の圧力が上がり器具を破損する可能性がある。(ただし、外部から異物が混入するといけないのでアルミホイル等を被せて受け器の口を軽く塞ぐ必要がある)
蒸留の始めの液と終わりの液は捨てる必要がある。これは、始めの液と終わりの液は不純物を含む可能性が高いためである。
分留
分留とは2種類以上の液体の混合物を、沸点の違いを利用して分離する操作である。
例えば、石油は発掘された状態では様々な液体が混ざりあっており、分留を行うことで石油ガスやナフサ、灯油、軽油などに取り分けられている。
蒸留と分留の違い
蒸留 | 液体と固体を分離 |
分留 | 液体と液体を分離 |
蒸留は液体と固体を分離する操作、分留は液体と液体を分離する操作というのが一般的な考え方である。
しかし本当の所は、蒸留は「(液体と液体を分離するのも含めて)物質と物質を沸点の違いを利用して分離させる方法全般」のことを指しており、したがって分留は蒸留の一種であると言える。
演習問題
問1
問2
問3
問4
問5
問6
問7
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細