【プロ講師解説】このページでは『電気分解(仕組みや各極での反応など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
電気分解とは
炭素C電極を使って塩化銅CuCl2水溶液に電気刺激を与えると、陰極では単体の銅Cuが析出し、陽極では気体の塩素Cl2が発生する。
このように、外部から電気刺激を与えることで、ある物質(この例ではCuCl2)を分解することを電気分解という。
電気分解の仕組み
STEP1 | 電池の負極から電子e–が出てくる |
STEP2 | 陰極で溶液中の陽イオンがe–を受け取る → 単体として析出 |
STEP3 | 【パターン1】 陽極板がAu/Pt/Cの場合
陽極で陰イオンがe–を離す 【パターン2】 陽極板がAu/Pt/C以外の場合 陽極板が溶ける |
電気分解の流れは、この3STEPで見ることができる。
上で紹介した「塩化銅CuCl2水溶液の電気分解」を例に、電気分解がどのようにして行われているのか、その仕組みについて解説していく。
STEP1
まず、電池の負極から電子e–が出てくる。
STEP2
次に、陰極で溶液中のCu2+がe–を受け取る。
結果、単体のCuが析出する。
※以下のような質問をよく受ける。
「水溶液中には陽イオンであるH+もいるはずなのに、なぜCu2+だけが電子を受け取るの?」
CuCl2水溶液中には、水H2Oから電離したH+も存在している。しかし、H+とCu2+のイオン化傾向(=イオンでいたい度合い)を比べると、Cu2+の方が小さい。したがって、より「イオンでいたい」と思っているH+は溶液中にイオンとして残り、「別にイオンじゃなくてもいい」と思っているCu2+が電子を受け取り、単体として析出する。「(陽イオンでは)イオン化傾向の小さいイオンが電子を受け取る」ということをしっかり覚えておこう。
STEP3
陽極で陰イオンがe–を離す → e–を失った陰イオンは単体になる(e–は電池の正極に戻っていく)
【パターン2】陽極板がAu/Pt/C以外の場合
陽極板が溶ける → 陽イオンとなり溶液中へ(e–は電池の正極に戻っていく)
陽極での反応は、電極の素材で2パターンに分けることができる。
極板が金Auや白金Pt、炭素Cのときは「パターン1」、それ以外(CuやAgなど)の場合は「パターン2」となる。
今回の極板は炭素Cなので「パターン1」の方。
陰イオンであるCl–はe–を離すと、気体のCl2として外に出ていく。
一方、e–は電池の正極へと戻っていく。
※陰極のときと同様に、こう考える人がいるはず。
「CuCl2水溶液中には、水H2Oから電離した陰イオンOH–も存在しているのに、なぜCl–だけが電子を離すの?」
この疑問は、陽イオンのときと同じ考え方で解決できる。Cl–のイオン化傾向(=イオンでいたい度合い)はOH–と比べて小さい。したがって、「別にイオンじゃなくてもいい」と思っているCl–の方が電子を離し、Cl2となる。「(陰イオンでは)イオン化傾向の小さいイオンが電子を離す」ということを覚えておこう。
各極での反応
上で挙げた「塩化銅CuCl2の電気分解」について、陰極・陽極での反応をそれぞれまとめておく。
陰極での反応
塩化銅CuCl2の電気分解の陰極では、電池の負極から流れてきたe–をCu2+が受け取り、単体のCuが析出する。
\mathrm{ Cu^{2+} + 2e^{-} → Cu }
\]
陽極での反応
塩化銅CuCl2の電気分解の陽極では、Cl–が電子を離し、気体のCl2となる。
\mathrm{ 2Cl^{-} → Cl_{2} + 2e^{-}}
\]
電気分解に関する演習問題
問1
外部から電気刺激を与えることで物質を分解することを【1】という。
【1】の両極では【2】反応が起こっている。
問2
電池の負極と繋がれている方を電気分解の【1】極、電池の正極と繋がれている方を電気分解の【2】極という。
【1】極では電子が流れ込んでくるので【3(酸化or還元)】反応が、【2】極では電子が流れ出るので【4(酸化or還元)】反応が起こっている。
問3
陰極・陽極に炭素棒を用いて塩化銅(Ⅱ)水溶液を電気分解すると、陰極では【1】が析出し、陽極では【2】が発生する。
問4
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細