【プロ講師解説】このページでは『電気陰性度の定義、周期表での傾向から極性との関係、求め方、希ガスの値』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
電気陰性度とは
異なる2つの原子が結合する場合を考える。
この場合、グレーとグリーンがお互いに電子を1個ずつ出し合い共有電子対を形成する。
このとき、原子が共有電子対を自分の方に引っ張る強さを電気陰性度という。電気陰性度が高い原子がより強く共有電子対を自分側に引き寄せる。
電気陰性度の周期表上での傾向
周期表の左下に存在する元素(金属元素が多い)ほど陽性が強く、電子を放出しようとするため、電気陰性度は小さくなる。
※1
希ガスの電気陰性度は考慮しないということに注意が必要である。希ガスは最外殻が満たされているため電子を外から取り込もうとはしない。したがって、電子を引きつける強さである電気陰性度は考える必要がない。
※2
水素の電気陰性度だけ「周期表の右上に行くにしたがって大きくなっていく」というルールに従わない。水素は電子を1つしかもっていないので、それを出してしまうと電子が1つもない“原子核のみ”の状態になってしまう。
当然ながら原子核単体だと非常に不安定なので水素はあまり電子を電子を出したがらない。よって、その1つの電子を奪われないように電気陰性度が非常に高くなっている。
※3
電気陰性度に関するグラフとして次のようなものが出題されることが多いので形を周期表と照らし合わせて覚えておこう。
電気陰性度とイオン化エネルギー・電気陰性度の関係
第一イオン化エネルギーは「自分の電子を守る力(=防御力)」、電子親和力は「相手の電子を奪う力(=攻撃力)」である。
共有電子対は「自分の電子」と「相手の電子」が組み合わさってできたものである。
したがって、電気陰性度、つまり「共有電子対を自分の方に引っ張る力」は、自分の電子を守る力(=防御力=第一イオン化エネルギー)と相手の電子を奪い取る力(=攻撃力=電子親和力)の両方を合わせた総合力ということになる。
参考↓
・第一イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度の違い
・第一イオン化エネルギー(周期表での最大最小・グラフ・電子親和力との違いなど)
・電子親和力(周期表上での最大最小・グラフ・希ガスやハロゲンの場合など)
電気陰性度とマリケンの評価方法
電気陰性度・第一イオン化エネルギー・電子親和力の関係を表したマリケンの定義と呼ばれる式が存在する。
この式をみると、電気陰性度は第一イオン化エネルギーと電子親和力の和に比例しており、第一イオン化エネルギーと電子親和力が大きくなればなるほど電気陰性度も大きくなるということがわかる。
※マリケンの定義は昔使われていたが正確性に欠けることがわかり現在はあまり使われていない。代わりにポーリングの定義というものが用いられている。(式が綺麗でわかり易いので参考にするのは全然あり)
電気陰性度と化学結合
結合は原子間の結合と分子間の結合に分類することができる。
分子間の結合が切れても、状態が変化するだけで物質の種類そのものは変化しない。たとえば水H2Oの分子間の結合が切れると水蒸気になるが、物質はH2Oのまま変化しない。
一方、原子間の結合が切れると、H2OはH原子とO原子に変化するためH2Oではなくなってしまう。このような原子間の結合を化学結合という。
化学結合の種類は電気陰性度で決まる。金属元素の電気陰性度は小さく、非金属元素の電気陰性度は大きいことから、結合している元素が金属か非金属かで結合の種類を判断することになる。
金属元素(電気陰性度 小)+ 非金属元素(電気陰性度 大)の結合 → イオン結合
金属元素(電気陰性度 小)+ 金属元素(電気陰性度 小)の結合 → 金属結合
電気陰性度と極性
極性というのは「分子内での電子の偏り」を表すものだった。(極性に関して詳しくは「極性(分子の形との関係・見分け方・例・打ち消しなど)」を参照)
先ほどから説明しているように、電気陰性度というのは「電子を引っぱる力」を表している。したがって、電気陰性度はこの”極性”を生み出す原因になる。
電気陰性度が大きい方の原子(ここではCl)は共有電子対を自分の方に引っ張るため電荷がやや負に偏る(これをδ–と表す)。
反対に、電気陰性度が小さい方の原子(ここではH)は電荷がやや正に偏る(δ+)。このように極性は電気陰性度が原因となって生じる。
演習問題
問1
【】に当てはまる用語を答えよ。
原子が共有電子対を自分の方に引っ張る強さを【1】という。
問2
【】に当てはまる用語を答えよ。
周期表で第二周期以下の元素について、(希ガスを除き)同一周期内では右にいくほど電気陰性度は【1】くなり、同族では下にいくほど電気陰性度が【2】くなる。つまり、基本的に電気陰性度は周期表上で右上にいくほど【3】くなる傾向がある。
問3
【】に当てはまる用語を答えよ。
周期表の左下にある元素ほど電気陰性度は【1】く、【2】性が強いため、【3】イオンになりやすい。右上にある元素ほど電気陰性度は【4】く、【5】性が強いため、【6】イオンになりやすい。
問4
【】に当てはまる用語を答えよ。
電気陰性度の周期表上での傾向を表すグラフとして適切なのは【1】である。
(1)
(2)
(3)
問5
【】に当てはまる用語を答えよ。
同じ原子同士の共有結合では、共有電子対は両原子の真ん中に存在している。
一方、異なる原子同士の共有結合では、共有電子対は【1】の大きい原子の方に偏って存在している。
このような結合内での電荷の偏りを【2】といい、分子内に【2】がある分子を【3】、【2】がない分子を【4】という。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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