【プロ講師解説】このページでは『物質量molが絡む問題の解法(原子量・体積・アボガドロ数など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
物質量(mol)とは


物質量は「単位」の1つである。
つまり、「長さ」とか「重さ」とかと同じ類のものだということ。
「長さ」を(m)、重さを(g)で表すように、物質量は(mol)で表す。
物質量について、よくある鉛筆の例を用いて説明しよう。
ここに鉛筆が1本ある。この鉛筆が12本集まったものを…
1“ダース”と呼ぶ。物質量もこの「ダース」と同じように考えることができる。
ここに、一粒の原子があるとしよう。
これが6.0×1023コ集まった”カタマリ”を…
1molという。
鉛筆を12本集めた物を、1ダースというのと全く同じ感覚。
ちなみに、6.0×1023コという数はどんな原子(分子)でも一緒。
以上が物質量に関する簡単な説明。
別に特別なものではなくて、ただの単位に過ぎないということが理解できればOK。
物質量の使い方
アボガドロ定数(個数に関係したもの)
6.0×1023コは1molという塊に含まれる個数である。
単位をつけると6.0×1023コ/molとなり、これを「アボガドロ定数」と呼ぶ。アボガドロ定数は記号NAで表される。
アボガドロ定数N_{A}=6.0×10^{23} (コ/mol)
\]
※ここでは分かり易くするために単位に「コ」をつけているが、本来、アボガドロ定数の単位は「/mol」である。
実際の計算等をする上では「コ/mol」で覚えていた方が扱いやすいが、正規の表し方ではないということは把握しておこう。
※molの前に省略されている「1」を補うと少し分かり易くなる。
6.0×10^{23} (コ/1mol)
\]
モル質量(質量に関係したもの)
その原子(分子)1molあたりの質量をモル質量という。
モル質量は原子量(分子量)と一致し、単位「g/mol」をつけて表される。
原子量(g/mol)
\]
モル体積(体積に関係したもの)
全ての気体は「標準状態(0℃、1気圧)で1molあたり22.4Lの体積を占める」ことが知られている。
「1molあたりのL」を単位で表すと「L/mol」となるので、「1molあたり22.4Lの体積を占める」というのを単位をつけて表すと、「22.4(L/mol)」となる。
22.4(L/mol)
\]
気体の密度と分子量
気体の密度は通常1Lあたりの質量(g/L)で表される。
これに22.4をかけると、22.4Lあたりの質量、つまり、1molあたりの質量(モル質量)になる。
気体の密度(g/L) × 22.4(L/mol) = モル質量(g/mol)
\]
mol計算のやり方


molを使った計算は主に「molとgの計算」・「molとLの計算」・「molと個数の計算」の3種類。順番に見ていこう。
molとgの計算


molとgに関する計算をするときにポイントとなるのは、「分子量」。
分子量に単位はないと習った人もいるかもしれないが、計算のときは別。
単位として、「g/mol」
を付けて考える。
「mol→g」
molからgを求めたいときには、molに分子量(g/mol)を掛ける。
\mathtt{ \cancel{mol} \times \frac{ g }{ \cancel{mol} } = g }
\]
molが約分され、gを得ることが出来る。簡単な例題で練習しよう。
問題
molと分子量が分かっているから、これらを掛けてやればいい。
\mathtt{ 2(\cancel{mol}) \times 18(g/\cancel{mol}) = 36(g) }
\]
「g→mol」
gからmolを求めるときは、gを分子量(g/mol)で割る。
\mathtt{ g \div \frac{ g }{ mol } \\
= \cancel{g} \times \frac{ mol }{ \cancel{g} } \\
= mol }
\]
最終的にgが約分されmolを求めることができる。例題で練習しよう。
問題
gを分子量で割ると、
\mathtt{ 44(g) \div 44(g/mol) \\
= 44(\cancel{ g }) \times \frac{ 1 }{ 44 }(mol/\cancel{ g }) \\
= 1(mol) }
\]
答えは、1molとなる。
molとLの計算


