【プロ講師解説】このページでは『塩の液性の見分け方(塩の液性の決定法・塩の種類(酸性塩・塩基性塩・正塩)との関係など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

塩の液性

塩を溶かしてできた水溶液の液性は…
強酸+強塩基で作られた正塩 → 中性
強酸+強塩基で作られた酸性塩 → 酸性
強酸+弱塩基で作られた塩 → 酸性
弱酸+強塩基で作られた塩 → 塩基性
Point!

液性(=塩を水に溶かした水溶液の性質)には「中性」「酸性」「塩基性」の3種類があり、強酸+強塩基で作られた正塩を溶かしてできた水溶液の液性は「中性」、強酸+強塩基で作られた酸性塩を溶かしてできた水溶液の液性は「酸性」、強酸+弱塩基で作られた塩を溶かしてできた水溶液の液性は「酸性」、弱酸+強塩基で作られた塩を溶かしてできた水溶液の液性は「塩基性」となる。つまり、塩の液性は元の酸や塩基によって決まるということである。

塩から「由来の酸・塩基」を割り出す

今説明したように、塩を溶かした水溶液の液性はその塩を作っている酸や塩基によって決まる。定期テストや入試の問題では「塩」を見てパッとその液性を答える必要があり、そのためには塩の化学式を見て、その塩が「どんな酸」と「どんな塩基」からできているのかを判断する必要がある。そこでこれから、塩の化学式から「由来の酸・塩基」を割り出す方法について解説していく。

STEP1 塩を陽イオンと陰イオンに分ける
STEP2 それらのイオンが含まれている酸・塩基を「酸・塩基一覧表」から探す
Point!

今回はNaCl、NaHSO4、NaHCO3を例に以下の2STEPを使って説明していく。

塩化ナトリウムNaCl

STEP1

塩を陽イオンと陰イオンに分ける

まずは、塩であるNaClを陽イオンであるNa+と陰イオンであるClに分ける。

\[
NaCl → Na^{+} , Cl^{-}
\]

STEP2

それらのイオンが含まれている酸・塩基を表から探す
強酸 価数 弱酸
HCl(塩化水素)
HBr(臭化水素)
HI(ヨウ化水素)
HNO3(硝酸)
1価 HF(フッ化水素)
CH3COOH(酢酸)
H2SO4(硫酸) 2価 H2CO3(炭酸)
H2S(硫化水素)
H2C2O4(シュウ酸)
3価 H3PO4(リン酸)
強塩基 価数 弱塩基
NaOH(水酸化ナトリウム) 1価 NH3(アンモニア)
Ca(OH)2(水酸化カルシウム) 2価 Cu(OH)2(水酸化銅)
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)
Zn(OH)2(水酸化亜鉛)
3価 Al(OH)3(水酸化アルミニウム)
Fe(OH)3(水酸化鉄)

ClはHCl、Na+はNaOHに含まれている。したがって、NaClは強酸と強塩基からできており、かつ正塩なので、水溶液にしたときの液性は「中性」だとわかる。

硫酸水素ナトリウムNaHSO4

STEP1

塩を陽イオンと陰イオンに分ける

まずは、塩であるNaHSO4を陽イオンであるNa+と陰イオンであるSO42-に分ける。(間のHは無視する)

\[
NaHSO_{4} → Na^{+} , SO_{4}^{2-}
\]

STEP2

それらのイオンが含まれている酸・塩基を表から探す
強酸 価数 弱酸
HCl(塩化水素)
HBr(臭化水素)
HI(ヨウ化水素)
HNO3(硝酸)
1価 HF(フッ化水素)
CH3COOH(酢酸)
H2SO4(硫酸) 2価 H2CO3(炭酸)
H2S(硫化水素)
H2C2O4(シュウ酸)
3価 H3PO4(リン酸)
強塩基 価数 弱塩基
NaOH(水酸化ナトリウム) 1価 NH3(アンモニア)
Ca(OH)2(水酸化カルシウム) 2価 Cu(OH)2(水酸化銅)
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)
Zn(OH)2(水酸化亜鉛)
3価 Al(OH)3(水酸化アルミニウム)
Fe(OH)3(水酸化鉄)

SO42–はH2SO4、Na+はNaOHに含まれている。したがって、NaHSO4は強酸と強塩基からできており、かつ酸性塩なので、水溶液にしたときの液性は「酸性」だとわかる。

炭酸水素ナトリウムNaHCO3

STEP1

塩を陽イオンと陰イオンに分ける

まずは、塩であるNaHCO3を陽イオンであるNa+と陰イオンであるCO32-に分ける。(間のHは無視する)

\[
NaHCO_{3} → Na^{+} , CO_{3}^{2-}
\]

STEP2

それらのイオンが含まれている酸・塩基を表から探す
強酸 価数 弱酸
HCl(塩化水素)
HBr(臭化水素)
HI(ヨウ化水素)
HNO3(硝酸)
1価 HF(フッ化水素)
CH3COOH(酢酸)
H2SO4(硫酸) 2価 H2CO3(炭酸)
H2S(硫化水素)
H2C2O4(シュウ酸)
3価 H3PO4(リン酸)
強塩基 価数 弱塩基
NaOH(水酸化ナトリウム) 1価 NH3(アンモニア)
Ca(OH)2(水酸化カルシウム) 2価 Cu(OH)2(水酸化銅)
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)
Zn(OH)2(水酸化亜鉛)
3価 Al(OH)3(水酸化アルミニウム)
Fe(OH)3(水酸化鉄)

CO32–はH2CO3、Na+はNaOHに含まれている。したがって、NaHCO3は弱酸と強塩基からできているので、水溶液にしたときの液性は「塩基性」だとわかる。

演習問題

問1

NaClを水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:中性

NaClは強酸と強塩基からできており、かつ正塩なので、水溶液にしたときの液性は「中性」である。

問2

NaHSO4を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:酸性

NaHSO4は強酸と強塩基からできており、かつ酸性塩なので、水溶液にしたときの液性は「酸性」である。

問3

NaHCO3を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:塩基性

NaHCO3は弱酸と強塩基からできているので、水溶液にしたときの液性は「塩基性」である。

問4

CuSO4を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。
【問4】解答/解説:タップで表示
解答:酸性

CuSO4は強酸と弱塩基からできているので、水溶液にしたときの液性は「酸性」である。

問5

Na2SO4を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。
【問5】解答/解説:タップで表示
解答:中性

Na2SO4は強酸と強塩基からできており、かつ正塩なので、水溶液にしたときの液性は「中性」である。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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