電気分解(原理・反応式・電池との関係など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『電気分解(原理・反応式・電池との関係など)』について解説しています。


電気分解とは

  • 炭素C電極を使って塩化銅CuCl2水溶液に電気刺激を与えると、陰極では単体の銅Cuが析出し、陽極では気体の塩素Cl2が発生する。
  • このように、外部から電気刺激を与えることで、ある物質(この例ではCuCl2)を分解することを電気分解という。

電気分解の仕組み

  • 電気分解の仕組みについて、次の3STEPで解説する。

●STEP1
電池の負極から電子eが出てくる。
●STEP2
陰極で溶液中の陽イオンがeを受け取る
→ 単体として析出
●STEP3
【パターン1】陽極板がAu/Pt/Cの場合
陽極で陰イオンがeを離す
→ eを失った陰イオンは単体になる(e–は電池の正極に戻っていく)
【パターン2】陽極板がAu/Pt/C以外の場合
陽極板が溶ける
→ 陽イオンとなり溶液中へ(eは電池の正極に戻っていく)

  • ここでは例として「塩化銅CuCl2水溶液の電気分解」を用いる。
STEP
電池の負極から電子eが出てくる。

まず、電池の負極から電子eが出てくる。

STEP
陰極で溶液中の陽イオンがeを受け取る
→ 単体として析出

次に、陰極で溶液中のCu2+がeを受け取り、単体のCuが析出する。

よくある質問

  • 次のような質問をよく受ける。

「水溶液中には陽イオンであるHもいるはずなのに、なぜCu2+だけが電子を受け取るの?」

  • CuCl2水溶液中には、水H2Oから電離したHも存在している。しかし、HとCu2+のイオン化傾向(=イオンでいたい度合い)を比べると、Cu2+の方が小さい。したがって、より「イオンでいたい」と思っているHは溶液中にイオンとして残り、「別にイオンじゃなくてもいい」と思っているCu2+が電子を受け取り、単体として析出する。「(陽イオンでは)イオン化傾向の小さいイオンが電子を受け取る」ということを覚えておこう。

参考:イオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)

STEP
【パターン1】陽極板がAu/Pt/Cの場合
陽極で陰イオンがeを離す
→ eを失った陰イオンは単体になる(eは電池の正極に戻っていく)

陽極での反応は、電極の素材で2パターンに分けることができる。
極板が金Auや白金Pt、炭素Cのときは「パターン1」、それ以外(CuやAgなど)の場合は「パターン2」となる。

今回の極板は炭素Cなので「パターン1」の方。
陰イオンであるClはeを離すと、気体のCl2として外に出ていく。
一方、eは電池の正極へと戻っていく。

よくある質問

  • 次のような質問をよく受ける。

「CuCl2水溶液中には、水H2Oから電離した陰イオンOHも存在しているのに、なぜClだけが電子を離すの?」

  • この疑問は、陽イオンのときと同じ考え方で解決できる。Clイオン化傾向(=イオンでいたい度合い)はOHと比べて小さい。したがって、「別にイオンじゃなくてもいい」と思っているClの方が電子を離し、Cl2となる。「(陰イオンでは)イオン化傾向の小さいイオンが電子を離す」ということを覚えておこう。

参考:イオン化傾向(覚え方・定義・金属板の反応のしやすさ)


各極の反応

  • 上で挙げた「塩化銅CuCl2の電気分解」について、陰極・陽極での反応をそれぞれまとめる。

陰極

  • 塩化銅CuCl2の電気分解の陰極では、電池の負極から流れてきたeをCu2+が受け取り、単体のCuが析出する。

\[ \mathrm{Cu^{2+} + 2e^{-} → Cu} \]

陽極

  • 塩化銅CuCl2の電気分解の陽極では、Clが電子を離し、気体のCl2となる。

\[ \mathrm{2Cl^{-} → Cl_{2} + 2e^{-} }\]

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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