標準状態(0℃・1気圧)で、すべての気体は1molあたり22.4Lの体積を占める。
これがmolとLに関する計算をするときのポイント。
「1molあたり22.4L」というのを簡潔に表すと、22.4(L/mol)
となり、これを用いて計算をしていく。
「mol→L」
molからLを求めたいときには、molに22.4(L/mol)を掛ける。
\mathtt{ \cancel{mol} \times \frac{ L }{ \cancel{mol} } = L }
\]
このようにmolが約分され、Lを得ることが出来る。簡単な例題で練習しよう。
問題
標準状態でmolが分かっているので…
\mathtt{ 0.5(\cancel{mol}) \times 22.4(L/\cancel{mol}) = 11.2(L) }
\]
このような感じでLを求めることが出来る。
「L→mol」
Lからmolを求めるときは、Lを22.4(L/mol)で割る。
\mathtt{ L \div \frac{ L }{ mol } \\
= \cancel{L} \times \frac{ mol }{ \cancel{L} } \\
= mol }
\]
最終的にLが約分されmolを求めることができる。例題で練習しておこう。
問題
Lを22.4(L/mol)で割ると…
\mathtt{ 2.24(L) \div 22.4(L/mol) \\
= 2.24(\cancel{ L }) \times \frac{ 1 }{ 22.4 }(mol/\cancel{ L }) \\
= 0.1(mol) }
\]
答えは、0.1molとなる。
molと個数の計算


上の「molとは」のところに書いてあるように、1molの中には6.0×1023コの原子(分子)が含まれる。
これが、molと個数に関する計算を解く上で重要なポイント。
「1molの中には6.0×1023コの原子(分子)が含まれる」を簡潔に表すと、6.0×1023(コ/mol)
となり、これを用いて計算していく。
「mol→個数」
molから個数を求めたいときにはmolに6.0×1023(コ/mol)を掛ける。
\mathtt{ \cancel{mol} \times \frac{ コ }{ \cancel{mol} } = コ }
\]
このようにmolが約分され、コ(=個数)を得ることが出来る。簡単な例題で練習しよう。
問題
molが分かっているので…
\mathtt{ 0.5(\cancel{mol}) \times 6.0×10^{ 23 }(コ/\cancel{mol}) = 3.0×10^{ 23 }(コ) }
\]
このような感じで個数を求めることが出来る。
「個数→mol」
個数からmolを求めるときは、個数を6.0×1023(コ/mol)で割る。
\mathtt{ コ \div \frac{ コ }{ mol } \\
= \cancel{コ} \times \frac{ mol }{ \cancel{コ} } \\
= mol }
\]
最終的に個数が約分されmolを求めることができる。例題で練習しておこう。
問題
個数を6.0×1023(コ/mol)で割ると…
\mathtt{ 1.2×10^{ 23 }(コ) \div 6.0×10^{ 23 }(コ/mom) \\
= 1.2×10^{ 23 }(\cancel{ コ }) \times \frac{ 1 }{ 6.0×10^{ 23 } }(mol/\cancel{ コ }) \\
= 0.2(mol) }
\]
答えは、0.2molとなる。
mol計算応用編(molを介したg/L/個数の変換)
上で紹介した「molとgの変換」「molとLの変換」「molと個数の変換」がmol計算の基礎となるのは確かだが、実際には次のような問題が出題されることが多い。
問題
gとmol、Lとmolの変換ではなく「gとLの変換」である。
これ以降は、この例題のように基本の3パターンの計算をミックスさせて解く問題について解説していく。
gとLの変換


