【プロ講師解説】このページでは『化学反応式の作り方・計算問題』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
原子・分子とは
化学反応式について説明する前に、原子・分子について少し復習しておこう。
【原子の構造】陽子・中性子・電子・原子核・質量数・原子番号の数と関係でやったように、原子とは物質の最小構成単位で、小さくて丸いツブである。
この図は左から、水素原子・酸素原子・塩素原子を表している。
すべての物質はこのような丸っこい物体からできている。
分子とは複数の原子が結合してできたものである。
例えば、水素”分子”は2つの水素”原子”が繋がることによって形成されている。
化学反応とは
化学反応とは分子内の結合が切れて新たな結合ができ、別の物質に変わることである。
この例では、水素同士、塩素同士の結合が切れて、水素と塩素で新たに結合を作っている。
つまり「結合のペア」が変化したわけである。
ここで1つ、とても重要な「ルール」を紹介する。
化学反応が起こったとき「反応の前後で原子の数は変わらない」。
今挙げた例でも、左側と右側の水素原子・塩素原子の数はそれぞれ等しくなっている。
このルールは化学反応式を作っていくときに知っておかなければいけない大切なルールなのできちんと覚えておこう。
化学反応式とは
化学反応式とは化学反応を化学式を用いて表したものである。
例えば、水素と塩素の反応だと次のようになる。
H_{2} + Cl_{2} → 2HCl
\]
これは、先ほどの図(↓)
を水素分子・塩素分子・塩化水素それぞれの分子式(化学式)、H2・Cl2・HClを使って表現したものとなっている。
また、左に水素H原子が2つ、塩素Cl原子が2つあるためHClが「2コ」できていることにも注目しよう。分子が2コあるというのを表すためには、分子の前に係数「2」を付ける。
化学反応式の係数決定
先ほど書いた「化学反応のルール」をもう一度確認する。
これから先はこのルールを念頭において見ていこう。それでは、具体的な例を使って説明していく。
問題
係数決定は、以下のステップに従って進めていく。
STEP1 | 最も複雑そうな物質の係数を1とする |
STEP2 | 両辺で各原子の数が等しくなるように調節する |
STEP1
\color{red}{1}C_{2}H_{6} + O_{2} → CO_{2} + H_{2}O
\]
※係数が1の場合は通常省略するが、わかりやすくするためにここでは書く。
STEP2
①
C原子の数が左右で等しくなるようCO2の係数を2とする。
\color{red}{1}C_{2}H_{6} + O_{2} → \color{red}{2}CO_{2} + H_{2}O
\]
②
H原子の数が左右で等しくなるようH2Oの係数を3とする。
\color{red}{1}C_{2}H_{6} + O_{2} → \color{red}{2}CO_{2} + \color{red}{3}H_{2}O
\]
③
O原子の数が左右で等しくなるようO2の係数を7/2とする。
\color{red}{1}C_{2}H_{6} + \frac{ 7 }{ 2 }O_{2} → \color{red}{2}CO_{2} + \color{red}{3}H_{2}O
\]
④
化学反応式の係数が分数だとマズイので全体に2をかける。
\color{red}{2}C_{2}H_{6} + \color{red}{7}O_{2} → \color{red}{4}CO_{2} + \color{red}{6}H_{2}O
\]
特殊な方法「未定係数法」
複雑な反応式の係数を求めるときには未定係数法という特殊な方法を使うことが多い。
※未定係数法のやり方等について詳しくは【未定係数法】化学反応式の係数を決定する裏技のやり方を大公開!を参照
化学反応式と単位計算
ここからは、化学反応式を使った計算問題の解き方について解説していこう。
まず始めに、化学反応式について1つ押さえておくべきことがある。
化学反応式における係数の比は「molの比」を表している。
例として、次の化学反応式を見てみよう。
N_{2} + 3H_{2} → 2NH_{3}
\]
反応式中の係数に注目。
窒素分子(N2)・水素分子(H2)・アンモニア(NH3)の係数はそれぞれ、1・3・2となっている。
この場合、係数から1molのN2と3molのH2が反応して2molのNH3ができるということが分かる。
また「係数比=mol比」と考えて単位計算をすることで、自分がそのとき必要な単位を求めることもできる。
※この表がさっぱりな人は【モル計算】単位を駆使!物質量molが絡む問題の解法(原子量・体積・アボガドロ数など)を参照
化学反応式を使った反応量計算
全ての化学反応は「過不足(何かの物質が多かったり、逆に少なかったり)が生じない反応」と「過不足が生じる反応」に分けることができる。
過不足が生じない問題
問題
(1)2.0[mol]のC3H8が燃焼すると、何[mol]のCO2が生成するか。
(2)3.0×1023[コ]のC3H8が燃焼すると、何[mol]のH2Oが生成するか。
(3)3.0[mol]のC3H8が燃焼すると、何[g]のH2Oが生成するか。
(4)2.0[mol]のC3H8が燃焼すると、何[L]のCO2が生成するか。
(5)3.0×1023[コ]のC3H8が燃焼すると、何[L]のCO2が生成するか。
