【プロ講師解説】金属の単位格子は面心立方格子・体心立方格子・六方最密構造に分類することができます。このページではそのうちの1つ、体心立方格子について、配位数や充填率、密度、格子定数、半径などを解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

体心立方格子とは

次の図のように、立体の各頂点と立体の中心に同種の粒子が配列された結晶格子を体心立方格子という。

体心立方格子に含まれる原子

2コ
Point!

体心立方格子の図をもう一度確認しよう。

体心立方格子に含まれる原子のうち、格子の各“頂点”にあるものは原子を8分割した状態になっている。

したがって、8分割(1/8)したものが頂点の数分=8コあるので…

\[
\frac{ 1 }{ 8 }×8=1
\]

頂点にある原子の数は合わせて1コである。

次に、体心立方格子の中心に存在する原子の数を数えていく。

格子の中心にある原子は球体の原子”まるまる1つ”である。

以上より、体心立方格子に含まれる原子数は

\[
\underbrace{ 1 }_{ 頂点 }+\underbrace{ 1 }_{ 面 }=2
\]

2コとなる。

体心立方格子の配位数

8コ
Point!

配位数とは「1コの原子を取り囲む他の粒子の数」である。

先ほどから説明しているように、体心立方格子の中心には1つの原子が存在し、その周りを8つの原子(全部1/8だけど)が取り囲んでいる状態になっている。

したがって、体心立方格子の配位数はである。

体心立方格子の格子定数と原子半径

4r=√3a
Point!

格子定数とは「単位格子の1辺の長さ」である。

体心立方格子を斜めに割ると次のようになる。(原子半径をr、格子定数をaとする)

辺DC(AB)の長さはa、辺AD(BC)の長さは√2aなので、三平方の定理によりrが4つ並んでいる部分(AC,DB)が√3aであることがわかる。
したがって、体心立方格子の格子定数と原子半径の関係は以下のようになる。

\[
4r=\sqrt{ 3 }a\\
\Leftrightarrow r=\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a
\]

体心立方格子の充填率

68%
Point!

充填率とは、単位格子の体積に占める原子の体積の割合である。

\[
充填率=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100
\]

上の「体心立方格子に含まれる原子の数」でやったように、体心立方格子は単位格子中に2コの原子を含んでいるので、次のような式を立てることができる。

\[
\begin{align}
充填率&=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }πr^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
\end{align}
\]

単位格子の1辺の長さ(格子定数)はaなので、単位格子の体積は(縦×横×高さで)a3となる。
また、球の体積は4/3πr3と表すことができる(これは数学の知識)ので、面心立方格子に2つの原子が含まれることを考えると、原子の体積の合計は4/3πr3×2となる。

これを解くと…

\[
\begin{align}
充填率&=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }πr^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }π(\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a)^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
&=\frac{ \sqrt{ 3 }π }{ 8 }×100\\
&≒68(\%)
\end{align}
\]

充填率は約68%となる。

体心立方格子の密度

立方格子の密度は『g/cm3』という単位で表されることが多い。

この単位のうち、分子のgは立方格子に含まれる原子の重さを、分母のcm3は立方格子全体の体積を示している。

したがって、アボガドロ定数をN(コ/mol)、立方格子に含まれる原子の原子量をM(g/mol)とすると、立方格子の密度は次のように表すことができる。(この式は体心立方格子だけでなく面心立方格子でも共通)

\[
密度(g/cm^{3})=\frac{ \frac{ M(g/mol) }{ N(コ/mol) }×原子の数(コ) }{ a^{3}(cm^{3}) }
\]

ちなみに分子の部分は、原子量M(g/mol)をアボガドロ定数N(コ/mol)で割ることで(molとmolが約分されて)「g/コ」を出し、それに原子の数(コ)をかけることで「g」を導き出している。

あとはこの式に、アボガドロ定数である6.0×1023(コ/mol)、体心立方格子に含まれる原子の数である2(コ)、問題文で与えられている分子量(g/mol)、問題文に与えられている格子の1辺の長さaを3乗して求めた立方格子の体積a3を代入すれば、体心立方格子の密度を求めることができる。

体心立方格子まとめ

原子の個数 2コ
配位数 8コ
格子定数と原子半径の関係 4r=√3a
充填率 68%

体心立方格子に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

次の図のように、立体の各頂点と立体の中心に同種の粒子が配列された結晶格子を【1】という。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】体心立方格子

次の図のように、立体の各頂点と立体の中心に同種の粒子が配列された結晶格子を体心立方格子という。


問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

体心立方格子に含まれる原子は【1】個である。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】2

体心立方格子の図をもう一度確認しよう。

体心立方格子に含まれる原子のうち、格子の各“頂点”にあるものは原子を8分割した状態になっている。

したがって、8分割(1/8)したものが頂点の数分=8コあるので…

\[
\frac{ 1 }{ 8 }×8=1
\]

頂点にある原子の数は合わせて1コである。

次に、体心立方格子の中心に存在する原子の数を数えていく。

格子の中心にある原子は球体の原子”まるまる1つ”である。

以上より、体心立方格子に含まれる原子数は

\[
\underbrace{ 1 }_{ 頂点 }+\underbrace{ 1 }_{ 面 }=2
\]

2コとなる。

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

体心立方格子の配位数は【1】個である。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】8

配位数とは「1コの原子を取り囲む他の粒子の数」である。

先ほどから説明しているように、体心立方格子の中心には1つの原子が存在し、その周りを8つの原子(全部1/8だけど)が取り囲んでいる状態になっている。

したがって、体心立方格子の配位数はである。

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

体心立方格子の格子定数aと原子半径rの関係を式で表すと【1】となる。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】4r=√3×a

格子定数とは「単位格子の1辺の長さ」である。

体心立方格子を斜めに割ると次のようになる。(原子半径をr、格子定数をaとする)

辺DC(AB)の長さはa、辺AD(BC)の長さは√2aなので、三平方の定理によりrが4つ並んでいる部分(AC,DB)が√3aであることがわかる。
したがって、体心立方格子の格子定数と原子半径の関係は以下のようになる。

\[
4r=\sqrt{ 3 }a\\
\Leftrightarrow r=\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a
\]

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

体心立方格子の充填率は約【1】%である。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】68

充填率とは、単位格子の体積に占める原子の体積の割合である。

\[
充填率=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100
\]

上の「体心立方格子に含まれる原子の数」でやったように、体心立方格子は単位格子中に2コの原子を含んでいるので、次のような式を立てることができる。

\[
\begin{align}
充填率&=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }πr^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
\end{align}
\]

単位格子の1辺の長さ(格子定数)はaなので、単位格子の体積は(縦×横×高さで)a3となる。
また、球の体積は4/3πr3と表すことができる(これは数学の知識)ので、面心立方格子に2つの原子が含まれることを考えると、原子の体積の合計は4/3πr3×2となる。

これを解くと…

\[
\begin{align}
充填率&=\frac{ 原子の体積 }{ 単位格子の体積 }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }πr^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
&=\frac{ \frac{ 4 }{ 3 }π(\frac{ \sqrt{ 3 } }{ 4 }a)^{3}×2 }{ a^{3} }×100\\
&=\frac{ \sqrt{ 3 }π }{ 8 }×100\\
&≒68(\%)
\end{align}
\]

充填率は約68%となる。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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