「g→L」
g→Lの変換を一回の計算でやることはできないため、「いったんgをmolに変換して、そのmolをLに変換する」という方法を使う。先ほどの例題で説明していこう。
問題
まずは、3.2gを酸素の分子量32g/molで割ることによりmolを求める。
\mathtt{ 3.2(g) \div 32(g/mol) \\
= 3.2(\cancel{ g }) \times \frac{ 1 }{ 32 }(mol/\cancel{ g }) \\
= 0.1(mol) }
\]
次に、今求めたmolに22.4L/molを掛けることでLに変換する。
\mathtt{ 0.1(\cancel{mol}) \times 22.4(L/\cancel{mol}) = 2.24(L) }
\]
見事、gからLへ変換できた。
「L→g」
Lからgでもやることは変わらない。「Lを一回molにして、そのmolをgに変換する」という作戦を使う。
問題
まずは、11.2Lを22.4L/molで割ることでmolを求める。
\mathtt{ 11.2(L) \div 22.4(L/mol) \\
= 11.2(\cancel{ L }) \times \frac{ 1 }{ 22.4 }(mol/\cancel{ L }) \\
= 0.5(mol) }
\]
次に、得られたmolに水素分子の分子量である2g/molを掛けることでgを求める。
\mathtt{ 0.5(\cancel{mol}) \times 2(g/\cancel{mol}) = 1(g) }
\]
gと個数の変換


「g→個数」
「gを一回molにして、そのmolを個数に変換する」という方法を使う。
問題
まずは、8.8gを二酸化炭素の分子量44g/molで割ることによりmolを求める。
\mathtt{ 8.8(g) \div 44(g/mol) \\
= 8.8(\cancel{ g }) \times \frac{ 1 }{ 44 }(mol/\cancel{ g }) \\
= 0.2(mol) }
\]
次に、molに6.0×1023コ/molを掛けることで個数を求める。
\mathtt{ 0.2(\cancel{mol}) \times 6.0\times10^{23}(コ/\cancel{mol}) = 1.2\times10^{23}(コ) }
\]
「個数→g」
「個数を一回molにして、そのmolをgに変換する」という方法を使う。
問題
まずは、3.0×1023コを6.0×1023コ/molで割ることによりmolを求める。
\mathtt{ 3.0×10^{ 23 }(コ) \div 6.0×10^{ 23 }(コ/mol) \\
= 3.0×10^{ 23 }(\cancel{ コ }) \times \frac{ 1 }{ 6.0×10^{ 23 } }(mol/\cancel{ コ }) \\
= 0.5(mol) }
\]
次に、molに窒素分子の分子量28g/molを掛けることでgを求める。
\mathtt{ 0.5(\cancel{mol}) \times 28(g/\cancel{mol}) = 14(g) }
\]
Lと個数の変換


「L→個数」
これまでと同様、「Lを一回molにして、そのmolを個数に変換する」という方法を使っていく。
問題
まずは、4.48Lを22.4L/molで割ることでmolを求める。
\mathtt{ 4.48(L) \div 22.4(L/mol) \\
= 4.48(\cancel{ L }) \times \frac{ 1 }{ 22.4 }(mol/\cancel{ L }) \\
= 0.2(mol) }
\]
次に、得られたmolに6.0×1023コ/molを掛けることで個数を求める。
\mathtt{ 0.2(\cancel{mol}) \times 6.0×10^{ 23 }(コ/\cancel{mol}) = 1.2×10^{ 23 }(コ) }
\]
「個数→L」
「個数を一回molにして、そのmolをLに変換する」という方法を使う。
問題
まずは、1.2×1024コを6.0×1023コ/molで割ることによりmolを求める。
\mathtt{ 1.2×10^{ 24 }(コ) \div 6.0×10^{ 23 }(コ/mol) \\
= 1.2×10^{ 24 }(\cancel{ コ }) \times \frac{ 1 }{ 6.0×10^{ 23 } }(mol/\cancel{ コ }) \\
= 2(mol) }
\]
次に、molに22.4L/molを掛けることでLを求める。
\mathtt{ 2(\cancel{mol}) \times 22.4(L/\cancel{mol}) = 44.8(L) }
\]
mol計算演習
問1
問2
問3
問4
問5
問6
問7
問8
問9
問10
問11
問12
問13
問14
問15
関連:計算ドリル、作りました。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