この表をテンプレートとして使って解いていこうと思う。
(基)は基本となる物質の量を表している。
(今)は今回の問題に書かれている量を示す。
(1)
(基)のところには、(「係数比=モル比」であることを考慮すると、1[mol]のプロパンから3[mol]の二酸化炭素ができるとわかるので、)プロパンの下に1[mol]、二酸化炭素の下に3[mol]と書き込む。
次に、今回は2[mol]のプロパンが反応しているので、(今)のところにそれを書き込む。
また、CO2が何モル出てくるかを求めるのでそこはxとおいておく。
あとは比を使えば簡単に答えを求めることができる。
1:3 = 2:x\\
↔ x=6
\]
よって、6.0[mol]
(2)
(基)の所に書いてある6.0×1023[コ]というのは、アボガドロ定数に(プロパンの係数が1なので)1molをかけたもの。
6.0×10^{23}[コ/mol] × 1[mol] = 6.0×10^{23}[コ] \]
縦の列で(つまり同じ物質で)単位が揃っていれば、横で単位が違っても(1)と同じように比を使って解くことができる。
6.0×10^{23}:4 = 3.0×10^{23}:x\\
↔ x=2
\]
よって、2.0[mol]
(3)
これも(1)(2)とほとんど同じ。
4×18[g]というのは、H2Oの物質量である18[g/mol]に(H2Oの係数が4なので)4molをかけたもの。
4[mol]×18[g/mol]=4×18[g] \]
後は比を使って解く。
1:4×18 = 3:x\\
↔ x=216
\]
よって、216[g]
(4)
これも一緒。
3×22.4[L]というのは、標準状態での気体の1molあたりの体積である22.4[L/mol]に(CO2の係数が3なので)3molをかけたもの。
3[mol]×22.4[L/mol]= 3×22.4[L] \]
後は比を使って解く。
1:3×22.4 = 2:x\\
↔ x=134.4[L] \]
よって、134.4[L]
(5)
6.0×1023[コ]というのは、アボガドロ定数に(プロパンの係数が1なので)1molをかけたもの。
6.0×10^{23}[コ/mol] × 1[mol] = 6.0×10^{23}[コ] \]
3×22.4[L]というのは、標準状態での気体の1molあたりの体積である22.4[L/mol]に(CO2の係数が3なので)3molをかけたもの。
3[mol]×22.4[L/mol]= 3×22.4[L] \]
後は比を使って解く。
6.0×10^{23}:3×22.4 = 3.0×10^{23}:x\\
↔ x=33.6
\]
よって、33.6[L]
過不足が生じる問題
問題
過不足ありの場合はこのテンプレートを使う。
(前)は反応前の量
(反)は反応した量
(後)は反応後の量
を表している。
今回は、1[mol]のN2と、4[mol]のH2を反応させたので、それを(前)のところに書き込む。
また、反応前なのでNH3はまだ0[mol]である。
ここでポイントとなるのが「余る物質を予想すること」である。
この予想はハズレても後でわかるので問題ない。(予想が外れたときの例と判別法は後に記載)
そして、予想したら余らないと思う物質が反応後「0」になるように引き算をする。
実際やってみよう。まず予想から。
化学反応式より、N2とH2は1:3で反応する。
したがって、今N2が1[mol]、H2が4[mol]あるので、余るのはH2だと考えられる。
ということは、余らないのはN2。N2が反応後「0」になるように引き算する。
では次。
係数比に注目すると、
N_{2}:H_{2}=1:3
\]
の割合で反応するから、N2が1[mol]反応するときH2はその3倍の3[mol]反応する。
よって下図のようになる。
あとちょっと。
これまた係数比を考えて、
N_{2}:NH_{3}=1:2
\]
だから、N2が1[mol]反応するとき、NH3はその2倍の2[mol]できる。
よって下図のようになる。
この表から、「NH3が2[mol]できて、1[mol]のH2が余る」ことがわかる。
PLUS+
余る物質の予想が外れたとき、どうやってそれが分かるのだろう。
先ほどと同じ反応で、N2が余ると予想する。
そうすると、余らない物質はH2ということになるから、H2が反応後「0」になるように引くと…
となる。
次に、N2について考えると、係数比からN2:H2=1:3で反応するので N2はH2の1/3倍の4×1/3[mol]反応するはず。
よって、下図のようになる。
反応後のN2がマイナスになっている。
反応後の値がマイナスになることはありえないので、ここで予想がはずれていたと気づく。
このような形で予想の当たり外れを知ることができる。
化学反応式に関する演習問題
我々の身の回りのもの全てを構成している小さくて丸いツブのことを【1】、それがいくつか結合してできたものを【2】という。
分子内の結合が切れて新たな結合ができ、別の物質に変わることを【1】といい、【1】を化学式を用いて表したものを【2】という。
【1】H2 + O2 → 【2】H2O
N2 + 【1】H2 → 【2】NH3
C2H5OH + 【1】O2 → 2CO2 + 【2】H2O
C6H12O6 + 【1】O2 → 【2】CO2 + 【3】H2O
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細